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  3. スタンダードな話をしよう。 vol.14 恒松祐里
  • Talk to standard.

    vol.14

    恒松祐里

    気になるあの人はどんなことを大切にして日々を過ごしているのだろう。“その人の軸=スタンダード”にぜひ迫ってみたい。仕事や生き方、好きなものや定番品から垣間見える、その人だけのマイスタンダード。第14回目のゲストは、女優・恒松祐里 。Netflix『全裸監督シーズン2』のニューヒロインとして大胆な役を演じ、一方朝の連続ドラマ小説『おかえりモネ』では主要キャストの一人として確かな演技力を発揮するなど、若くして芸能の世界に足を踏み入れた彼女は、俳優という仕事とどう向き合ってきたのか。サービス精神で自ら率先してポージングを決めてくれた数々の写真とお届け。生粋の作り手である彼女の芯に迫ります。

    Photo_Mala Morgan
    Styling_Kotomi Shibahara
    Hair&Make-up_Raishiro Yokoyama
    Text_Shinri Kobayashi
    Edit_Ryotaro Miyazaki

    恒松祐里

    女優

    1998年生まれ。東京都出身。2005年、ドラマでデビュー。近年の出演作として、『おかえりモネ』、『全裸監督 シーズン2』などのドラマ、『凪待ち』、『きさらぎ駅』(初主演)などの映画がある。趣味は羊毛フェルトやビーズアクセサリーなど、もの作り。2022年12月22日より、Netflixオリジナルストーリー『今際の国のアリス』シーズン2が配信スタート。
    Instagram:@yuri_tune

    オーディションを勝ち抜くために大切なこと。

    7歳からキャリアを始められたとのことですが、いつぐらいにこの世界でやっていく覚悟ができましたか?

    子どものときは遊びの延長線上くらいに思っていて、お芝居が何なのかわからないけど、お芝居もダンスも楽しいからやっていました。事務所では、中学校3年生で発表会があるんですが、そこで表現することに向いているのか、真剣に向き合っているのかということをもう一度考えるタイミングがあるんです。そこでやっぱりお芝居が好きだと再認識しました。

    とはいえ、求められて初めて成立するお仕事でもありますよね。

    そのタイミングで、映画『くちびるに歌を』のオーディションに合格して、それまでで一番大きな役をいただきました。それ以前はちょっとした役が多くて撮影に少し参加して終わりだったんですが、その作品では一ヶ月半ぐらいずっと同じ役に向き合うことで、お仕事として撮影というものを真摯に捉えるきっかけになりました。その辺りでこの仕事をちゃんとやろう、やりたいと思うようになった気がします。

    自分のなかの気持ちと仕事のタイミングがバッチリハマったんですね。

    わたしにとって転機となった大切な作品ですね。その作品がきっかけでオファーをいただくことも多くなったり。作品やその世界を撮る作業が楽しいという気持ちが芽生えた作品でもあります。

    芸能界に入ったきっかけは、人見知りが激しかったのを心配したご両親が心配して、こういう世界に入ったら、楽しめるじゃないかなと考えたそうですね。

    そうらしいです(笑)。入る前のことは、わたし自身あまり覚えていなくて。

    どこかのタイミングで、演技に対する理解を深めるための演技指導などは受けるんですか?

    最近は行けてないんですけど、20歳ぐらいのときに先生を訪ねて個人レッスンで指導していただいて、基本的なことを教えてもらいました。子どもの頃はやっぱり形だけでなんとなくやっていて、本質があまりよくわかってなかったなと。10代になり、いろいろな映画監督にお会いしたり、20代でお芝居のワークショップを受けるなか、下から1個ずつ積み上げていかないと、役になんてなれないんだなと痛感しましたね。当時は、瞬発力がすごく、勢いでやれてしまう部分もあるんですが、それはそれで大切だけど、それよりも役作りをする上で深みを出すための前段階の話があるよねと大人になってからいろいろな人に教えてもらいました。

    • 今回フォトグラファーを務めたモーガン茉愛羅さんとのオフショット。

    これまでに相当な数のオーディションを受けてきたそうですね。

    そうですね。子どもの頃はたくさん受けて、たくさん落ちて。でも母も縁がなかったんだよと励ましてくれて、実際そう思っていました。でも、その頃の自分に言いたいんですけど、その役を絶対に掴んでやるぞという気持ちと、オーディションまでにしっかりと努力すれば受かる確率がグンと上がるよと。Netflixの『今際の国のアリス』やNHKの朝の連ドラ『おかえりモネ』は実際にオーディションで役が決まったんですが、そういう気持ちでした。『くちびるに歌を』のオーディションも絶対取るんだと心の底から思っていて、合否の結果連絡が遅かったんですけど、お芝居の先生に「絶対あの役はわたしだと思うのに、なんで連絡がないんでしょうか」と言ってましたね(笑)。

    別のインタビューで、22歳頃までに大きな変化がなければ辞めていたかもしれないとお話されてました。

    22歳は新社会人の年齢じゃないですか。だからということもあってその年齢だったんですが、『全裸監督シーズン2』や『おかえりモネ』がまさにそのタイミングで、ああ、まだがんばれ、ということなんだなと思いました。

    直感通りの運命的な役だったということですね。ご自身にとっても大きなターニングポイントになったという感覚ですか?

