
Photo_Shintaro Yoshimatsu
Text_Masahiro Kosaka
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「恥ずかしいし、おれなんかの話だれも聞きたくないでしょ?」
断られ続けるも粘り強くオファーし、ようやく出演OKにこぎつけた。
「プレスの玉木と一緒なら」と、急遽、対談形式に。
ひょうひょうと、摑みどころがなくて、ときどき少年みたいに無垢。
かと思えば、知識と経験の深淵を、ふいにのぞかせる。
で、急に恥ずかしくなって、茶目っ気たっぷりにはぐらかす…。
そんな彼の、ワークとライフについて。
将来的には、生地を買ったらそこに取説がついてて、
組み立てられる、みたいなことをやってみたいね。
―本日はよろしくお願いいたします! かねてから出演をお願いしていて、ようやく今日を迎えられたわけですが、南さんが恥ずかしがり屋ということなので、JOURNAL STANDARDプレスの玉木さんにも出演してもらうことになりました。これまでや現在の仕事のお話、プライベートのこと、ファッションのこと、未来の話、などなど、聞かせてください。
南:ほんと、おれなんかに聞きたいことなんて無いでしょう。そんなことより、「五月雨式で申し訳ございません」っていうの、けっこういいセリフだなって昨日歩きながら考えてたんだよね。五月雨式で申し訳ございません!って、なんなんだろう?(笑)

―さっそくの脱線ですが(笑)。玉木さんは今日を迎えるにあたって、南さんに聞きたかったことはありますか?
南:本名?(笑)
玉木:南さんから来るメール、いつもひらがなで「みなみ」って書かれてて、やさしいんですよね。そういうところ、キャッチしてますよ!っていうのは冗談ですが、南さんには、たとえば普段からオリジナル商品を作るときに、知らないことをバンバン教えてもらっています。正直、知識が奥深すぎてほとんどついていけないんですが…。


―南さんの現在の職種は、JOURNAL STANDARDのマーチャンダイザーだと伺っています。
南:カッコ笑い、くらいの感じでいいですよ。
―(笑)。具体的にはどういった業務を担当されているのですか?特にこだわっていることがあれば教えてください。
南:オリジナルブランドのディレクションですね。とくに原料から作ることにはこだわってます。その辺のことには個人的にも非常に興味がある。
玉木:原料屋さんと話をしていても、南さんの方が詳しかったりするんですよ。最近リリースした〈Are you happy?〉というカットソーレーベルだったり、2017年にリブランディングした〈TRISECT-2〉だったり、フックのあるオリジナルブランドは、だいたい南さんがディレクションされてますよね。

―なるほど。ベイクルーズのなかでは、これまでどういった経歴をたどってきたのですか?
南:商品に携わっているのは、ここ12年くらいのこと。ベイクルーズの社歴でいうと、20年くらいかな。JOURNAL STANDARD→Vulture→JOURNAL STANDARD relume→JOURNAL STANDARDという順にやってきました。JOURNAL STANDARD relumeに関してはちょうど立ち上げのときで、レディースとメンズを両方やった。そのときかな、皮がプリッと向けたの(笑)。

―すごい経歴ですね。現在のように商品に携わるようになる前には、さまざまな部署を経験されたのですか?
南:バイヤーとPR以外はやったかな。店長とかフィールドマーチャンダイザーとか。もともと出身は福岡で、当時は関西方面の店舗を見てました。まぁ、知識を得るという名目で、ほとんど遊んでましたけど(笑)。
玉木:でも、本当に知識量がずば抜けていて。ぼくは本社にくる前に大阪の店舗で働いていたんですが、南さんがわざわざ東京から来て、ぼくらに商品説明してくれるんですよ。そういうときも、話が面白すぎて、みんな前のめりで聞いてました。声もまたセクシーなんですよね。

南:一見無駄なことをどれだけ真剣にやるか、みたいな世界なので、作りの微妙なところとかは、やっぱりパッと見てもわかんないんですよね。だからこそ、ちゃんと伝えるようにはしてますね。
―なかでもこだわっているのが、生地や原料ということですね?
南:得意なのはそうですね。カットソーのカット生地も、機屋と一緒に作ったりして。

玉木:実はJOURNAL STANDARDにある柄モノって、ほとんどオリジナル生地なんですよね。だから、ほかと被らない。南さんとしては、仕事としてやるっていうより、知識を得るのが楽しいっていう感じですか?
南:まぁ、単純に知りたいよね。知った方がいいんじゃないかなって。服って、高くもないし、安くもないじゃないですか。だからこそ、ちょっとしたことが重要なんじゃないかと。…あ、いかん、真面目なこと言っちゃった。ここ、カットしといてくださいね(笑)。

