
Photo_Shintaro Yoshimatsu
Text_Masahiro Kosaka
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すべての女性の悩みを一手に引き受け、社会に対して大々的に発信を行っている彼女。
じわじわと、しかし着実に流れが変わりつつあるのは、ファッションの力の成すところ。
そんな彼女のワークとライフについて聞いてみた。
歳を重ねることで、広がるアイデアが楽しみ。
―柿沼さんはベイクルーズに入社する前、ウェブの制作会社で働いていたそうですね。入社してから配属されたのもウェブ事業部と聞きました。そこから、どのような経緯でEMILY WEEKを立ち上げることになったのでしょう?
「ベイクルーズに入る前から、もともとEMILY WEEKのような事業をしたいとは考えていたんです。自分で立ち上げることも視野に行動にも移してみましたが、ひとりの力ではなかなか難しかった。そこで、まずは現状を変えようと、異業種に転職することにしたんです。大きな会社なら、仕組みのようなものも学べると思って。そうしてベイクルーズに入って、2年目にたまたま新規事業立ち上げのキャンペーンがありました。そこで提案してみたのがはじまりですね。」

―その後、2017年9月、生理週間を軸に女性のバイオリズムに寄り添うライフデザインを提案するEMILY WEEKの立ち上げに至ったというわけですね。立ち上げから間もなく3年が経とうとしていますが、世の中的な変化、また社内での変化は感じていますか?
「世間的には、2019年に大きな動きがあったように思います。雑誌『SPUR』が30周年を記念して渋谷で生理用品を配布したり、大丸梅田店が女性のリズムに寄り添うフロアを新設したり。女性特有の悩みにフォーカスしたキャンペーンや試みが、さまざまなところで勃発していた。社内的には、男性役員に女性特有の悩みがあることすらあまり知られていなかった。
でもブランドが立ち上がってからは、会社全体としても向き合っていくべき課題という意識が芽生えてきたのを感じていて、わたし自身もそうしたことを話しやすくなった。また、女性社員から悩みを相談される機会もぐっと増えました。」
―女性ならだれもが胸に秘めていたけれど、なかなか口に出せなかったことも途端に話しやすくなるというのには、やはりファッションやデザインの力の大きさを感じます。2019年に大きく世の中が変わりはじめたのも、きっとEMILY WEEKがその一助となったのは間違いないでしょうね。柿沼さん自身も、仕事や生活に変化が出てきたことと思います。2019年には鎌倉に引っ越しをしたと伺いました。
「ブランドを立ち上げるまではずっとウェブ事業部で働いていたので、仕事内容はガラリと変わりました。いまは、以前は見えていなかった生産や販売の大変さを知るとともに、お客さまの声を近くで聞くことができることに喜びを感じています。同時に、仕事と生活を切り離すのがなかなか難しくなった。というのも、これまで自分の個人的な悩みであり趣味の延長だったものが仕事と一緒になってしまいましたから。その状況を変えたくて、鎌倉へ引っ越しすることにしたんです。」

―なるほど。じっさいに暮らしてみて、いかがですか?
「週末の充実具合がまるで違います! ちょっと外に出ると自然がいっぱいなので、散歩するだけでも気持ちがいいんです。料理を作るための買い物も楽しくなりました。近所に新鮮な野菜を置いてる八百屋さんがあったり、魚介の市場があったりするので、きちんと選んで丁寧に作っている感じがする。」

―ちょっとしたゆとりや喜びが暮らしに生まれるだけで、日々の気持ちが前向きに変わりそうです。EMILY WEEKにも、そのように「日常を楽しくするちょっとしたご褒美」のような側面があるかと思いますが、柿沼さんにとって、日々の最高のご褒美とは?
「お風呂ですかね(笑)。夏でもなるべく毎日湯船に浸かるようにしていて。夜も深く眠れるし、次の日のパフォーマンスも格段に良くなります。朝は、メイクをしながら足湯をすることも。足湯の場合、お湯は熱めの方が、より自律神経的なものがカチッとする気がします!」
―仕事と生活のバランスは順風満帆といった感じですが、これから先の目標はありますか?
「具体的な目標はありませんが、歳をとるのが楽しみです。年齢に応じて、徐々に違う悩みが出てくると思う。そのときどきで自分のアイデアがどのように広がるのか、そこからどんな商品が生まれるのか、それがとにかく楽しみなんです。」

「体調が悪い時は無理せず休むことが大事。
健康を維持しながら心も身体も良い状態で働きたいと思っています。」
柿沼 あき子
EMILY WEEK コンセプター
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