Talk to standard.
vol.7
HIMI
気になるあの人はどんなことを大切にして日々を過ごしているのだろう。“その人の軸=スタンダード”にぜひ迫ってみたい。仕事や生き方、好きなものや定番品から垣間見える、その人だけのマイスタンダード。第7回目のゲストは、ミュージシャン兼俳優の佐藤緋美ことHIMI。父に浅野忠信、母にCHARAというその出自に注目を集めがちだけど、そこに引っ張られてはもったいない。どこにでもいるような一人の若者として、自由を愛す一方で冷静に自分の立ち位置やポテンシャルを見極めようとするその姿勢には、どんな人間も共感を覚えるはず。とはいえ写真とインタビューから垣間見えるのは、誠実な人柄ととても豊かな感性。まあ言ってしまえば、こちらが嬉しくなるくらい、素敵に成長しているなーってこと!
Photo_Seiya Fujii【W inc.】
Styling_Masataka Hattori
Hair&Make-up_Go Takakusagi
Text_Shinri Kobayashi
Edit_Ryotaro MiyazakiHIMI
ミュージシャン、俳優
"HIMI"(ヒミ)というシンガーソングライターで活動。俳優としては、佐藤緋美名義で活動。1999年生まれ、すべての作詞・作曲を自身で行う。2021年リリース『Sun is going down』がSpotifyで話題に。2021年4月に2nd EP『Hold on to your life 』をリリース。役者としては、数々の監督の作品で研鑽を重ね、映画『ムーンライトシャドウ』で2022年第31回日本映画批評家大賞新人男優賞を獲得。2022年冬の公開予定に『ケイコ目を澄ませて』(三宅唱監督)がある。
Instagram:@himimojoファンとして、
両親の作品に接していたまずはプライベートなところから。HIMIくんは、腹筋も割れまくってる、めちゃくちゃいい体してますよね。
そもそも運動が好きなんですけど、総合格闘技を3ヶ月前ぐらいから始めて、ちょくちょく朝練に行ってます。
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HIMIくんからは好戦的な要素は一ミリも感じないです(笑)。
実はめっちゃ好きなんですよ。観るのも好きだし、去年はキックボクシングをやってたんですが、打撃も投げも寝技も全部やりたいなとなって総合を始めました。めちゃくちゃいい運動になるんですよね。
スケートもやりますよね。
スケートは友達がやるから一緒に行ったりするくらいで、やること自体は好きだけど、あんまり得意じゃないから、すぐ怪我しちゃったり。腕前はオーリーができるくらい。でも、スケートカルチャーは好き。
日常はどんなことをして過ごすことが多いですか?
お酒は弱いんでまったく飲まないですし、都心へ遊びに行くとか数えるくらいしかない。レーベルのトップをやってる親友の家に行ったりとかが多いかな。あとは最近は引っ越したこともあって、掃除して掃除して掃除してます(笑)。あとは、話したりご飯食べたり。総合格闘技で体を動かしてるときはすごい健康だと思います、身も心も。体を動かしてるとき以外は、いろいろな事を考えちゃいますね。
音楽は、趣味から仕事にしていく人が多いと思います。HIMIくんの場合は、趣味と仕事としての音楽の境目はいつからですか?
自分の姿勢という意味では変わらないけど、作品として配信とか世に出し始めてからでしょうね。
お母さんがCHARAさんということで、歌を歌うこととか表現することは小さい頃から当たり前でしたか?
そうですね。表現することが好きな家族の中で生まれたので。
例えばウチでは当たり前だったけど、その他の家庭から見ると、これってちょっと珍しいことだったのかな? みたいなことはありますか?
それは周りに聞かないと、ぼくにはちょっとわからないですね。でもあるにはあると思いますよ。例えば、家に楽器がたくさんあったり、大声で歌ったりすることをうるさい、とか言わない家庭だったので、そういうのはでかいかなと。あとはもう普通のラブリーなお母さんでしたけど。
お姉さんのSUMIREさんは、モデルなどをされています。以前インタビューで、「わたしは何かにすごい詳しいというわけじゃない」ということをご本人がおっしゃっていたようです。
でも、お姉ちゃんはファッションや音楽は好きだし、元々一緒に楽器を学んだりとかしてました。お姉ちゃんは本当に優しくて、いつも俺に譲ってくれるんです。俺がワーッてはまったりすると、「わたしはちょっと……」みたいなことはあったのかもしれない。そういう部分も俺は受け継ぎつつも、譲らない性格です。
俳優の父とミュージシャンの母という、どちらも表現者じゃないですか。お二人の姿勢みたいなものは見ていましたか?
見てましたね。でも、自分はファンとしてお母さんの作品を聴いていたし、お父さんの映画もファンとして観てました。単純に映画が好きだから観てたというか。でも作品を通して、親はこういうタイプでやってるんだなっていうのはすごく感じました。俺も役者をやる時には、自分がこういうタイプなんだなって気づいたし、その中で自分をどう出すのかとか考えるようになりました。
HIMIくんの年齢で、なかなか親や自身をそれだけ客観視できるのは珍しいですよね。
観察することが早いうちから好きになっちゃったというのと、見ないとやれないっていうか、例えば芝居だったら引き出しを増やすにも見ざるを得ないし。やっぱり前に進みたいという気持ちはあるんです。
自身から発信するミュージシャンと、オファーを受けて出演する俳優で違いはありますか?