玉木:そうだ、20AWについてのお話も聞かせてください!
南:次に考えてるのは、服はあんまり作んないってこと。全体的に服じゃないっていうか。プラモデルっていうか。

玉木:どういうことですか……?
南:たとえば一枚のブランケットがあったとすると、その一枚を使ってどんな服ができるか、みたいな。着る以前に、作る楽しみを味わえるような商品を出す予定。将来的には、生地を買ったらそこに取説がついてて、組み立てられる、みたいなことをやってみたいね。
玉木:めちゃくちゃ面白いですね!
南:もうひとつは、持ってる服に付け足せるようなアイテム。例えばTシャツに組み合わせられるフードやスリーブだけ売って、Tシャツを冬でも着られるようにする。それがただ実用的なだけじゃなくてちゃんとかっこいい、みたいな。

玉木:新発想ですね。そういうのって、どんなときに閃くんですか?
南:だいたい酒飲んでるときかな~。パッと思いついて、メモしたりとかね。
―音楽であったり映画であったり、普段どんなところからインスピレーションを得ているのですか?
南:あまり決まったものはないですね。でも、たとえば見方はわりと変えるようにしてるかも。逆の発想も一回考えてみる、みたいな。たとえば縦計算もあれば横もあるわけで、答えは同じでも、考え方が違うと、その過程で新しい道が見えてくることもある。ちょっとこれカッコよすぎるから、線引いて消しといてください(笑)。
―なるほど。ファッションのことやプライベートについても少し聞かせてください。今日みたいな格好が、普段通りのスタイルですか?
南:昔からずっと変わらないですね。Tシャツとスタプレに黒のコンバース。もしくはVANSのエラか、スリッポンか。
玉木:南さんといえば、バンドTのイメージですよね。今日のニルヴァーナのTシャツもオフィシャルですか? めっちゃ雰囲気ある!

南:破れと落ち具合がいいよね。バンドTはけっこう持ってるけど、とはいえコレクターじゃないので、あくまで着るものだけ。誰に見せるわけでもないし、着ないと意味ないよね。プライベートのことは、このへんで終わりでいいですか?(笑)
―もう少し聞かせてください(笑)。今日は私物のコンバースを持ってきていただきました。大ぶりのカバンふたつにたっぷり、圧巻の数ですね!
南:ヴィンテージと現行のもの、両方持ってきました。ボロボロになったオールスターが好きで、とくに80年代のはたまらないですね。

玉木:なんで80年代のがお好きなんですか?
南:そこはバルカナイズの良さというか。コンバースって、ソールにぐるっとフォクシングテープを巻いてあるんですよね。なかでも80年代のものって、実はテープのなかにタコ糸が入ってて、その経年変化がいい。そのディテールはUS企画の「CT70」も同じなので好きなんですよね。……とはいえ、そういうウンチク抜きにも、単純に好き。とくに黒は一番しっくりくるカラーですね。


―オフの日や息抜きの時間には、何をしていることが多いですか?
南:息抜きも、やっぱり服ですかね。唯一の趣味かもしれないですね。ファッションってあまり価値がないけど、それはそれでもいいかなと。おもろいですよ。あと、ネットサーフィンもよくする。何事も自分で調べたいんですよね。おすすめは、わかんない言語で調べること。日本語だと読んじゃうから、感覚が研ぎ澄まされないんですよね。音楽聴くのもそうで、じつは40歳になってから日本の音楽を聴くようになったんですけど、歌詞を聴くって感覚じゃない。それと似てるかも。あくまで感覚でどう捉えるか。玉木は、オフの日なにしてるの?

玉木:絵を描いてみたくなって、最近PCにイラストレーターのソフトを入れました。
南:お、同じだね!おれもiPadにプロクリエイト入れて、いろいろ描いてるところ。自粛中にずっと家にこもって仕事してたから、なんか服以外のことをやりたくなって。


玉木:すごい、レイヤーを駆使して!手が込んでますね!
南:北斎みたいな、漫画っぽいタッチが好きなんだよね。
玉木:これからストリートネーム「葛飾南斎」で活動していったらどうでしょう(笑)。
南:キャッチーな名前でいいね、それ(笑)。

―ということは、絵は観るのもお好きですか?
南:かなり観ますね。建築なんかも好きですよ。実はもともと学生の頃は建築家になりたかった。ポンコツで学校辞めちゃったんですけど(笑)。でもその頃も、デッサンの成績だけは「5」だったな。……五月雨式、っと。


「自分で一度決めたことは、曲げない。
意志がブレるようであればやらない。」
篠原 藍
IENA / IENA LA BOUCLE eコマース
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