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人と環境にやさしいオーガニックコットンとは?《EMILY WEEK journal》

bioRe PROJECT 現地訪問レポート。人と環境にやさしいオーガニックコットンとは?売り手と買い手が未来に向けてできること #emilyweek_journal

  • 今回はEMILY WEEKの定番アンダーウェア「RESETシリーズ」にも使用されるオーガニックコットン「bioRe COTTON(ビオリコットン)」について、オーガニックコットンの原綿・原糸を輸入し日本国内に生地を届けるパノコトレーディングの三保真吾さんにお話を伺います。

    「bioRe COTTON」はスイスのREMEI社が中心となり、1991年からインド、1994年からタンザニアで始められたソーシャルプロジェクト「bioRe PROJECT(ビオリプロジェクト)」から生まれるオーガニックコットン。bioRe PROJECTは、単にオーガニックコットンを買い取るだけでなく、地域で暮らす人々のためのさまざまな仕組みを構築し、世界でも大規模かつ先進的なプロジェクトとして知られ、数々の国際的な賞を受賞しています。

    三保さんは昨年、bioRe PROJECTの拠点のひとつであるタンザニアを訪問。実際に現地を訪れることで見えてきた課題と、これから必要な支援の形、私達が未来に向けてできることについて、教えていただきました。

  • ▶︎ 現地の人達が本当に必要とする支援を考える

  • ーー今回はタンザニアへ訪問されたということですが、現地はどんなところなのでしょうか?

  • タンザニアは赤道直下に位置していますが、畑のある場所は標高が1200mほどあり過ごしやすい気候です。私達が訪れたのは日本の夏真っ盛りで、現地では乾季にあたる時期だったのですが、乾燥していることもあって、日本よりも過ごしやすいくらい。日中も気温は30度、夜は15度くらいでした。周りを見渡すと枯れ草ばかりで、いわゆる想像するようなサバンナの景色みたいな感じです。それが、雨季になると一変して、全部が緑で覆われるそうです。

  • :上空から見た乾季のタンザニア。

  • :タンザニアの道路。雨季になると全て緑に覆われる。

  • ーー bioRe PROJECTがタンザニアで行う現地支援にはどんなことがあるのですか?

  • タンザニアは乾季の干ばつ被害が年々ひどくなっています。私達が行った時も川は全部干上がっていて、何もないところに橋だけが架かっているような状態でした。そこに人がたくさん集まっていたのですが、何をしているのか見てみると、みんな川底を掘って水を得ているんです。現地の人達にとって水問題は非常に深刻なので、清潔な水にアクセスするための井戸などの設備、そして雨季に水を溜めておくための大きなウォータータンクがすごく望まれていて(REMEI社の理念に賛同する法人、個人からの寄付金によって運営される)bioRe Foundationでもその建設費用やノウハウを継続的に提供しています。また、水が足りなくなると、食べ物もないような状況になることがあるんですね。その為、年によっては食料支援などを緊急措置的に行うことがあります。

  • :井戸に水を汲みにくる人達。

  • また、女性支援という部分ではソーイングワーキングルームを建設しています。そこでは足踏みミシンを寄付しているのですが、農家の方々に使い方を教えて、簡単な布物製品を作り、ローカルマーケットで販売しています。インドもタンザニアも男性社会でまだまだ女性の地位が低く、女性が社会的に自立するというのが難しいみたいです。なので、そういった社会への接点を作ることで現地の女性の自信や自立に寄与するということが、ひとつの効果としてはあるみたいですね。

  • ▶︎ 人と環境にやさしいオーガニックコットンができるまで

  • ーー bioRe COTTONは普通のオーガニックコットンと栽培方法などに違いはあるのでしょうか。

  • オーガニックコットンというのは有機農業のプロセスを経て作られた綿のことですが、有機農業の基準自体は国の法律で決まっているんです。国によっては基準がない場合もありますので、世界的にはアメリカのUSDA(米国農務省)とヨーロッパが定める基準に則って作るというのが一般的なんですね。なのでbioRe COTTONが他のオーガニックコットンに比べて特別なやり方をしているということはないです。

    ただ、オーガニックコットンを栽培するというのはすごく難しいことです。bioRe Foundationでは、それを農家の方達にきちんと伝えていくためにトレーニング施設を建て、研修を行います。そして各村々に人員を配置して、毎日のようにスタッフが農家を見て回っています。そういった手厚いサポートをやっているところは他にあまりありません。オーガニックコットンへの取り組みの姿勢、実際の方法論など、かなり徹底しています。

  • :REMEI社が設立したタンザニアのトレーニング施設。農家の方へ向けて有機農業の研修などを行っている。

  • ーー 実際に有機農業を行う現場ではどのようなサポートを行なっているのですか?

