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  3. スタンダードな話をしよう。 vol.5アユニ・D(BiSH、PEDRO)
  • Talk to standard.

    vol.5

     

    アユニ・D(BiSH、PEDRO)

    気になるあの人はどんなことを大切にして日々を過ごしているのだろう。“その人の軸=スタンダード”にぜひ迫ってみたい。仕事や生き方、好きなものや定番品から垣間見える、その人だけのマイスタンダード。第5回目のゲストは“楽器を持たないパンクバンド”BiSHのアユニ・Dさん。北海道時代の自分をクソガキだったと述懐する彼女は、BiSHの活動を経てサナギが蝶になるように大きな脱皮を遂げました。ハードかつ多忙なこれまでと、2023年をもって解散する心境とこれからについて、言葉を一所懸命に紡ぐ彼女のかけがえのない瞬間とは?

    Photo_Syuya Aoki
    Styling_Masataka Hattori
    Hair&Make-up_Kika
    Text_Shinri Kobayashi
    Edit_Ryotaro Miyazaki

    アユニ・D

    BiSH、PEDRO

    北海道出身。2016年、オーディションを経てBiSHに加入した、一番の新参者。BiSHは2023年をもって、解散が決まっている。趣味は、読書、ファッション、映画など。
    Instagram:@ayunid_official

    人間はみんな人見知りで、
    そこから先にどうするか。

    まずはBiSH以前のお話から。北海道の札幌出身とのことですが、どんな子でしたか?

    小学生くらいまでは、外で遊んだりとかいわゆる活発な子だったんですけど、年齢を重ねていくにつれて陰キャというか根暗になっちゃって、インターネット大好き! みたいな。ちなみに、その頃から、BiSHはずっと好きでしたね。

     

     

     

     

    インターネットでは、何を見てたんですか?

    うーん、主にネットサーフィンですね。まとめサイトやYouTube、オカルト系も好きでした。

    当時、音楽はどんなものを聴いていましたか?

    その時は全然音楽について詳しくなかったんです。でも、姉と兄がいて、お兄ちゃんが結構音楽好きだったので、その影響で海外のEDM系のアーティストを聴いてました。あとは、お姉ちゃんが好きだった、BiSHの楽曲を聴いたりとか。その2人からの影響は大きいです。

     

     

     

    振り返ってみて、北海道時代のご自身はどんな人間だったと思いますか?

    すごい言い方悪いんですけど、クソガキだなと(笑)。当時、全然人と喋らないどころか、人に興味を持つこともしてなくて。斜に構えてるのがかっこいいと思ってたんです。人から受けた愛とか優しさも、全部跳ね返していて、いま思うと恥ずかしいことです。

    となると、BiSHの活動がやっぱり大きいんですかね?

    上京後、BiSHやソロ活動をやらせて頂いて、いろんな経験をさせてもらって、いろんな人に出会って、人の優しさや愛をたくさん知るようになって、自分でもすごい変わったなと。人からも、すごく笑うようになったとよく言われます。うん、明るくなりました。人と話すのが苦手だったけど、自分でも割と自覚はあるんですが、喋れるようになりましたね。今まで人見知りっていう概念に自分から逃げていたんですけど、思うのは、結局人間はみんな人見知りなんじゃないかなって。あとは人に頑張って話しかけるか、そこで人見知りという概念に逃げていいかの違いなんじゃないかな。

     

     

    ちゃんと分析もされてて、すごい考え方の変化ですね(笑)。

    でも、そういうことも含めていろんなことに気づいて、喜怒哀楽も覚えて、前向きというか、明るくなった自覚はあるんですけど、やっぱり根は暗いままなんだなと。だから、変わってない部分として、情緒が不安定なところというか、自分の中で暗くて、ダメな方に落とし込んじゃうところかなって。

    いままでのつらさが全部
    嘘だったみたいな瞬間がある。

    BiSHに加入したことで生活も激変したかと思います。

    もう変化しかないってくらい、すごい変わりました。自分の生活では、上京して一人暮らしをして、環境も時間の過ごし方も全く違うし、関わる人たちも変わったので、変化せざるを得ない状況でした。BiSHに入って、ありがたいことに、練習とツアーを繰り返すという怒涛の日々で、すごく不器用なので、ーーいまでもなんですけどーー、最初の頃はペースがつかめなくて、自分で自分を追い込むような生活をしてしまったんです。ゴミの捨て方もわからなくなって家もゴミ屋敷みたいになったり、ご飯の食べる配分もわからなくなっちゃう、みたいな。BiSHとしての生活に慣れていくうちに、だんだん要領を掴んできて、次第に部屋もきれいになっていきました。

     

     

    自然に囲まれた北海道からいきなり東京に、というのもストレスですよね。

    やっぱり人が多いのが最初は苦痛だったんですけど、自分が好きでこの道を選んで上京したし、親も金銭面や精神的な部分ですごい大変でも上京させてくれたんで、もうここで頑張るしかない、頑張っていこうって。そもそも逃げ方がわからないし、もう出てきちゃったし、いろんな人にお世話になってるしって。

    BiSHになって、歌やダンスの練習をたくさんされたかと思うんですが、BiSH以前はそういうことはしていたんですか?

     

     

     

     

    全くやってなくて……。BiSHに入った瞬間から全国を飛び回る生活がスタートして、夜行バスに乗って、ネットカフェに泊まって、また夜行バスで帰る、みたいな。東京に帰ってきたら、日中は各々やることをやって、深夜に歌やダンスの練習してましたね。

    聞くとなかなかハードな生活ですが、何がモチベーションだったんですか?

