
Photo_Yuki Aizawa
Text_Masahiro Kosaka
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彼みたいなひとが上司だったらいいな。
話を聞くほどに、じんわりと、そう思えてくる。
「何をするにも、トップダウンではなく、現場との二人三脚で」。
一緒に働く仲間へのリスペクトと感謝の気持ちが、
彼の言葉からこんこんと湧き出てくるようだ。
そんな彼のワークとライフについて。
―まずは、ベイクルーズに入社してからの経歴について教えてください。
「新卒で入社して、JOURNAL STANDARD relumeに配属。関西の店舗で5年ほど経験を積みました。最後の半年間は副店長になって、そのあと、本社配属が決まり東京へ。それから3年ほど、ビジュアルコーディネーター(以下:VC)の仕事をしています。」
―VCの部署には、中村さんが異動希望をしたのですか?
「そうです。店舗スタッフの頃も長くレイアウトを担当していて、その道をもっと極めたい気持ちがありました。直接のきっかけは、当時VCをやっていた三橋さんという上司の存在。関西でとある新店をオープンするときに三橋さんと一緒にレイアウトを組む機会があったんです。本社から来たいわゆる専門のスタッフの仕事を目の当たりにして、そのすごさに圧倒されました。のちに本社のVCに空きが出たときに三橋さんが声をかけてくれて。そうして社内公募を受けることになったんです。」

―三橋さんの仕事を目の当たりにして感じたのは、具体的にはどういった“すごさ”だったのでしょうか?
「商品や什器、店内環境など、お店ごとに多少違いはあれど、用意されている“武器”はみんな大体一緒です。でも、レイアウト次第で仕上がりはまったく違う。そのことを思い知らされました。奥が深いな、自由だな、と思った。」
―なるほど。
「それからレイアウトにのめり込むようになって、朝7時にお店に行ってひとりで納得するまでレイアウトと向き合ったりしていました。たぶん仕事として考えれば、いかに時間内で効率よくやるかを求められるとは思います。でもそのときのぼくにとっては、そうした泥臭いやり方が、成長のために必要だった。いまではそう思っています。」

―見えないところで努力を続けたからこそ、きっと三橋さんからも声がかかったのでしょうね。ところで、最近は中村さんのように関西で活躍していたスタッフが東京の本社に異動する例がとくに多いようです。その流れには、ピンとくるところがありますか?
「単純に距離もあるから、関西のスタッフが本社のひとと接する機会ってあまりありません。当時のぼくもそうで、だからこそ三橋さんと初めて一緒に仕事をしたときに感銘を受けた。そういった意味で、関西のスタッフは、本社で働くことへの憧れとハングリー精神が強いんじゃないでしょうか。東京に行って面白いことをやりたい、という強い気持ちを持っているひとが多い気がする。」

―じっさいに本社で働くようになって、いかがですか? イメージしていた仕事とのギャップなどはありませんでしたか?
「本当に、知らないことだらけでした。什器の移動でこんなに車を運転するとは思っていなかったし、店舗やイベントで使うポップを一枚一枚自分たちで切るとは思っていなかった。店舗では当たり前に思っていたことが、実は時間と手間をかけて作られていることを知りました。純粋なレイアウトの仕事なんて、ごく一部でしかないんだなと。」
―以前の中村さんと同じように、店舗でレイアウトに力を入れていて、いつか本社で働きたいと考えているスタッフも多いことと思います。ずばり、本社で働くことの魅力とは?
「普段お店のスタッフが関われるのって、同じお店のスタッフや本社スタッフくらいだと思います。でも、ここで働いていると社外のひとと関わる機会が増えてくる。つまり、ベイクルーズの外で活躍するひとの感覚や、仕事、生き方に触れることができます。ぼくはベイクルーズのことが好きですが、ここだけに染まりすぎるのもよくないと思っているんです。」

―VCとして、とくに店頭やイベントのレイアウトの仕事において、ブランドの世界観に、中村さんのやりたいことやエッセンスは、どのくらいのバランスで注いでいますか? 意識していることがあれば教えてください。
「ぼくは現在、およそ25店舗を担当しているのですが、ひとつのブランドとはいえ、それぞれに客層や立地の違いがあります。だから、単にこちらの意向本意で進めたり自分の色を出したりするのではなく、お店のスタッフにヒアリングして一緒にやっていくことを大切にしています。それがスタッフたちのモチベーションにもなると思うし、協力して商品が売れたら、彼らも成果を実感できる。ブランド全体の戦略といったものももちろんありますが、極端な話、お店によっては無視ししてもいいかもしれない。ある程度のところを押さえておけば、あとは相談して、お店にチャレンジしたいことがあるならやらせてあげたい。たとえそれでうまくいかなくても、それがイコール失敗ということにはならないと思います。」

―オフの日についても聞かせてください。休みの日は何をすることが多いですか?
「昔から、骨董市をまわるのが好きです。とくに地元のおじいちゃんおばあちゃんが行くような素朴な催事に目的なくふらりと行って、値段やジャンルは気にせず買い物をすることが多いですね。ラグだったり、紙切れだったり、オブジェだったり。実は去年の冬に子どもが生まれたので、最近はおもちゃや子ども用の家具にも目が行くようになりました。」
―お子さんが生まれたのですね!おめでとうございます!パパになってから、仕事の変化はありましたか?
「仕事はこれまで通りですが、それこそ同じくお子さんのいる三橋さんとは、子どもの相談をしたり、服を貰ったりするようになりました。もうすぐ引っ越す予定なのですが、それも三橋さんの近所なんです!(笑)。いまは部署が離れてしまっていますが、仕事のこともプライベートのことも話せる関係です!」

「モノと関わる仕事だからこそ、ひととのコミュニケーションを大切にする。」
中村 悠
JOURNAL STANDARD relume ビジュアルコーディネーター
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