
Photo_Shintaro Yoshimatsu
Text_Masahiro Kosaka
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「時計選びは、わたしにとって“結婚”のようなもの」
よどみなく言い放つ彼女の、モノへの愛ったらない。
時計はもとより、茶器、美術品、カメラにいたるまで。
気の向くまま。一度のめりこんだら、とことん突き詰める。
それがそのまま、接客にかけるのっぴきならない情熱にも。
そんな彼女のワークとライフについて。
時計は気軽に身につけられる美術品。
―まずは、HIROBについて簡単に教えてください。伊吹さんの勤める有楽町店は、最近リニューアルオープンしたそうですね!
「時計というと、どうしても男性に開かれた市場というイメージが強いと思いますが、HIROBは女性向けのブランド。あくまでファッションとしての提案を行っています。時計のほかにも、アクセサリーやバッグといったアンティーク品を(時計に関しては新品も)扱っています。有楽町ルミネには開業当時から店舗を構えていて、今年の9月4日にリニューアルオープン。開放感のある店舗に生まれ変わりました。」

―伊吹さん自身は、どうしてHIROBで働こうと思ったのですか?かねてから時計に興味があった?
「ベイクルーズには2014年に中途入社したのですが、時計について特別な興味があったわけではありません。知識だって、世間一般のひとと変わらないレベル。単純に、モノが好きで、転職中にいろいろ見ていたなかのひとつに時計があった。それだけなんです。」

―なるほど。実際に働くなかで、のめり込んでいったということでしょうか。かなり専門的な知識も必要な世界だと思いますが、どのように身につけていったのでしょう?
「雑誌『クロノス』を定期購読しています(笑)。うちには入ってこないような超高級時計なんかも載っていて、写真を見ているだけでも面白い。あとは、アンティークショップや質屋、並行輸入の新品を置いている店などに行って、実際に接客を受けてみたりも。」
―それから6年経ったいま感じる、時計の魅力とは?

―時計以外のアクセサリーなどはそれほどつけていませんよね?日常に寄り添う美術品として、中でも時計を選ぶ理由は?


―服と違って比較的高価な時計ゆえの、接客での心がけはありますか?
「嘘をつかないこと。例えば、似合わないときはちゃんと似合わないと伝える。説得してねじ伏せて売るというのが、一番嫌いなんです。わたし自身は、結婚するみたいな気持ちで時計を選びます。お客さまの買い物に対しても、同じように考えていて。「この子イケメンだから」とおすすめして、いざ結婚したら浮気しまくる、なんて最悪じゃないですか。だから、「この子は、最低何年に一回くらいメンテナンスが必要で、いくらかかる」といった、わかっていることは全部伝える。それ相応の扱いが必要なことをわかったうえで、納得して買ってもらいたいんです。そうじゃないと、お客さまにも時計にも申し訳ないですから。」

―プライベートについても聞かせてください。モノが好きというお話でしたが、時計のほかに趣味や集めているものはありますか?
「時計の前にハマっていたのは、茶器です。平日休日問わず、様々な種類のお茶を飲むのが日課で。仕事のある日は、朝起きがけに抹茶をたててます(笑)。抹茶を飲んでいる間に、今度は会社に持って行くミルクティーを淹れる。そんな風にしていると茶器が気になってきて、いまでは自宅に20人の来客があってもお茶を振る舞えるくらいの数に。」

―一度ハマると、徹底的ですね!美術館や博物館も好きということでしたが、美術品も、集めているもののひとつでしょうか?
「いえ、そこはなかなか手が出ないので、そのかわりに絵画や写真などのポストカードを集めています。博物館でいうと、東京国立博物館内にある法隆寺宝物館が個人的には一番好きな場所。一階に仏像がずらりと並んでいて、圧巻なんです!もちろん年パスも持っています(笑)。」

―最後に、今後の目標について聞かせてください。
「これまでずっとファッションアドバイザーとして働いてきましたが、入社当初は、販売以外の仕事もやってみたいと思っていました。コロナで店頭に立てなかった時期に、SNSの重要性を身をもって実感して、そうした発信系のお仕事も面白そうだなと。とくに、素人ながら、写真の撮り方ひとつで反響が変わることが面白かった。ということで、最近はカメラに興味が湧いてきました…!(笑)」
―興味の矛先は、まだまだ尽きそうにないですね(笑)。

「接客において、嘘をつかないこと。」
伊吹 麻里
HIROB ファッションアドバイザー
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