    ライブをやるたびにできることが増えると楽しくて、それがエネルギーに繋がってました。日々がつらかったとしても、ライブをやると本当に楽しくて、いままでの辛さが全部嘘だったみたいな瞬間があって。そういう時間を清掃員(BiSHのファンのこと)やBiSHのメンバーやスタッフさんとたくさん味わわせてもらってるから、もう止められない。楽しくて、やめられないなって感じでした。

     

     

     

     

     

    その瞬間的な気持ち良さはすごそうですね。ソロ活動のバンドプロジェクト、PEDROについても聞かせてください。どういう形でスタートしたんですか?

    実際のところ、事務所の社長にいきなり呼び出されて「やらないか?」って。社長のやらないか? は、やれってことなんで(笑)、やるしかなくて、そこで初めて楽器を始めました。ライブを重ねて、どんどんバンドになっていった感覚もあるし、やるうちにどんどん音楽が好きになりました。

     

     

    楽器は、なぜベースだったんですか?

    ギターとベースどっちがいい? って社長に聞かれたときに、ギターは弦6本、ベースは4本で、少ない方が簡単なんじゃないかという安易なアホちゃんの考えでした(笑)。

    PEDROというバンド名は、映画からきているそうですね。

    本や服と同じように、映画が好きで、中でも好きなのが『ナポレオンダイナマイト』。そこに出てくるペドロというキャラクターからつけました。

     

     

    ご自身でも歌詞を書かれていますが、もともと書くのは好きなんですか?

    そうですね。好きなのもそうですし、やっぱり書いておかないといろんなことを忘れちゃうんですよ。最近は、日記を書いていて、家に帰ったら誰とどんなことを話したとかを残してます。

     

     

     

    歌詞に込める想いって何かありますか?

    そのときそのときによって全く違うんですよね。作品のときに心掛けてることは特になくて、自分の心情を書くこともあるし、最近は全く関係ない音ハメや言葉遊びとして書くこともあれば、ここでちょっと違和感を感じるようなパワーワードを入れたいなとか。あとは、自分のことは自分で肯定しなきゃ何も変わらないなと思ったことがあって、自分を肯定するような歌詞を書いたこともあります。それを歌うと、なんか自分にも言い聞かせてる感覚もあるし、人にも言っている感覚がある、みたいな。別に人を救いたいと思って書いてるわけじゃないんですけど、その曲を聴いて、なんか救われたよとか言ってくれる方もいたり。何かに救われるのを祈って書いたりすることもありますね。

    愛してくれた恩返しを目一杯。

    ファッションについてですが、どんなテイストのものが好きですか?

    興味を持ったのもここ1年ぐらい。それまでは元々古着が好きで、おじいちゃんが着ているような服装みたいに、いなたければいなたい方がいいってくらい合わせ方とかも考えずに適当に着てたんです。いまは色の合わせ方やその服の歴史を、古着屋さんの人と喋ったり、服好きな友達から教えてもらって、ちょっと勉強したり。

    よく着ている特定のジャンルはありますか?

     

     

    いろんなものを着たいなって思ってて、トレンドのY2Kとかにも興味があるし、昔のスナップもよく見ます。昔のサーフブランドのものとか、キレイめな古着も着ます。

    よく読んでいるファッション誌はありますか?

    『GINZA』と『装苑』を購読しています。

    今回のスタイリングを担当してくれた、服部昌孝さんにも聞いたり?

    そうですね。例えば、眼鏡が欲しいんですけどどこで買ったらいいですか? って聞いたら、いいお店を10個くらいリストアップしてくれたり。服の悩みがあったら服部さんに聞きます。服部さんは、服の色の組み合わせ方が独特で、すごく面白いんですよね。

     

     

    では最後に、BiSHは、2023年をもって解散すると宣言しています。それまでにしたいことはありますか?

    個人的には、音楽もそうですし、絵を描いたり、物を作ることがすごい好きなので、何かクリエイティブな面をもっと深めたいなと。あとは服のことをもっと知りたいとか、やりたいことは数え切れないくらいあるんですけど、BiSHとしては、最後までかっこいい音楽を出し続けたいですね。あとは、今年は12ヶ月連続リリースをやったり、……毎月ライブで回る中での制作、撮影なので、大変ではあるんですけど、楽しんでやってます。新しくライブハウスツアーが始まって、6月はワンマンだけで14公演もあるので、体を壊さないようにしつつ、今まで通りがむしゃらに。あとは、BiSHを知ってくれている方とか清掃員に愛と感謝を伝えに行きたいなと。会いに行けるだけ会いに行って、愛してくれた恩返しを目一杯やりたいなと思います。

     

    アユニ・Dの定番品

  • 京セラのカメラ「SAMURAI」

    すごい勢いでいろんなことを忘れてしまうんですけど、何もかも忘れたくないなって思うようになって、思い出を全部記録しようと思って買いました。PEDROのドキュメンタリーを撮ってくださった、映像作家のエリザベス宮地さんにオススメを聞いて買いました。 CDジャケットの撮影などにも使ってます。

  • レジンの手作りお香立て

    部屋作りもそうですが、お香がすごい好きなんです。お香はリラックスしたいときとか、ストレス発散になるんですけど、お香立てを自分で作りたいなと。枯れてしまった、撮影に使った花をちぎって中に入れてます。お香もクンバとか、色々好きものを試してます。

  • ReFaの「グレイスヘッドスパ」

    晴れてても低気圧の日は頭痛がするくらい、気圧にすごく影響を受けるんですけど、これをやると頭の血行が良くなって、気持ちよくなります。最初は痛かったけど、我慢して当て続けるとある一線を越えた瞬間に気持ち良くなるんですよね。