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  3. スタンダードな話をしよう。 vol.16 山田杏奈
  • Talk to standard.

    vol.16

     

    山田杏奈

    気になるあの人はどんなことを大切にして日々を過ごしているのだろう。“その人の軸=スタンダード”にぜひ迫ってみたい。仕事や生き方、好きなものや定番品から垣間見える、その人だけのマイスタンダード。連載企画の最後を飾る第16回目のゲストは、女優・山田杏奈。雑誌『ちゃお』専属モデルとして10歳でキャリアをスタートし、次第に演技の道へとシフトしていきました。21歳と若いながらも、数多くの映画で主演を務め、シーズンを問わずドラマにも引っ張りだこ。特徴的なベビーフェイスながら、好きな映画の一つに、韓国の『オアシス』を挙げるなど、大人びた感性はどうやって育まれたのか。自らを真面目と称する、彼女が大切にしてきたもの、そして大切にしたいことを伺いました。

    Photo_Hikari Shibata【ASOBISYSTEM】
    Styling_Ayano Nakai
    Hair&Make-up_Fumi Suganaga【Lila】
    Text_Shinri Kobayashi
    Edit_Ryotaro Miyazaki

    山田杏奈

    女優

    2001年1月8日生まれ、埼玉県出身。2011年『ちゃおガール☆2011 オーディション』でグランプリを受賞しデビュー。2018年『ミスミソウ』で映画初主演。2019年『小さな恋のうた』第41回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞受賞。その後数多くの映画・ドラマに出演する。22年は、ドラマ『未来への10カウント』『17才の帝国』『新・信長公記~クラスメイトは戦国武将~』『早朝始発の殺風景』等、話題作に多数出演。また初の舞台作品となる『夏の砂の上』へ出演を果たした。23年には主演映画『山女』の公開が控えている。
    Instagram:@anna_yamada_

    仕事か大学か、
    その大きなわかれ道で。

    芸能界に入ったきっかけは、ちゃおガール(少女漫画雑誌『ちゃお』専属モデル)のオーディションだったそうですね。

    はい。グランプリの賞品だったニンテンドーDSが欲しくて応募しました(笑)。受かったのはいいんですが、動機が不純だったからか(笑)、いまあの当時を振り返ると、習い事感覚になってしまっていてお仕事に興味を持って主体的に取り組んではいなかったですね。

     

     

     

    親から見てどんな性格のお子さんだったんでしょうね?

    真面目、負けず嫌いという感じかな。弟がいて、小さい頃に一緒にトランプのゲームをしたときに、わたしが弱いから負けちゃうんですけど、散々泣いて「もう、やらない!」と。そういう感じでした。勝てないともうヤダって。外ではそんなことはないから、内弁慶なんでしょうけど(笑)。

    演技が面白くなり始めた経緯は?

    15歳頃から、オーディションに合格することが次第に増えて、ちょうどタイミング的にも仕事にハマり始めていきました。自分しかその役をやるひとがいないという状況もうれしかったし、現場が楽しくなってきた頃です。

     

     

    その頃は中学、高校の頃ですね。高校受験をすごく頑張ったとか?

    すごく勉強して、高校は文武両道のいわゆる進学校に通っていました。でも、大学に行くか・行かないかというタイミングで、学校を移ったんです。嬉しいことではあるんですが、お仕事が忙しくなってきて、単位が足りなくなってきちゃって。学校かお仕事かで、すごく悩みました。

    大きなわかれ道だったということですね。

    高3の夏だったんですけど、秋に撮影が決まっている映画を諦めるか、学校に残って受験勉強を頑張るか。この仕事を一生やるのかまで考えて、スパッといきましたね。大学を諦めるとなると、高卒ということになりますが、親には選択肢をできる限り多く残しておきなさいと言われて育ってきたんです。自分としては勉強も頑張りつつ、仕事にも打ち込んできたなかで、最終的には自分自身でこの仕事を選んだという感覚がすごく大きな意味があると感じます。

     

     

    親御さんが「選択肢を…」というのは、可能性を狭めない方がいいということでしょうね。女優業となると分母もすごく小さくなるわけですが、山田さんご自身も不安な部分もあったんですか?