音楽はもっと気軽に好きなのを作りたいっていう一心ですね。演じるのは、台本があって、自分で台本を考えながら読んで演じるというのが違う。とはいえ、違うには違うけど、感覚的に自分を開くっていう意味では共通しています。
楽しくないのに速いのは嫌
俳優よりも、音楽の方がもっと自由にやれるという感覚ですか?
どちらかというとそうですね。自分のパーソナルな部分、人生というものが原動力になるので、楽しいし、自由に思い通りにできるのがいいなって。そのためにも、ちゃんと形として積み重ねていきたいなと思います。
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個人レーベルを立ち上げたりと、HIMIくんの中で自由であるということは、価値が高いのかな?と思うんですがどうですか?
確かにそれはあると思います。例えば自分たちでレーベルをやっている分、自由でないと意味がないというか、なるべく縛られないように自由にやりたいですね。
自分でやれる分、好きにはできますよね。
かといって、人に対してパパーっとやるのは絶対に嫌だし、そういう風にして慣れていってしまうのも絶対に嫌なので、あくまでもゆっくりと、自分のやりたいことをやれればいいなと。
パパーっというのは、雑という意味ですか?
いや、雑なのはいいんですけど、適当になっちゃうのが嫌。楽しいのはいいんですけど、楽しくないのに速いのは嫌なんです。で、海外に行きたいなって。
いきなり話が変わりました(笑)。どこか行きたいところがあるんですか?
海外のどこか特定ではないけど、周りにハワイとかオススメされるし、アメリカも行きたい。Spotifyで海外でも聴いてもらっているから、早めに行きたい。やっぱり海外は自由な部分が大きいので。
最近はどこか行きましたか?
ロンドンですね。いろんな人種が混ざっていて、音楽シーンも良くて、本当に毎週どこでも遊ぶところがあるんですよね。イベントに毎日行っていると、同じやつがいたりして、仲良くなったりとか。あとは街がでかいなって思ったし、若者が本当に多いなと。ロンドンと比べると、日本は遊びにおいて、つまらないと感じるところも正直ありますね。食べ物に関しては、日本は適当にどこかで食べても旨いけど、ロンドンは旨いと決まっているところじゃないと旨くない。とにかくロンドンは、面白いやつがいっぱいいましたね。
海外はHIMIくんに合ってそうですね。
海外にたくさん行ってない場所があるから、とりあえず行きたいし、日本も地方で行ったことのない素敵な場所もたくさんあるから、そういうところでライブしたいですね。
今後の作品でいえば、今年EPを出すとか?
レコードと配信のみで、CDでは出しません。山梨でレコーディングしたもので、6曲を予定しています。歌とか関係なくて、もう気持ちよければいいと思っていた時期だったので、インスト多めで。この後何十年後も聴けるような、そのままの自分を出したいなって思って、レコーディングする場所もこだわって、東京ではなく、山梨でレコーディングしたら、温かい感じの雰囲気で録れました。ごく限られたメンバーでアットホームないい感じがよかったです。
音楽のルーツの話をすると、元々マイケル・ジャクソンがすごい好きだったんですよね?
最初に一番好きになったのは、マイケルですね。そこから派生して、幅広く聴いていまに至るっていう感じです。
自分の中でのヒーロー&ヒロインみたいな人はいますか?
たくさんいて、一人とかではないんですよ。素晴らしい人はたくさんいるから。
例えば最近は何を聴いていますか?
レゲエのCarlton and The Shoesは、Fishmansも好きだったそうで、最近聴いてます。あとは、Reuben Jamesとか。でも、本当に年によっては、自分の好きなものは変わりますね。あとは、レゲエやジャズは好きでめっちゃ聴きます。
青春時代に聴いた音楽は、一生影響を残すっていう話もありますよね。
という意味では、The Smashing Pumpkinsですね。アルバム『Siamese Dream』をめっちゃ聴いてましたね。
邦楽も聴きますか?
はい、井上陽水さん、玉置浩二さん、永積タカシさん(ハナレグミ)とかはめっちゃ好きですね。声が独特な方々が好きなんですよね。
作品自体ではなく、例えば表現者としての考え方や作る姿勢がいいなと思う人はいますか?
ちょっと思いつかないけど、『Sprout』という映像は知ってますか? サーフシーンとかが登場するんですが、映像も綺麗だし、音楽もいいんですよね。あとは、HBOの「Goodnight Moon」っていう子ども用の映像を小さい頃から好きで観てました。映像も音楽もすごく良くて、こういういのに影響を受けてますね。『おかあさんといっしょ』とかも観てましたけど、俺が好きだったのはこっちでしたね。
好きなものよりも、
嫌なものをはっきりしたい俳優のお話についてですが、何か公開予定のものはありますか?
