
Photo_Maho Yamaguchi
Text_Masahiro Kosaka
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ファッションにのめり込むようになったのは、
カート・コバーンへの憧れからだった。
音楽のみならず、映画も小説も。あらゆる興味関心が、
いまの仕事に、しかるべく活かされている。
「偏屈」を自覚しながら、それでも、それだからこそ。
自分にしかできない角度で、ひと一倍、ブランドのことを考えている。
ファッションをやる以上は、
モノに携わっていいたい。
―外出もままならないコロナによる自粛期間中は、家でどのように過ごしていましたか?
音楽系の機材はいったん手放していたのですが、ギターだけは、まだ家に置いてあったんです。自粛期間中は、またそれを引っ張り出してきて、なんとなく弾いていました。エフェクターやらの一式も買い直して、iPhoneのガレージバンドというアプリでつくった曲を、サウンドクラウドにアップしたり。



―自分で作曲をして?
学生時代にバンドを組んでいた頃から、自分で曲を書いていました。なんせ歌が下手なので、自分で好き勝手に歌えたほうがいいんですよね。当時つくった曲も、今回改めてエレキで弾き直したりしてみました。
―もっとも影響を受けたミュージシャンは?
やっぱり、カート・コバーンですね。特に彼のファッションスタイルには大きな影響を受けて、ぼくもロン毛の金髪にしていた時期があります。Oasisのリアム・ギャラガーもしかりですが、ミュージシャンたちが、ぼくにとってのファッションアイコンでしたね。最近もグランジ的なスタイルが好みですが、以前よりは少しきれいに着るようになりました。

―ファッションへの興味や着こなしの好みは、中村さんのなかでは音楽と地続きだったわけですね。
正直、高校生の頃までは、洋服にまったく興味がありませんでした。どっちかというとCDや小説、映画に小遣いをつぎ込んで、没頭していた。それも偏ったこだわりを持っていたせいで、どんどん周りと話が合わなくなって、斜に構えたヘンな奴になっていった(笑)。

―なるほど(笑)。それでも、そうしたファッション以外のカルチャーへの興味や知識は、アパレルの仕事においてはおおいに役立ちそうです。
そうですね。たとえばこのカーディガンは、ぼくが以前企画して、商品化したものなんです。カートが着ていたJ.C. PENNYのカーディガンの復刻モデル。ブランド側にも好評で、その後通常展開されるようになったようです。
―現在はJOURNAL STANDARD relumeでプレスを担当しているということですが、これまでに特に印象に残っている仕事はありますか?
「WEAR THE NEW STANDARD」という企画を、ベイクルーズのオンラインサイトで連載しています。単に商品やスタイリングを提案するのではなく、新しい暮らしに落とし込んでいくことを意識した企画で、それを通して個人的にも成長できたし、ベイクルーズのなかでも一番いい企画ができたのではないかという自負もある。また、relumeの今後の指針を見つけたんじゃないか、という手応えも。

―今後の指針、というと?
本来relumeって、「気持ちがいい」とか「感じがいい」といった雰囲気を大切にするブランドであるべきだと、改めて感じたというか。歴史は10年以上ですが、ブランドのイメージはまだ定着させられていない気がしていて。その糸口を見つけるきっかけに、「WEAR THE NEW STANDARD」の連載がなるのではないかと考えています。いまはモノありきで企画を組んでいますが、今後は、連載に合わせた商品企画もしてみたいですね。
―先ほどのカーディガンもしかりですが、いわゆるプレス業の枠にとどまらず、中村さんは商品企画や編集的な側面も積極的に行っているようです。
ファッションをやる以上は、モノに携わっていたい。そう思っています。また、専門学生の頃はライターを目指していたんです。そういう意味では、「WEAR THE NEW STANDARD」のような企画に携われていることは大きいですね。編集を担当している徳原 海さんをはじめとした外部の方たちとの仕事もすごく刺激になる。内部だけで完結していても新しいことは生まれにくいので、そういった外との関わりを、仕事の糧にしていきたいと思っています。

―小説や音楽といったこれまで培ってきた背景をベースにしつつ、それをアパレル業界ならではのクリエイティブに落とし込んでいるわけですね。
自己表現することで承認欲求を満たしたいだけなんだと思います(笑)。

―最後に、relumeの魅力について教えてください。
自分が携わりながら、ブランドとしてクオリティの高いものを提供するためには、妥協せずに自分の主張を通すことも大事だと考えています。その分、上司や同僚と衝突することもある。でも、relumeチームは大人なので、そんなぼくをはじめ、若手の意見をフラットに聞いて、尊重してくれる。しっかり意見を伝えれば、「じゃあ、やってみる?」と受け入れてくれる。relumeの魅力は、そんなところにあると思います。

「忖度せず、自分の主張はしっかり伝える。」
中村 恭平
JOURNAL STANDARD relume プレス&WEB ビジュアルコーディネーター
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