    もちろんそうです。悩んで色々なひとに意見を聞きました。それこそ選択肢を残さずに、もっと切り詰めて一つの道にした方がいいという方もいれば、大学に行きながらでも仕事はできるという人もいました。でも、最終的には、自分でこの道を選んだということが、いま考えても大きいです。親から17、8歳の自分に委ねてもらって、自分で考えて決めたからこそ、その場所で全力でやりきったといえるだけのことはしていきたい。それが自分の責任だと思ってます。もちろん、自分がやりたい、とばかり言ってもどうにかなる仕事ではないので、周りに必要とされて、周りに助けてもらうことが難しくも大切でしょうね。

     

     

    ちなみに女優じゃなければ、何になりたかったんですか?

    高校のときは、大学の進路は法学部と書いていましたが、法律家を目指していたかはわかりません。

    演技する楽しさを
    思い出させてくれた舞台。

    先ほどのお話で、映画か大学かの二択の際に、撮影を秋に控えていた作品はなんですか?

    『小さな恋の歌』です。結果的にいまでも大好きな作品の一つで、やはり運やタイミング、ご縁に恵まれたんだなと。自分のなかでもすごく大きな存在の作品になっています。というのも、この作品をきっかけに賞を頂けたこともそうですし、芝居もすごく楽しめました。バンドものでしたが、実際に共演者と何度も楽器を練習したことも、単純に沖縄で1ヶ月半撮影したことも全部楽しかった思い出です。

     

     

    演じるということの楽しさを最近はどのあたりに感じていますか?

    ちょっとお話がズレるかもしれませんが、最近はドラマの撮影が立て続けにあって、お芝居に関するアンテナが鈍ってきてるという自覚がありました。例えばテレビドラマの撮影は時間が限られているんですが、気がつくと、あれ、いま何も考えないで演技しちゃってた、みたいなことがあって、それじゃダメだなと。でも、最近舞台を初めてやったんですが、お芝居に対しての感覚がまたフレッシュになったし、浄化された感じがします。

    というと?

    舞台で何回も同じ演技をしているのに、もし次にセリフが出てこなかったらどうしようとか、こうしたらどうなるだろう? とずっと緊張しながら演技をしている自分にびっくりしました…、もちろんいい緊張ですが。ヒリヒリしながら芝居をする感覚が最近はなかったなと。それが面白いですね。

    確かに舞台は撮り直しもきかない、一発勝負ですね。

    もちろん映像の撮影現場の芝居でも楽しい瞬間はたくさんあるんですが、舞台は相手から想定していなかったものが投げ返されてきたりとか、そこで焦ってすごい考えたりと、毎回気が抜けない。でも、その場で生まれるものを新鮮に受け取る芝居は、楽しいんですよね。

     

     

    女優の中では、舞台での演技を重要視される方も珍しくないですよね。

    舞台を一度やったら、もうやりたくないという方とその後も続けられる方にわかれるという話を聞きます。わたし自身、やる前は終わったらもうやりたくないとなるんじゃないかなと思っていたんですけど、やってみたらそんなことはまったくありませんでした。

    好きな映画作品を教えてください。

    『花様年華』とか。あとは韓国映画の『オアシス』ですね。好きで何度も観てるけど、脳性麻痺の女性役の演技がいつ観ても凄すぎるんですよ。これは芝居なの? と思います。

    海外のテレビドラマで好きな作品はありますか?

    アメリカの『THIS IS US』シリーズはすごく好きですね。休みの日があれば、テレビドラマや映画を一日中観てることもしょっちゅうです。三食分の食材を買ってきて、家に篭ります。

    元々、映画やドラマがお好きなんですか?

    そんなことはなくて、高校に入学したときに、以前のマネージャーから『パッチギ!』や『川の底からこんにちは』などが入った“観た方がいい映画のリスト”を渡されたんですけど、わたしは全然観たくなくて(笑)。当時は観ててもピンとこないものもあったんですが、自分がちゃんと観れるようになると、なるほど、これは名作ばかりだなと。なんでしょうかね、いつ観るかによって感想が全然違いますね。

    尊敬してる女優さんをお一人教えてください。

    満島ひかりさんですね。『川の底からこんにちは』は、先ほどの観るべきリストを観たときでも、この作品は楽しんで観れたんです。『愛のむき出し』もそうですね。

    好きなファッションと日々の幸せ。

    外に出かけるときはどんなことをすることが多いですか?

