EDIFICE

30th Anniversary

For Good Times

ÉDIFICE Music Playlist

Vol.3 Keita Ishiguro (Art Director/Graphic Designer)

Keita Ishiguro

グラフィックデザインチーム「ILLDOZER」での活動を経て、現在は個人のグラフィックデザイナーとして、オンラインコンテンツから印刷物、ファッション、音楽など、多岐にわたる分野でデザインを手掛けている。’90年代初頭にヒップホップユニット「キミドリ」の活動を通じてその名を知られ、その後もデザイナーとしての活動を続けながら、「1-Drink」名義で行っていたDJ活動に今年一旦区切りをつけた。今後は音楽制作に注力していく予定だという。現在も、その独創的な活動はクリエイティブシーンでカルト的な支持を受け続けている。

Selection Theme

トワイライト・ゾーン
(Somewhere in the Summertime)

子どもの頃から、夏の日没や夜明け前後の神秘的で少し不気味な時間帯に惹かれてきました。その独特な空気感を表現したくて、このプレイリストを作ってみました。

このプレイリストには、夏という季節の持つ魔力や、猛暑によって歪んでいく時間や空間の感覚、そしてそんな中で非日常的な体験を求める自分のエスケープ願望を詰め込みました。また、現実と幻想が交錯するミステリアスな雰囲気のインディーゲーム『ケンタッキー ルート ゼロ』からもインスピレーションを受けています。

このプレイリストを通じて、「トワイライト・ゾーン」に漂う独特のムードやテンションを、一緒に旅するように感じてもらえたら最高です。

  • Moonship Journey

    Sun Ra & His Arkestra

    地球が沸騰しているんじゃないかと思うほどの暑さの中、それでも夕暮れには、かすかな風が吹き、わずかに涼しさを感じることができる。いつもの散歩コースを進んでいると、不意に宇宙の深淵に吸い込まれるような奇妙な感覚に襲われた。木々の間から覗く夕焼けは、まるで異次元への扉が開いたかのように青白く光っている。景色がゆっくりと変わっていくのを感じながら、どこからか聞こえてくるゆったりと繰り返される瞑想的な歌に引き込まれるように、さらに奥へと足を進めた。

  • A Traveller's Dream Journal, Setting A

    David Behrman

    やがて空は、古いラベンダー色のタオルケットのような淡い紫色に変わり始め、星たちはひとつずつおしゃべりを始めた。足元の草むらから漂うかすかな音が柔らかく体にまとわり付き、温泉の湯のようにゆっくりとした波動を伝えてくる。その音は、時間を脱ぎ捨てたかのような錯覚を生み、まるで宇宙のどこか、重力のない場所に浮かんでいるかのような気分にさせた。

  • So Hard To Admit

    Éric Serra

    夜が深まるにつれて、この独特な空気がますます濃くなっていった。この時間帯には、心地よさと寂しさが絡み合う奇妙な感覚がやってくる。どこかで、「黄昏時は"あの世"と"この世"が繋がる時間だ」という話を聞いたことがある。そのせいで、幽界の者たちが切なさを運んでくるのかもしれない。

  • Barbarossa

    K-Lone

    この場所は、奇妙な均衡の上に存在しているかのようだ。絡み合う木々のつるが、まるでブリープ音のような奇妙な旋律を奏でている。コウモリたちは花々の間を器用に飛び交い、受粉という重要な任務を淡々とこなしている。普通、植物は昼間に光合成をして成長するものだが、このジャングルでは夜にエネルギーが解放され、独特の生態系が広がっているようだ。

  • See Me Ridin'

    Martin Rev

    風の音が森全体に響き渡り、幽玄の世界に引き込まれるようだ。耳元で精霊たちがささやく。その声は不気味でありながら、どこか心地よく、心の奥底を掘り起こされるような感覚に襲われる。まるで見えない手に導かれているかのようだ。さらに奥へ進むべきか、現実と幻の狭間で一歩を踏み出すたびに、足元が揺らぐ。