    そうですね。どちらも長い期間をかけて撮影しましたし、スタッフの方もプロフェッショナルな方ばかりで面白かったですね。『全裸監督シーズン2』はセットのおかげもあって、昭和の世界にタイムスリップして撮影している感覚でした。朝ドラの『おかえりモネ』は、時間をかけて撮影している分どんどんみんなの絆が深まっていくなかで最終章に向かっていく、あの感じが好きでした。あとは朝ドラは15分という枠のなかで見せなきゃいけないから、テキパキとメリハリの効いた表現を教えていただけたのかなと。

    これまでにお仕事をされた監督とのやりとりで、自分のなかに刻まれているやり取りはありますか?

    映画『虹色デイズ』の飯塚健監督には、お芝居を作る上で、外堀だけじゃなくて中からやりなさいと初めて教えてもらいました。たとえば、100個の質問が書いてある紙をもらって、役として全部答えてきてとか。その時はちょうどわたしが子どもと大人の狭間みたいなところにいたんだと思いますね。

    現場、台本読み、役作りの準備など、俳優のお仕事にもさまざまなパートがありますが、どれが一番お好きですか?

    どれも好きですが、ドラマも映画もクライマックスのシーンは、撮影日程の最後の方に撮ることが多いんです。そのあたりには、スタッフさん、俳優も含めてみんなの絆が深まっているから、いままでの信頼関係の集大成のようなシーンができることがあります。そういうときは楽しいですし、後から見返すとみんなの顔が思い浮かぶんですよね。

    もの作りが一番幸せな時間かも。

    ファッションについてお伺いします。ご自身のInstagramでも服を披露されていますが、好きな定番品やスタイルはありますか?

    ドクターマーチンは好きで、一年通して履いてます。スタイルは、その時々で結構変わりますね。あとは、定番品の紹介(ページ下部)として挙げた、母の趣味で作ってくれた手編みのニット。それは真冬のわたしの定番の服だし、ほかにも靴下や帽子、手袋とか母の作ったものを身につけていることが多いです。

    恒松さんも何か作るんですか?

    最近は、ネックレスとかビーズアクセサリー作りにはまっています。いまは、数字やアルファベットのリングを作っていて、はめると指から文字を放つことができて面白いんじゃないかなと(笑)。「HAPPY」とか今日の気持ちを指から放てたらかわいいなとか。母のニットは作るのに日数がかかりますけど、わたしの場合は休みの一日とかでガッと作りたいタイプです。

    物作りは、お母さんからの影響が強いんですね。

    母もそうですが、父も物作りがすごく好きなタイプです。パソコンのプログラミングを教えていたことがある父からは、デジタル系のものづくりを学びました。結果、わたしは動画の加工や編集も好きでやるんです。

    物作りがお好きな一家なんですね。

    最近、Netflixの瞑想番組を観ていたら、いま自分が一番幸せに感じる瞬間を頭に浮かべてみましょう、というコーナーがあって、わたしが思い浮かべたのがパレットにいろいろな色を並べて、絵を塗っているところだったんです。わたしは、カラフルな色と物を作ることが好きなんだなとその時に思いました。物作りに没頭するのは瞑想効果もあるので、頭の中を無にしてものを作る時は、すごくリフレッシュ効果があります

    あとは、身につけている物を拝見すると、ピンクがキーカラーなのかなと。

    そうなっちゃいましたね(笑)。わたし含めて仲のいい友達3人組がいるんですが、『パワーパフガールズ』のように一人は水色、もう一人は緑、わたしはピンクというテーマカラーがあって、みんなで集まるときはその色で集まろうと。ピンクの物を集めていたら、もともとそうでしたが、どんどんピンクが大好きに。

    カラフルな服を着ることで、精神的な影響はありますか?

    あります。以前、全身真っ黒の服だったときに、なんで今日黒しか着てないんだろうと、気分がどよーんとしちゃったことがありました(笑)。わたしの場合は、色物があった方がその1日ハッピーに過ごせるような気がします。

    お仕事で、衣装がその役に入るための入り口になることもありますか?

    やっぱりメイクや髪型をセットしていただくと、すんなりその役に入れることがあるんです。たとえば、公開される『今際の国のアリス2』では、服もメイクも野性的なんですが、鏡で見ると普段の自分の目よりも強くなっています。だから、メイクや衣装にはいつも助けられていますね。

    ジャーナル スタンダードのイメージはどんなものですか?

