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  3. 【CREW'S VOICE vol.46】IENA WEB ビジュアルコーディネーター / 園畠麻衣
CREW'S VOICE

Photo_Shintaro Yoshimatsu
Text_Masahiro Kosaka

生身の接客体験をたっとぶ、アナログ人間。
そう自称する彼女は、かたや仕事では、SNSに向き合う。
いっけん交わらない、オンラインとオフライン。
いずれにせよ、同じように喜んでくれるひとが、そこにいる。
接客するのに、オンもオフも、じつはない。
あるのは、ただ、どれだけの熱を伴うかだけ。

お店にも行ってみてほしい。
心のなかでは、そんな風にも思っています。

―まずは現在の仕事内容について教えてください。

IENAのWEBビジュアルコーディネーター(以下:ウェブVC)として、特集記事の企画、撮影、スタイリングなどを行っています。また、Instagramのオフィシャルアカウントの運用も、長く担当している業務です。興味を持ってくれる店舗スタッフも増えて、いまは三人体制でやっています。

―それでも三人体制。かなりコンパクトなのですね。

そうなんです。でも、一番素早く情報を届けることが重要なので、お客さまの反応や状況に応じて、コンテンツや撮影内容を急に変更したりすることも少なくありません。そうしたときに小回りが利くのは、やはり少数だからこそのメリットだと感じています。

―そうしたSNSの業務においては、園畠さん自身は、どのようなところに面白さを感じていますか?

実はわたし自身、かなりアナログ人間なんです。ECで買い物をするのにも、SNSにも、以前は抵抗がありました。でも、目の前にお客さまがいるような熱量で発信すれば、SNSでもきちんと想いが届けられる、楽しんでいただける、ということを実感できるようになりました。気軽に出かけられなくなったいまだからこそ、オンラインでお客さまとコミュニケーションが取れることに、現在はやりがいを感じています。コメント欄に温かいメッセージなどをいただくとこちらの方が元気をもらったり。とてもありがたいです。これって実店舗での接客に、ほんのり近いんじゃないかとさえ感じています。

―オンラインではあるものの、ひととの繋がりや、温かみも感じられるということでしょうか。

そう、温かさの感じられるアカウントにしたいというのは、わたしたちとしても目指していることなんです。IENAは今年で30周年を迎えるのですが、当初からIENAの世界観自体も、ちょっと手の届きそうな憧れだったり、肩の力を抜いて着られる普遍的なスタイルを提案しています。そのため、例えば撮影する写真も、親しみやすくて手触りが垣間見えるようなクリエイティブを意識していたり。また実際に、「ちょっとしゃべりたくて」と来てくださるお客さまが、店舗にもSNSにも多い気がしています。自粛中には毎週Instagramでライブ配信をしていたのですが、「心温まりたくて観にきた」という声がかなり多かったのには驚きました。会えないけど繋がっている温かみがあるというか。嬉しかったです。

「IENAの洋服は、本当に何年も着られるものが多いんです。だからわたしも、同じようなものを気に入って買い足したりすることが少なくありません。一方、雰囲気をグッと変えたいとか、そのときの気分を表現するのには、別のブランドの服を取り入れてみたり、メンズのアイテムを着てみたりすることもあります」。
アクセサリーは、華奢なものを、日頃からたっぷりと身につけることが多いとか。「ほとんどが、お守り的な存在かもしれません。パリ出張に初めて行ったときに記念にオーダーしたものや、祖母から受け継いだエンゲージリングをリメイクしたものなど」。
この日の朝、近所の花屋で買ってきたというブーケ。「お家用に、2週に1回くらいはお花を買います。ベイクルーズの同僚と一緒に、生け花のレッスンに通ったりすることも」。
5年半前、Maison IENAオープン時に制作したブランドブック。ブランドが大切にする16のメソッドを、ビジュアルやメッセージとともにまとめ、店舗にて配布した。16あるなかで園畠さんがもっとも共感を覚えているのは、「贅沢を欠かさない」という項目。「職場では、スポ根なところもあるんです。でも、わたし自身はけっこうだらしないタイプなので、バランスを取ることはいつも心掛けていて。どんなに忙しくてもお気に入りのものを身につけたり、長時間パソコンに向かっていても、ちょっと贅沢なチョコレートをかじってリフレッシュしたり。ささいなことで、自分をちゃんと甘やかすようにしています」。

―世界観を全力で表現するのも、インタラクティブなコミュニケーションを念頭に置くのも、そもそも喜んでくれるお客さまがあってこそ。という意味では、園畠さんのなかでは等しくあることなんですね。他に仕事のモチベーションになっていることや、心掛けていることはありますか?

わたしは2007年入社の新卒一期生ということもあって、リクルート関連の社内イベントにゲストで呼ばれることもあります。そこであるとき、IENAの当時のディレクターが口にした言葉が印象に残っていて。「新卒のみんなは、まだ接客スキルはないかもしれない。でも、店頭で必ず意識してほしいのは、お客さまの体温を2、3度上げること」。たとえ売れなくてもいいから、誰かと話をして、ワクワクするような感覚を提供する。そのことは、オンラインでも意識しています。実際、インスタライブをやっていると、自分も徐々に温度が上がっていく感じがするし、お客さまのコメントもヒートアップしていくことがある。そうしたコミュニケーションは、もはやオンラインでもできる時代。だからこそ、大事にしていきたいと思っています。

―そうした実感はひしひしと感じながらも、プライベートでは「アナログ人間」で、オンラインやSNSが苦手という(笑)。ちなみに、苦手な理由は?

そうは言っても、やっぱり対面のほうが熱量が上がるじゃないですか。最近引越しをして、ちょっと田舎の方に暮らしているのですが、休日になるとクルマで川崎市場に行くことが楽しみ。シンプルに市場が好きなんです。それはバイヤー時代に行ったフランスのマルシェがきっかけで。同じようなものを売っている店でも、みんなそれぞれに自分の商品に自信があるから、ものすごい勢いでおすすめしてくれるんですよ。オンラインでは、何が欲しいかを自分で探しにいく必要がありますが、市場では、とにかく向こうから提案してくれて、だからこそ思ってもいなかったものを買えたりもする。やはりそうした生の接客を受けるのが、個人的には好きなんですよね。

―熱量と、偶然性と。思いも寄らなかった出合いのほうが、意外と何年も記憶に残っていたりしますよね。

だから、SNSの業務はもちろんECチームの後方支援ではありますが、心のなかでは、「お店にも行ってみてほしい」と思っています。それは、多分EC担当のスタッフたちも願っていることで、きっとどんなに世の中が便利になっても生身でしか体験できない価値があるから。反対にお店のスタッフたちは、お客さまにECで便利なお買い物を楽しんでいただきたいと接客していたりするんです。ただ、お客さまに喜んでいただきたいという一心なんだと思います。

「結果に捉われず、果敢にチャレンジする。
トライアンドエラーを重ねること。」