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  3. 【CREW'S VOICE vol.32】JOURNAL STANDARD 商品企画 / 上條 結花
CREW'S VOICE

Photo_Shintaro Yoshimatsu
Text_Masahiro Kosaka

自分の仕事にいたって冷静なまなざしを向けながらも、されど。
ベーシック一辺倒にならない、らしさや個性を、そっと忍ばせる。
たとえ意固地になってでも、つくる服ぜんぶに。
そんな彼女のデザイナーたる並々ならない信念を紐解いていく。

周りのみんなが知ってくれているので、
がっかりさせたくないんです。

―まずは、ベイクルーズに入社した経緯について教えてください。

「2014年に入社しました。以前からファッションは好きだったのですが、親の影響もあって仕事にするつもりはなく、大学を出てから一度広告会社に入りました。でもいざ働いてみると、この先何十年も続ける仕事なら、安直ですが、好きなことを仕事にしたいと思うように。そして、動くなら早い方がいいと文化服装学院で2年間服飾の勉強をして、その後ベイクルーズに入りました。」

―親の影響、というと?

「母が商社で働いていたこともあって、いわゆるバリバリ働く女性に昔から憧れていたんです。大学時代には海外NGO団体に所属していたので、そちらに進むことも考えましたが、結局、仕事にするイメージはできなかった。同じようにひとに喜んでもらう仕事をするのなら、まずは自分が楽しめることをしたいと思いました。」

―一度は仕事にするのを諦めてしまった業界に、思い直して飛び込んでみたんですね。なかでも、ベイクルーズを選んだ理由はありますか?

「良くも悪くも、すごく自由な会社だと感じました。そこは、実際に働いてみて、より実感するところ。歴史はありますが、決して型にはまっているわけでもない。自分のやりよう次第で、変えられることもあるし、学ぼうと思えばいくらでも吸収できる。逆に怠けようと思えばいくらでも怠けられちゃうので、自分を律さないとなと。そういう場所だと思います。」

―デザイナーとして商品を企画していくうえで、特に意識していることや、大切にしていることは?

「セレクトショップのオリジナル商品は着ないってひともいるかと思います。とはいえレディース市場において、オリジナルアイテムは売上の比重も大きい。そんな中で、「JOURNAL STANDARDでこれに出合えてよかった」と思ってもらえるような服をつくりたいとは、常々考えています。ベーシックなアイテムでも、フックになるようなディテールやカラーリングなどを忍ばせて、ちょっとだけ他と違っていいなって思ってもらったり、その人のお気に入りの一枚になってくれたらいいなって。」

―全商品に対してですか?

「時に意固地になってでも、「この程度でいいか」という妥協はしないようにしています。商品企画の仕事をしているひとは、みんなそうなんじゃないかな。オリジナル商品だからって、適当に流しているひとはいないと思う。とくにJOURNAL STANDARDの場合は、家族や友人はもちろん、多くのお客さまがブランドのことを知ってくれているので、良い商品があると思ってほしい。 そしてお店で働いている同僚たちにも、商品を見たときにがっかりしてほしくないんです。」

―そのように情熱と手間暇をかけてつくった服をたくさんのひとに着てもらえるのは、本当に素敵なことですね。

「本当にその通りです。入社したての頃に担当したワンピースを、あるとき電車のなかですごく綺麗な女性が着てくれているのを見つけたことがあって。目が合うまで、じーっと見つめてしまいました(笑)。自分がつくったものをいろんなひとに着ていただけるのは、やはり商品企画の醍醐味ですね。」

上條さんが以前企画提案から携わったワンピース。ファンの多いヴィンテージショップKIARIS VINTAGE&CLOSETとの別注で、型から素材、カラーリングにいたるまですべてイチからつくりあげたという。「この柄の色味は、KIARISのオーナーさんがお持ちだった60、70年代の陶器を参考にシミュレーションを繰り返して仕上げました」。
アクセサリーは華奢で女性らしいものより、無骨なものが好みで、インディアンジュエリーやCELINE、FUMIKA UCHIDA、ヴィンテージなど色々なタイプを収集中。一番のお気に入りは、JOURNAL STANDARDで別注したAndy Cadmanの極太バングル(左上)。仕事のときも普段も、自信をプラスしてくれる、御守り的な存在なんだそう。

―休みの日やオフの時間には、どんなことをしていますか?息抜きの方法は?

「あまり公私を分けられないタイプなので、休みの日も服屋さんを回っていることが多いですね。かといって、それが負担になっているわけでもありません。」

―本当にファッションが好きなのですね!プライベートでは、どんなテイストの服が好みなのでしょう?

「服飾時代に古着にハマってから、いまでも大好きです。特にジャカード生地のような特別感のある素材や、ちょっと独特でデザイン性のあるアイテムが好みです。」

―一度は別の業界に足を踏み入れたものの、アパレル業界に方向転換したことは上條さんにとって正しい選択だったようです。「好きなことを仕事にすべきか」、そこって多くの学生たちが直面する命題だと思いますが、“仕事にした側”として、いまはどのように考えていますか?

「好きを仕事にして“合わなかった側”になったことがないので一概には言えませんが、好きなことを仕事にしているほうが、充実感は明らかに大きいと思います。苦悩もありますが、毎日が少しずつ新鮮で、アップデートされていく。いずれにせよ、挑戦しないうちから選択肢を消してしまったあの頃の自分は馬鹿だったなと思います。好きだったファッションの道に進んでみてから決めても、遅くなかった。小さなことからでもはじめられる時代だし、まずは気持ちの向くままトライして、それから決めるのがいいんじゃないでしょうか。」

「“これに出合えてよかった”。そう思ってもらえるような独自性ある服をつくる。」