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  3. 【CREW'S VOICE vol.34】FRAMeWORK ファッションアドバイザー / 山口潮美
CREW'S VOICE

Photo_Cosmo Yamaguchi
Text_Masahiro Kosaka

諦めなければ、いつか必ず心を開いてもらえる。
彼女の不屈の精神はいわば、接客の奥義。
いくら空気を読むのが日本人の美徳とされようが、なんのその。
その先に待つ、ひと対ひとの豊かな関係のため。
そんな気持ちを胸に今日も彼女は、きっとそこにいる。

わたしが引いてしまったら、
そこで終わってしまう。

―本日はよろしくお願いします!まずは、ベイクルーズに入社してからの経歴について教えてください。また、肩書きはファッションアドバイザーということですが、店舗で特に任されていることや、役割などはありますか?

いま入社3年目で、FRAMeWORKに所属しています。最初の1年は新宿店、そのあと、自由が丘の路面店に1年半在籍。今年の9月から、池袋ルミネに入っている店舗に異動してきました。今季からは、店舗全体の接客面強化の担当に。毎週本社から下りてくる施策を、自分の店舗に落とし込むのが仕事です。

―これまでの2年間における、山口さんの接客姿勢が評価されたということでしょうか?

どうでしょう。ただ、前にいた自由が丘店が顧客型の路面店だったので、そこでの経験を生かせたらとは考えています。

―池袋店は館に入っている店舗なだけに、新鮮な風を吹き込めそうですね! 接客について、これまでに印象に残っていることはありますか?

自由が丘店のとき、週に2、3回来店して下さる50代の顧客さまがいました。朝から「おはよう!」なんて、お店を覗きに来ていただいていて。本当におしゃれを楽しんでいる方で、鏡の前で試着しながらお話しするのがなにより楽しくて、刺激もたっぷりいただきました。親しくなってからは、好きそうなお洋服の入荷連絡をしてみたり、他愛ないプライベートのお話をしてみたり。年齢は離れていましたが、深いところまで心を開いてくださっていることを、実感していました。

シルバーアクセサリーを身につけることが多い。「ネックレス、バングル、ピアスは日によって変えますが、リングはこれがスタメン。女性がゴツゴツしたアクセサリーをつける、そういうバランスが好きなんです」。

―スタッフ対お客さまという枠を越えた、素敵な関係ですね。そのように「深いところまで心を開いてもらう」のは、誰にでも簡単にできることではないと思います。接客において、心掛けていることはありますか?

接客に慣れていない方や、話しかけられるのが苦手な方って、どうしても、こちらから声をかけても無反応だったりします。でも、そこでわたしが引いてしまったら、ずっと心を開けないまま終わってしまう。わたしから諦めることは、絶対にしてはいけないと思っています。実際、こちらがアプローチし続けていると、どこかのタイミングから会話をしてくれるようになることは、結構多いんです。

―自分が諦めたら終わり。本当にその通りですね。でもそれって、かなり難しそう。アプローチの秘訣などはありますか?

粘って粘って、「お客さまに似合うものを見つけたいんです!」っていう気持ちをぶつけ続けること。あとは、あるあるトーク。たとえば背の高いひとに向けて、「わたしも背が高いのですが、こういうスカートって、だいたい丈が足りないんですよね」とか、「いまの時期、重たいコートは早いけど、なにも着ないのは寒いんですよね」とか。そうした話をすると、「そうそう!」と共感していただけて、会話が弾むんです。

―アパレル業界を志したきっかけについても教えてください。

グッとのめり込んだのは、上京して大学の被服学科に入ってから。1年生のときの必修に和服をつくる授業があって、そこから楽しくなって、和服を専攻することに。

―和服専攻とは、珍しい経歴ですね!

もともと、日本が大好きなんです!四季も全部好き。織物や染物、地方の友禅といったものにも興味があります。

―オフの日にも、日本らしいものを見に行くことが多いのでしょうか?

ちょっとお出かけしたときには、その土地の神社やお寺には必ず行くようにしています。あとは喫茶店も大好きで、1日に3軒ハシゴしたりもします。朝が気持ちいいお店、本を読むのに最適なお店、友達と行くお店と、関東の喫茶店にはかなり詳しい方かも。

―他に、息抜きのために行っていることなどはありますか?

2018年1月1日から、毎日日記をつけています。20年以上日記をつけている父の影響ではじめたのですが、これが結構生活の整理になる。その日の出来事や気持ちなどを、1日1ページ書いていて。1時間かけて1冊まるまる読み返したりして、過去を振り返ることもあります。本を読むのも好きなので、この文庫本サイズの日記帳に書いていると、なんだか自分が本を書いているような気分になって楽しいんですよ。

気に入った本は、何度も読み返す派。とくに、重松清の『きよしこ』は読み返すことが多く、なんと同じ本を4冊も持っているとか。「読みたいときに読みたいので、1冊は常に携帯する用。1冊は現在貸出中です。本当にやさしいお話で、読むとクリアになれるんです。そうやって、時々自分を浄化したくなる。こういうやさしさが大切だった。真面目に生きなきゃなとかって(笑)」。

―心を開いてもらうための接客も、日記も、諦めずに継続することは容易ではないと思います。どうして、それができるのでしょう?

根が負けず嫌いなんだと思います。それに、できるようになる前に諦めてしまったら、きっと得られる結果を、得られないまま終わってしまう。それが嫌なんです。

「諦めないこと。コツコツ継続すること。」