
Photo_Shintaro Yoshimatsu
Text_Masahiro Kosaka
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ひとと洋服をつなげる、その一助になる。
販売員冥利に尽きる喜びを、彼女は幼いながらに体験してきた。
親から子へ、脈々と受け継がれる営みのなかで。
彼女にとってファッションは、ありふれた暮らしの一部。
それでも、いまだに。
なお一層、想いは増すばかり。
疲れているときほど、
おしゃれをするようにしています。
―まずは、現在の業務内容について教えてください。
バイヤーとして国内の展示会をまわったり、納期のコントロールをしたり。また、Oriens JOURNAL STANDARD(以下:Oriens)のメンバーはそれぞれに担当をもちながら、店頭にも立っています。接客やSNSでの発信にも、とにかく力を入れているところです。

―2020年に新しく生まれたブランドですが、コロナ禍の影響で、過酷なスタートを強いられたことと思います。海外にも行けない状況が続き、特にバイヤーである櫻井さんにとっては。ただ、現在店頭に並んでいる2020AWの商品については、去年のうちに海外にてバイイングしてきたと。新規ブランドも豊富で、おまけに櫻井さんはバイヤーになりたての頃。手探りの部分も多かったかもしれませんね。
とにかく勝手がわからなかったので、最初のうちは、大きな展示会をメインにまわるようにしていました。一方で、気になるブランドについては、出張前にSNSなどで探して目星をつけていて。駐在のひとにお願いしてアポ入れしてもらったり、直接InstagramのDMから連絡を取ったりしていました。
―Oriensの世界観、櫻井さんの仕入れたいもの、大きくは両面あると思います。そのあたりのバランスは、どのように担保していましたか?
Oriensのメンバー5人(取材当時の人数)は、みんな古着が好きで、大体の好みも似ているんです。そのため、「こういうのがOriensっぽいよね」という共通認識は、割と早い段階からできあがっていました。それに沿ってバイイングしていけば、自然とOriensらしいし、わたしらしくもあった。また、最近はオリエンスガール、オリエンスボーイという仮想の人物像を指針にすることも多いですね。ふたりは付き合っているけど同棲はしていなくて、服に毎月いくらくらいお金をかけていて……。みたいなイメージを、よくみんなで話しています。

―「好きなものを、好きなように、好きなだけ」というブランドコンセプトを、しかるべく体現しているというわけですね。櫻井さん自身については、どういった洋服やスタイリングが好みなのですか?
派手なものが多いです(笑)。大体、いつも柄モノを一点投入している。特にパンツについては、チェックや花柄といったさまざまな柄モノを持っています。古着を買うことが多くて、中目黒の「JANTIQUES」や「THE MIX」、三軒茶屋の「ZIG」といったお店に、よく行ってます。親の影響で、昔から宝飾品も好きですね。

―親の影響、というと?
祖父母の代から、実家が婦人服店を営んでいるんです。いまは両親が継いでいて。昔から、母やおばあちゃんのおさがりや、「こういうのが欲しい」と母に買い付けてきてもらった服やアクセサリーを身につけていました。宝石の展示会を見に行くこともあって、キラキラしたものは、その頃から好きでしたね。



―すでにその頃から、アパレル業界に進むことをなんとなく決めていたのですか?
そうですね。母親の出張について行っていったりすることもありましたし、家にいるよりも、お店で過ごす時間のほうが長かった。お店に来るお客さまたちと話をすることも日常で、わたしのひと言で商品が売れる、なんてことも子どもながらに体験していました。わたしもこの道に進むんだろうなとは、自然と意識していたのかもしれません。

―幼少の頃から暮らしのなかに当たり前のように“ファッション”があっただけに、いまやとりわけ特別なモノという意識はないのではないですか?
それが、そんなことはなくて。ファッションは、いまでも純粋に好きです。その日の予定や気分によって着る服を選ぶのは、やっぱり楽しいし。好きなモノを着るだけで元気が出るので、疲れているときほどおしゃれをするようにしています!


―着こなしや仕事のインスピレーションは、何から得ていますか?
海外ドラマが、そうかもしれません。バイブルは、『SEX AND THE CITY』と『GOSSIP GIRL』! セリフを覚えちゃうくらい、何度も繰り返し観ています。
―オフの日についても聞かせてください。趣味や最近のマイブームはありますか?
最近は、美容にハマっています。25歳になってから、シミが増えはじめたので……(笑)。エステに通ったり、美容皮膚科で毛穴を圧出してもらったり。オーガニック系の化粧品や、CBDオイルを試してみたり。でも、やっぱり服が大好きなので、ショップを回っていることが圧倒的に多いですね。
―日々のメンテナンスやリフレッシュは、やっぱり大事ですよね。ほかに息抜きの秘訣はありますか?
自然のあるところに行くこと。サーフィンや日光浴をしに海に行ったり、自転車を借りてサイクリングしたり。この前は、両親と一緒に箱根旅行をしてきました!

―コロナの影響で、まだまだ厳しい状況が続きそうですが、今後取り組んでいきたいことはありますか?
Oriensのメンバーおのおのが、より販売員としての力を上げていく必要があると考えています。「あのひとに会いたくて」、「あのひとから買いたくて」と思ってもらえるように、わたしたちがアイドル化しないといけない。実店舗の昔ながらの存在意義を、いまだからこそ追求していこうと思っています。

「店頭では、動きやすい服装を心掛ける。」
櫻井 花ノ子
Oriens JOURNAL STANDARD バイヤー
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