まだ情報解禁はされていないけど、自分でも楽しみな映画が年内に2本公開を控えています。映画は、撮ってから世の中に出すまでが結構長いので、けっこう忘れた頃に来たりしますね(笑)。だから、いっぱい出演して、やっていくしかないんだなと。
以前、ミュージシャンと俳優の比率はどっちが大切かと質問したら、ミュージシャンの方だと。
いまでもそこは変わらず。役者の仕事を受けると何ヶ月とか、映画だったら何週間も時間を取られるのは確実で、その期間は絶対に作品のことを考えて過ごすことになる。周りの俳優やスタッフとずっと一緒にいるから、ずっとそのこと考えないといけない。だからこそ、俳優をやるなら本当に自分でやりたい作品に出たいですね。友達がハリウッドのドラマに出ているんですが、日本とはいろんなことが桁違いって聞きました。あと、海外撮影でそこに半年住むことになったら、その費用も全部出してくれると。それって素直にやる気が出るじゃないですか。やっぱり海外は、楽しさもでかいからいいなって。
ミュージシャンとしての活動でいえば、この夏もフェスが各地で開催されますが、出演予定のフェスはありますか?
「秋田CARAVAN MUSIC FES 2022」ですね。シンガーソングライター高橋優さん主催の野外音楽フェスで、9月17、18日開催のうち、18日の方に出ます。
フェスは好きですか?
はい。フジロックは早く出たいですね。
それこそCHARAさんにアドバイスを求めたりはしないんですか?
いや、逆にアドバイスを求めてきますね(笑)。最近は、どうなの? どうやってやっているの?って。
お父さんにはアドバイスはもらうんですか?先ほどの海外撮影でいえば、ハリウッドにはお詳しいですよね。
そうですね。向こうはオーディション選考なので、いつか役を勝ち取れたらなと。そのためにも、ちゃんと準備したいし、もしくはすでにハマってるような役で行きたい。さっき言った友達が受かった理由もその役にハマってて、キャラも日本人の人をすごい探してたそうです。ただ、アメリカで育った日本人だと、アメリカ人すぎて、向こうとしては微妙だから、日本で育った日本ぽい人で、なおかつ英語が話せる人を探しているみたいです。俺は英語、話せるので。
俳優として出たい・出たくないというのは何でジャッジするんですか?
マイナス面でいえば、撮影は時間を取られるし、いろんな人と会って疲れるし、え?っと思うような人ととも数ヶ月一緒にいなきゃいけないし、現場でバランスを取らなきゃいけないとかいろいろと大変なんですよね(笑)。そういう場所で、自分は何を得られるか考えて、出る意味があるのかないのかってことを考えます。どちらかと言えば、好きなものよりも、嫌なものをはっきりしたいんです。この作品は出演するのが嫌なんですってことを、自分で言えるようにしたい。
出たい理由よりも出たくない理由の方が大切だと?
じゃないと全部出たいということになっちゃうから。
話を伺ったところ、いろいろと考えを巡らせるタイプですよね。
そうですね。もうそれに慣れちゃいました。前までは、考えすぎて疲れるし、これって病気なのかなと思っていたんですけど、慣れちゃいましたね。ずっと考えるのが普通なんだなって。そこはもう引き受けて、やれることをやろうと思いました。
では、ファッションについてですが、服は好きですか?
はい。ジャンルとかは詳しくないけど、自分がかわいいなと感じたものは好きですね。古着も多いし、あとは旅行に行ったときに買う服多いかな。
レーベルでマーチャンダイズも販売していますよね。
パーカとかニットですね。それは友達がやってくれているんですけど、俺が描いた絵をトレーナーにプリントしたりとか。
絵も描くんですか?
最近は描いてないけど、描きます。お姉ちゃんもお父さんもめっちゃ描きます。俺は色が好きなんです、赤とか。描く行為は頭と直結しているし、描くほどうまくなります。絵はもっとみんなが描くべきなんじゃないかなと思います。
HIMIの定番品
Ralph Laurenのバッグ
ちょっとおじさんっぽいこの感じが好きなんです。高円寺の古着屋で買ったバッグで、パックワークや生地感がいいなと。全部荷物を入れて一個でどこでも出かけられるのが欲しいと思って買いました。撮影でホテルに泊まるときは、台本やノート、宿泊セット、充電器、イヤホン、アイコス。あとは、ヘッドマッサージとか、全部入れてます。
Carne Bollentの財布
友達がこのブランドのメンバーの一人なんですが、飲み屋で知り合ったんです。いつもたくさん製品をくれるんですが、いつももらってるばかりじゃ申し訳ないし、単純に好きだからということで買った財布です。入っているのは、ギターのピックとカードと小銭くらいですね。イラストがかわいいので癒されます。
NICHOLAS DALEYのサングラス
先日ロンドンへ行った際に、このブランドの展示会をやっていて、めっちゃかわいいなと。デザイナー本人に「どこかで会ったことあるよね?」って話しかけられて、おれがヒッピーな感じだったら、誰かと勘違いしているのかなと思って、会ったことあるかもねって。でも、多分向こうの勘違い(笑)。他にもロンドンの黒人がつけていそうな、超かわいいサングラスがいっぱいあっておすすめです。