  • Fiery Yellow

    Stereolab

    思い切ってさらに奥へ進んでみると、目の前には穏やかな水辺が広がっていた。そこには小さな村があり、月明かりが柔らかく村全体を包んでいた。辺りは静けさに包まれ、ぽつぽつと灯る温かな光が心を和ませてくれる。川辺の石に腰を下ろし、水面に映る月の光をぼんやり眺めていると、どこからともなくヴィブラフォンの柔らかな音色が聞こえてきた。その響きは水面に小さな波紋を描きながら広がっていった。私は、この静かな水辺の村で一息つくことにした。

  • Lying In My Bed

    John Mayall

    静寂の中、焚き火の残り火がかすかに揺れる音が耳に届く。私はどうしても眠れなかった。目を閉じても心はざわつき、思考が絶え間なく渦巻いていた。仕方なく起き上がり、星空を見上げると、その壮大さに圧倒されると同時に、自分がひとりであることを強く感じる。その感覚は、さらに私を眠りから遠ざけた。

  • Photonos

    Emerald Web

    ここに引き寄せられた理由を考える。ここにいることには、何かしらの運命的な意味があるのかもしれない。眠れない夜は、心の奥底を見つめ直すために与えられた時間のように感じる。日常の騒々しさから逃れたこの奇妙な静寂の中では、普段は見逃してしまうような感情や考えがふと浮かび上がってくる。

  • It's The Nano Assassin...Again!

    Melos Han-Tan

    どうしても胸の奥にあるざわつきを静めることができない。この場所に引き寄せられたのは運命だと信じていたが、今はただそのざわつきをどうにかしたかった。夜が明けるのを待つこともできず、結局、私は歩き始めた。暗闇の中で静寂が耳をつんざき、足音だけが孤独なビートを刻んでいる。蒸し暑さが肌に突き刺さり、真夏の夜の重たい空気がまとわりつく。私はただ前に進むことで、心の中の混乱を鎮めようとしていた。

  • Deep Purp

    Papa Romeo

    歩き続けているうちに、喉の渇きが限界に達した。もう耐えられない。私は近くの木に手を伸ばし、樹液をすすった。苦い味が口の中に広がり、景色がぼんやりと歪み始めた。これが幻覚なのか、真夜中の蜃気楼なのか、わからない。どこからともなくサックスの音色が聞こえてきた。立ち止まって深呼吸をすると、体全体がリラックスし、胸の奥のざわつきもいつの間にか消えていた。禁煙を誓ったはずなのに、無性にタバコが吸いたくなった。私は最後の一本に火をつけ、煙をゆっくりと吸い込んだ。

  • Nothing Wrong with Love

    Ras Russell

    世の中にはいくつもの逃げ場所がある。人々は心の平穏を求めて、自然の中や静寂の場所を目指す。私もそんな逃避者のひとりだが、どこへ逃げても心の中の問題は消えはしない。煙の甘い香りがゆっくりと夜空に溶けていく。今、この瞬間、私はただこのカリブ海のビートに合わせて、ぎこちないステップを踏んでいる。リズムに身を委ねるしかないのだ。

  • For All Those Who Never Hear It Proper (Outro Chop)

    Death Is Not The End

    ここはいったいどこなんだろう。薄暗い月明かりの下で立ち尽くしている。この場所にたどり着いたのは単なる偶然じゃないらしい。霧の中にぼんやりと浮かぶスピーカーのシルエットが、ここがサウンド・システムの現場であることを伝えてくれる。パーティーはまだ始まったばかりのようだ。スピーカーからはメロウなソウルミュージックが聴こえてくる。曲の合間にはMCがリズミカルにマイクを握り、まばらな客を誘うように声を響かせている。その声と音楽、漂う香りが、私を余計な思考から解き放ち、この瞬間を楽しむことに集中させる。私は、この夜がどこへ導いてくれるのか気になり始めていた。