    普通のことですよ。例えば友達と遊ぶ、お酒を飲む、映画を観に行く、服や雑貨を見に行く、散歩するとか。サウナも最近行き始めていて、いわゆる3セット入って…ということを人に教わって、ちょうどポツポツと行き始めました。

     

     

     

     

    ファッションはお好きですか?

    好きですけど、すごく好きな方に比べてしまうと全然です。服を見るのは好きだし、着るのも楽しいけど、そこに労力をすごくかけているかと言われたら怪しい。だから、こういう撮影で着れるのはすごく楽しい。

    お好きなファッションスタイルはありますか?

    お店ですが、「CITY SHOP」は好きですね。カジュアルだけど、ちょっとモードが入っているというのかな。

     

     

     

     

     

     

    お芝居をする時に、衣装を着ることは何か影響がありますか?

    衣装さんが用意してくれる服を見て、この役はこういう服を着るひとなのねということが、ものすごいヒントになることもあります。衣装さんと2通りの服を前にして、「このひとはこっちかな? いや、こっちだと思うよ」とか相談して詰めていくのは面白いですね。

     

     

     

     

     

    これまでにご覧になった作品でもいいんですが、服で印象に残っている作品はありますか?

    作品ではないですが、衣装の宮本まさ江さんのことは印象深いです。有名な時代劇などを数多くてがけていらっしゃる方ですが、例えば時代劇の服を染めたりもするし、お芝居のなかで、これはあった方がいいというものを作っちゃう。実際にお仕事をご一緒した時に、すべて衣装を作られていました。

    作品に出る、出ないのジャッジはどうやってされているんですか?

    実は、わたしがここまで選んだ作品は一本もないんです。担当マネージャーがこれをやろうと思うんだけど、どう? と。将来は変わるかもしれないけど、いまのところはわたしのことをわたし以上に考えてくれる、信頼しているマネージャーがいいと勧めてくれる作品に出ます。

    海外と日本、映画やテレビ、舞台やサブスクリプションなど、様々なメディアや場所で演技があるいま、山田さんは今後どうしていきたいという展望はありますか?

    あまり考えたことがなくて、日本にどうしてもいたいというわけでもないんです。でも、充実していると思う瞬間は、家でご飯を作っていたり、親や友達と話したり、実家の犬に会ったりと、そういう身近なことが一番幸せだなと。周りにそういうひとたちがいる環境がわたしにとっては一番大きい。そのためにはお仕事も向上心を持って頑張りたいけど、芝居はずっと好きでいたいですね。いい仕事をしたいとは思うけど、考えていくとどんどん大きい話になっちゃって怖くなるから、目の前のいい仕事を毎回毎回頑張りたい。自分に任せてもらったという責任も感じます。頑張りつつ、楽しみを見出しながら、自分の場所でやっていけたらいいなと。

    ご家族や友達、愛犬に会うなど、日常のなかに幸せをすごく大切にされているんですね。

    仕事だけしていても、そこがなくなっちゃったら、何になるんだろうと思いますね。わたしは、自分の人生の幸せのために、仕事をしているという考えです。もちろん仕事をすることにも、幸せを感じます。

     

     

     

     

    いますよね、実生活は破天荒な俳優さん。でも、役の気分をそのまま持ち帰ってしまうことはないですか?

    もちろん役として、個人的に気持ちいい役ばかりじゃないときもあります。そんなときには、家族や友達に会うのもそうですが、野菜を切って餃子とか作ります。フードプロセッサーも使わずに、自分の手と包丁でザクザクと。そうやって無心になります(笑)。

    山田杏奈の定番品

  • Diorのリップ

    グロスで「アディクト リップ グロウ」というもの。グロスだけど、保湿として使ってます。唇をふっくら見せる成分として、唐辛子が入っています。たまに赤くなってピリピリするんですが、それも好き(笑)。白の下地に、ピンクを塗ることが多いですね。

  • Officine Universelle Bulyのボディオイル

    オイルは共演した満島ひかりさんにいただきました。ウッディじゃない、さっぱりとした爽やかな香りがします。つけているといい香りだねと言われることもあるし、割とみんな好きな香りの系統かなと。わたしは風呂上がりにつけることが多いです。

  • Santa Maria Novellaの香水

    「オーデコロン トバッコ・トスカーノ」というタバコとバニラの香りがメインなんですが、タバコというわりにはあまりスモーキーではありません。個人的には、冬にこそ使いたくなるような、この甘い香りが好き。重めの香りなので男性がつけてもいいんじゃないかと。