    すごくシンプルで上質な服が揃っている一方で、わたしとかが小物として取り入れたりもできるかわいいグッズも置いてあるイメージです。デザインがちょっと変わったものもあるけど、みんなが着られるし、生地がいいものがありますよね。

    女優として。一方で女優の他にも。

    作ることもお好きだから、映像に関してもスタッフ側として作ることにも興味はお持ちですか?

    俳優をやっていなかったら、本職として働いていたと思います。でも、事務所の先輩に仲里依紗さんがいらっしゃいますが、いまは俳優は俳優だけという時代でもないから、いずれは何か自分の好きな、作ることがどんどん広がっていって、他の人も幸せにできたらいいのかなと思います。

    これからお仕事をしてみたい監督はいますか?

    お会いしたことないですけど、河瀬直美さんはそのお一人です。河瀬さんに限らず、自然なお芝居を求められる監督の作品に出たら、ケチョンケチョンにされそうで(笑)、だからこそ行ってみたいなと。年齢が上がっていくと、段々ボコボコにはされなくなってきちゃうじゃないですか? なので精神がもつ20代のうちに(笑)。

    ご一緒してみたい女優さんは?

    満島ひかりさんです。お会いしてどうやってお芝居を作っていらっしゃるのか見たいです。

    俳優で常にいろいろなものを観察される方もいますが、恒松さんはそのタイプですか?

    いいえ、意識しているときくらいですね。そんなガッツリするタイプじゃないのかなと。

    ご自宅では、どんなことをして過ごすことが多いですか?

    仕事以外だと、ビーズアクセサリー作りですね。あとは、絵を描いたり、趣味の海外ドラマを観たり。ずっと海外ドラマのコラムを書かせていただいているんです。あとは、ゲームも好きで、中でも任天堂のゲームが大好きですね。

    オフの日もお忙しそうですね(笑)。

    何かを作っていることが一番幸せかもしれません。ご飯を食べながら、これを作るために何時までにこれをやって…と考えて、食べ終わったらすぐに自分の部屋に戻って作ったり。割とスケジュールを詰めていくのが好きで、今日1日で終わらせるというのが、毎回のもの作りのテーマになっています。

    海外ドラマはどんな作品がお好きですか?

    今は『クラウン』というイギリス王室のドラマの続きが楽しみです。他はかなり観ちゃったんですが、好きなのは、『ニュースルーム』『キリング・イブ』『シャーロック』とか。わたしは海外ドラマで育ってきたので、わたしの価値観は海外ドラマでできているかもしれないです(笑)。

    映画はどんな作品がお好きですか?

    ミュージカル系がすごい好きです。『ヘアスプレー』が特に好きですが、『ゴッド・エルプ・ザ・ガール』とかも。

    英語は話せますか?

    英語は標準レベルです。英会話教室に通っていたので、一応会話はできます。でも話すよりも聞くほうが得意です。

    俳優として、今後、どうキャリアを積んでいきたいですか?

    役に関しては、本当に巡り合わせなので、そこはいただいた役を頑張りたいと思います。あとは最近は女優という枠を超えて、その人自身を表現する場がたくさん増えてきているので、わたしの好きなクリエイティブな面を表現できたらいいのかなと。と言いつつ、役者としては海外ドラマへの憧れがあるのでいつか形にできたらいいのかなと。それはもう自分の努力次第ですね(笑)。

    恒松祐里の定番品

  • Kankenのバッグ

    最初はただのまっさらなピンクだったんですが、自分で刺繍やワッペン、ピンバッチとかを付けていたら止まらなくなりました(笑)。いまもアップデート中(笑)。「えがお」というワッペンがあるんですが、雑貨屋さんに売っていたひらがなのワッペンのうち、好きな色が「え」と「が」「お」だったので、どんな単語ならいけるのかなと考えたら、あ、「えがお」だ! と。

  • 母の手編みニット

    海外ドラマでキャラクターが着ていたニットがいいなと思って、調べてみたらすごく高かったんです。そうしたら、母が同じものを作ってくれるということでできたのがこれ。フェアアイルという、洗うと生地が詰まってくる素材で、縮みきったあとにハサミでカットして、前開きにしました。わたしの好きなハート柄も入っていて、めちゃくちゃ気に入ってます。

  • ロモグラフィーのカメラ

    特殊な構造で、シャッターボタンの代わりにレバーをくるくると巻いていくと、一秒ごとにコマ撮りのパラパラ動画のようにフィルムで撮れます。わたし自身、静止画よりも動画の方が魅力的に映るのかなと思っていて、何か使えるんじゃないのかなと。自分の身の回りや会った人とか、日常を撮っている感覚です。あとは旅行とか。なぜか東京の写真はあまり撮りませんね。