  • Summer Breeze, Pts. 1 & 2

    The Isley Brothers

    その瞬間、ギターの音色が静かに流れ始めた。メロディーが頭の中で何度もリピートされ、音が重なるごとに心臓の鼓動がますます激しくなる。感情が波のように押し寄せ、もはや制御不能な状態だ。「うおおおぉ」と自分でも驚くような声が漏れた。真夏の熱気と湿った空気が肌にまとわりつき、心は次第に乱れていく。まるで狂気の渦に巻き込まれるような感覚が押し寄せ、混沌とした恍惚感がすべてを支配した。その感覚は、異次元に誘われるような甘美で狂おしい錯覚を生み出していた。

  • Luna

    Finis Africae

    私はただ、このまま時間が止まってくれることを心から望んだ。この奇妙で美しい夜が永遠に保存できたら、なんて素敵なことだろう。エコーが空間にモアレを生み、そのモアレがまたエコーを生む。この無限の連鎖の中で、すべての束縛から解き放たれ、無限の自由に身を任せる。私は深いため息をついた。そして次第に、すべてがどうなっても構わないという諦念が広がり、圧倒的な無力感が静かに覆いかぶさってきた。

  • Love… Thy Will Be Done

    Prince

    涅槃、つまりサンスクリット語で「ニルヴァーナ」。その意味は「吹き消す」ってことらしい。まさにその通り、今の私は空っぽで、ただ存在しているだけで満ち足りている。これが本当の自由ってやつなのかもしれない。ただそこにいるだけで許される、そんな感覚だ。説明しづらいけど、とても解放された気分だ。世界がそっと私を包み込んでくれているような、深く温かい愛を感じる。

  • Conversations

    Gigi Masin

    樹液の幻覚がゆっくりと薄れていく。その後、不意にやってきたのは予想外の離脱症状だった。冷静でいようと努力しても、呼吸が浅くなり、体中から力が抜けていく。思考や感情が次々と頭の中を駆け巡るが、無理にそれを押さえ込むのはやめて、ただの情報として流れるままにした。すると、離脱症状が少しずつ和らぎ、激しく鼓動していた心臓も落ち着きを取り戻し、震えも収まっていった。荒れ狂った海が静かに凪いでいくように、意識も穏やかさを取り戻していく。疲労がピークに達していたが、残るわずかなエネルギーを感じながら、音の風景に耳を傾けた。すると、メトロノームがゆっくりと整っていくのがわかった。

  • Sorcerer's Delight

    Michael Angelo

    ふと、自分を外から眺めているような冷静な感覚が訪れた。意識が体からふわりと浮かび上がり、少し離れた場所から自分の肉体を見下ろしているような感じがした。まるで幽霊にでもなったかのようだ。不思議なことに、今この瞬間に車に轢かれたとしても、痛みも恐怖も感じないんじゃないかという妙な確信が頭をよぎった。この体験は、どこか危うく、それでいて美しいものだった。

  • Arlington Sunset

    Calm

    いったいどれだけ歩いたのか、もうわからなくなっていた。ただ、この旅がとてつもなく長く感じられることだけは確かだ。風景がめまぐるしく変わる中、目の前に広がる光が朝焼けなのか夕焼けなのかすら判断できず、胸が苦しい。いま感じているこの郷愁が、故郷への想いから来ているのか、それともこのおかしな世界への妙な愛着から来ているのか、正直、自分でもさっぱりわからない。ただ、涙が勝手にこぼれてくる。この気持ちは何なのだろう。旅の終わりを告げているのか、それとも新たな何かの始まりを示しているのか。そんな問いが頭の中をぐるぐると巡り、混乱している。

  • Peon

    Captain Beefheart & His Magic Band

    日常の中で、私たちは時間を過去、現在、未来に分けて理解し、空間を距離で測っている。しかし、ふと思うことがある。もし、時間や空間という枠組みを超えた世界が存在するとしたら?
    臨死体験をした人たちは、時間も空間もすべてが溶け合ってひとつになった、まるで万華鏡のような世界を見たと言う。彼らはそれを「死の向こう側」と呼び、深い瞑想に似た不思議な体験だと語る。考えてみれば、宇宙の本質は我々が普段捉えている時間や空間の外に存在しており、現実はただのスクリーンショットにすぎず、存在自体が宇宙の壮大なジョークの一部なのかもしれない。

  • Claire P.

