僕と仕事と服と

THEIR DAILY LIFE, DAILY CLOTHES

僕と仕事と服と

仕事や暮らしのあり方がどんどん多様化していく今の時代。ならば日常に欠かすことができない「服」にも、1人1人がもっと “自分らしさ”を求めたっていいはずだ。

そこで本連載では、ファッション業界をはじめ様々なシーンで活躍するクリエイターやアーティストたちのライフスタイルや仕事との向き合い方に焦点を当てながら、彼らの「デイリーウェア」としてジャーナル スタンダード レリュームの最新アイテムを紹介する。

5者5様のこだわりのスタンスから、日常と服、仕事と服との理想の関係が見えてくる。

chapter.nine ASUMA NAKAI BMX racer  

JOURNAL STANDARD relume 2022 Autumn/Winter Special Issue

「スウェットはスタイルではなくカルチャー」

近年飛躍的に人気を高めているアクションスポーツカテゴリーの中でも、とりわけスケートボードと並んで注目を集めているのが自転車競技の「BMX」。中でも8人の選手が一斉にスタートし、スピードに乗りながら難度の高いジャンプやコーナーセクションをクリアしていく「BMXレーシング」は、「パーク」や「フラットランド」など他のフリースタイル種目を凌駕するほどスリリングだ。中井飛馬選手は、そのBMXレーシングの国内トップレーサーの1人。若くしてBMXとともに世界中を転戦しながら自身を磨く彼に、〈チャンピオン〉別注のリバースウィーブスウェットの数々を着こなしてもらった。

「ビンテージハーレー好きの父が昔から新潟でセレクトショップとブランドをやっていることもあって、物心ついた頃からアメカジ系の服に囲まれて育ってきたのでこういった味のあるスウェットはやっぱり馴染み深いですね。実は5歳の頃にBMXと出会ったのも父の店がきっかけ。たまたま店に遊びに来ていた知り合いのお客さんがBMXをやっている人で、『今度近くでやるからおいでよ』と誘ってくれて。行ってみたら、速攻でハマりました」

そう語るようにBMXと服の両方に共通した原体験を持つ中井選手。ゆえに日々の服選びはすべてBMXレーサーとしての活動と根っこのところで繋がっているという。

「好きな服はシルエットにゆとりがあって動きやすく、かつデザインがシンプルなもの。そしてBMXに乗るので丈夫さも大事。だから厚手のスウェットはとても重宝します。スタイルで言うと、アメカジは好きですがそこに強くこだわっているわけではなく、海外を転戦している中でヨーロッパの人たちのファッションにもすごく惹かれますし、気になったものはジャンル関係なく取り入れるほうですね」

クルーネック、プルオーバーフーディ、ジップアップフーディの3種とそれぞれにセットアップ対応しているパンツ。古くからあるリバースウィーブをオーバーダイで褪せたようなペールカラーに仕上げたそれらのアイテムを、まるで昔から着続けて味が出ているような風情で、ごく自然体で着こなす姿が印象的。

「元々はっきりとした色よりもこういったくすんだような色合いがすごく好きなんです。とくに紫のクルーネックはむちゃくちゃ自分好みでカッコイイなと。いざ着てみると裏地も肌触りが良くて、薄手だけれど暖かいところもいいですね。何より、どのアイテムも汚れたり傷んじゃったりしてもそれが味になるような感じなのでガシガシ着たくなります。それこそBMXを整備するときにオイルがついたり、練習中に転んで土がついちゃったりしても様になるというか。やっぱり職業柄こういうスウェットは重宝しますね」

リバースウィーブのようなオーセンティックなスウェットアイテムは言わずもがな、BMXやスケートボードなどストリートに根ざしたスポーツとの親和性が高い。近年多くの時間をアメリカで過ごしている中井選手はそれをスタイルではなく「カルチャー」と表現する。

「僕らのようなBMXのレーサーやスケーターにとって、例えばチノパンやワークパンツにスウェットのフーディを合わせる感じはもはやファッションではなくもはや一種のカルチャー。昔から自分の身体に染み込んでいる服なので、とにかく着ていて落ち着くし楽です。とくにここ2年くらいはフロリダに3ヶ月、カリフォルニアに1か月、ネバダに1か月……というような生活を続けている中で自分自身が無意識にアメリカナイズされているところがあり、なおさらそういうスタンスでスウェットを着るようになりましたね」

さて、そんな中井選手だが、2023年3月には日本体育大学を卒業し、南フランスに拠点を移してプロBMXレーサーとして新たな展開を考えているという。そのあたりのビジョンについても最後に語ってもらった。

「BMX を始めて、2023年で18年目。これまで多くのことを吸収し、今は自分のBMXレーサーとしてのキャリアが最高潮にどんどん近づいてきているなという実感がすごくあります。だからこそ現実味を帯びてきている2024年のパリ五輪、2028年のロサンゼルス五輪をしっかり視野に入れながら、周りからの期待感もひしひしと感じつつもっと自分を磨かないといけないなと。僕は過ごしやすい環境から思い切って一歩外に出てみることこそが人生に大切な『旅』だと思っています。だからアメリカではなく、フランスへ行ってみようと。同じBMXが盛んな国でもこれまでとは違った出会いや発見があると思いますし、そこからまた新しいインスピレーションを得て成長していきたいですね」

ASUMA NAKAI

2000年、新潟県上越市生まれ。5歳の頃にBMXレースと出会い、11歳の夏に世界選手権で初めて決勝進出を果たしてワールドゼッケンを獲得。その後12歳で本場アメリカの強豪チームにスカウトされ、海外への転戦をスタート。2019年にはエリートクラス1年目ながら全日本選手権で優勝。2021年には日本人として初めてUCIワールドカップシリーズのU23シリーズチャンピオンに輝く。

Photo:Akira Yamada
Hair&Make-up:Yoshikazu Miyamoto(bNm)
Edit&Text:Kai Tokuhara