    Richard Pinhas

    この道はまるで出口のない迷路だ。歩けど歩けど、足元はぐらついて、まるで透明な砂の上を歩いているような気分になる。周りには誰の姿も見えない。いや、誰もいないどころか、もはや自分の存在すら怪しいと思えるほどだ。影すら映らない私は、次第に自分がここにいるのかさえ疑い始めた。それでも足を止めることはできない。とても孤独だ。

    成長とは、おそらくこんな無意味さを抱えながらも前進し続け、いつか何かを見つけることなのだろう。しかし、今の私にはそれがただの無駄な足掻きにしか思えない。この無限ループの中、同じ無意味な場所をただぐるぐると回っているだけだという気がしてならない。いつかこの体験をnoteにでも書き残そうと思っていたが、その気力さえもなくなってしまった。
    もしリセットボタンがあったなら、どれだけ楽になるだろう。それでも、この異次元のような場所には何か得体の知れない魅力がある。狂気と幻想に満ちたこの空間の先に何があるのか、知りたい気持ちがどうしても消えない。私はここにもう少しとどまることにした。

  • Friday Morning - Live at Stubb's

    Khruangbin

    夏の昼下がり、外はまるで巨大なフライパンの上でじりじりと焼かれているかのようだった。私はエアコンの効いた部屋に逃げ込み、ソファに沈んでスマホを手に取った。窓の外では太陽が「これでも喰らえ」と言わんばかりに容赦ない熱を振りまいている。そんな現実から目を逸らし、私は夏のプレイリストをぼんやりと考えていた。ビーチの砂やプールサイドの水しぶきなど、ここでは想像もできないような爽やかなイメージが頭の中に浮かんでは消えていった。クルアンビンのライブ音源が部屋全体を涼やかに包み込んでいる。まるで雲の間を浮遊するかのように、心地よい空気が私を現実の喧騒から切り離し、桃源郷に連れていってくれるようだった。まるで時間が存在しないかのように感じた。いつの間にか私はその恍惚感に浸っていた。

    そんな気だるい夏のひととき、麦茶のグラスから氷が溶ける音がかすかに響いた。その音は不思議なほど鮮明で、まるで別の現実への扉が開かれる合図のように聞こえた。「もしかしたら、この現実って、ただのバックグラウンドで再生されている音楽みたいなものかもしれないな」とふと思った。「曲が終われば、また次の曲が始まる。それだけのことかもしれない」。その考えはささやかな悟りのように感じられた。同時に、人生に何かしらの意味を見つけようと躍起になっていた自分が滑稽に思えて、絶望を通り越して笑いが込み上げてきた。

    その時、どこからともなく声が聞こえてきた。それは、まるで古い友人のように親しげで皮肉たっぷりに「たまにはランダム再生を楽しんでみるのも悪くないさ。何が来るか分からないからこそ、少しは面白い。それが人生のすべてだ。深く考えることなんてない」とウインクでもするかのように語りかけてきた。その声は、私が長い間探し求めていた答えのように響いた。

    突然、窓の外でスコールが降り始めた。激しい雨が灼熱の空気を冷まし、空気中の埃を洗い流していく。雨が止むと、清々しい風が部屋に流れ込み、夏の雨上がりの清涼な匂いが広がっていった。

Illustration_Yoshimi Hatori
Development_Hayato Ida
Text Edit_Rui Konno

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1994年から2024年。
トレンドは移ろい、世相は変わった。
それでも褪せない本物のスタイルを求めて。
エディフィスとフレンチシックの30年。
そしてこれからも続くストーリー。

1994 to 2024.
Trends have shifted and the world has changed.
Still in search of authentic style that will never fade away.
30 years of ÉDIFICE and French chic.
And a story that will continue.