  • 有機農業では、化学肥料を使わない、化学農薬を使わない、遺伝子組み替えの種を使わない、ということが大事なのですが、その全てのプロセスにおいてサポートを行っています。また、収穫したオーガニックコットンは市場価格にプレミアムを上乗せして買い取ります。契約時には買取り保証も行うので、農家の方は販売先を気にすることなく、安心して栽培することができます。

  • :有機農業で大切に育てられるオーガニックコットンの畑。女性の働き手も多い。

  • ・種について
    種は種苗業者から購入して植えるというのが一般的なのですが、インドでは遺伝子組み替えの種が蔓延してしまっていて、そうじゃない種を手に入れるのはほぼ不可能なんです。なので、bioRe Foundationでは自社で種から作り、種の供給から行なっています。実際にインドでは国から種の供給会社として認可を得ているほどです。タンザニアでは国自体が遺伝子組み換えコットンの栽培を禁止しているための遺伝子組み換えじゃない種しか使用できません。

  • ・肥料について
    肥料には堆肥というものを使います。牛の糞や植物を混ぜ込み、それを発酵させたものなのですが、その作り方を指導します。

  • ・農薬 / 害虫対策について
    農薬に関しては、化学農薬はもちろん使いません。ニンニクとか唐辛子とか、天然の作物から害虫忌避剤を作る方法を農家の方に教えています。

    また、有機農法の害虫対策のメソッドとして、別の対象に害虫をあえて引き寄せる、誘引トラップという方法があります。ひとつは虫が好きな甘い蜜をペットボトルに入れて仕掛けるもの。もうひとつは、ひまわりを綿の畑の中にたくさん植える方法。ひまわりを好きな虫がたくさん寄ってきて、綿には被害が及ばないんです。なので、オーガニックコットンの畑には、たくさんのひまわりが一緒に植えられている光景が見られます。

  • :害虫の誘引トラップとして使用されたひまわりの種は、搾油され無農薬オイルとして販売。残りカスも牛の餌などにして余すことなく使用する。

  • 収穫期にはコットンボールを手摘みしていきます。摘み取る方法は、機械摘みと手摘みの方法があるのですが、実は機械摘みって世界的には少ないです。アメリカ、オーストラリア、中国の新疆(しんきょう)とか、そういった大規模農場じゃないと経済的な理由も含めて設備を入れられません。インド、アフリカなどで採れる綿は、bioRe COTTONに限らずほとんどが手で摘まれています。だから農薬を使用した方法だと農家の方への健康被害につながりやすいんですよね。

  • :摘み取られたオーガニックコットン。

  • ーー bioRe PROJECTではカーボンニュートラルも達成されていると伺いました。

  • そうですね。私達は主に糸の状態で仕入をするので、糸の段階ではカーボンニュートラルを達成できています。なぜかというとREMEI社はbioRe PROJECT内でCO2をオフセットをする仕組みを構築しているからです。実際の方法論としては、タンザニアでは一般的な煮炊きの方法よりも燃やす木の量を減らせる高効率釜戸の設置をサポートしています。それを何千という単位で提供しているので、削減できるCO2の量が非常に多いんですね。またインドでは家畜の糞を燃料に利用するバイオガスプラントの設置を促進することで化石燃料の使用を削減し、木材の伐採を防ぐことができます。その結果、REMEI社のサプライチェーン全体で発生するCO2の量を全てオフセットしています。

  • ▶︎ 売り手と買い手が未来に向けてできること

  • ーー SDGsが国連で採択され、日本でもオーガニックコットンを使用した商品を以前よりも目にするようになりました。長年オーガニックコットンを取り扱われる中で感じられている変化や、これからの課題について教えていただけますか?

  • 繊維業界全体が今はサスティナブル一色ですよね。社会がそういった課題に気がついて、業界が取り組んでいこうという姿勢はとても良いことだと思います。一方で、私達はこれまでも「エコ」「ロハス」「エシカル」といった言葉が流行り、一時的に注目されても定着しないということを何度も経験してきました。そういう長年の経験から穿った見方をすると、このサスティナブル潮流に対して、いつまで続くんだろう、ということは感じたりしますね。一過性のブームで終わることなく定着して欲しいと願っているし、そのために何ができるのか、ということは常に考えています。

    またサスティナブルが注目される中で、現実的な課題として見えてきていることもあります。現在は世界的にオーガニックコットンの需要が高まり、原料の取り合いみたいになってしまっているんです。そうすると何が起こるかというと、不正が蔓延ることになります。(オーガニックテキスタイルの世界基準を策定している)GOTSなどでも不正を働く業者が毎年摘発されていて、その数は年々増えています。でもそれって氷山の一角なんですよ。ブームになればなるほど、そこに群がるけしからん奴らがたくさん出てくるし、現状の認証システムでは残念ながら不正を100%摘発することは事実上不可能です。だから、私達もその一因を担わないように、現地に赴くのものそうだし、信頼のおけるサプライヤーからしか原料を買わない、ということをとても気をつけています。

  • :オーガニックコットンの山の上でREMEI社の社長と手を組む三保さん

  • ーー 世界のオーガニックコットンの生産量は綿全体に対してまだ1%程度という話を聞いたことがあります。不正などの課題をのりこえて、その数字が今後増えていくと良いですよね。

  • 1%ってとても少なく聞こえるじゃないですか。でも私が入社した10数年前は、長年0.05%と言われ続けていました。それからすると1%ってすごいこと。これだけの世の中の動きを踏まえると、今後はもっと増えていくだろうし、5%、10%と増えていくことを願っています。

  • ーー逆に買い手が持続可能な未来に向けてできることについて、どう考えますか?

  • 今はサスティナブルマテリアルがたくさん出てきていますよね。なるべくそういった背景があるものを選んでもらえたら良いなと思います。bioRe COTTONのように、様々な取り組みがあったり、そういったことに興味を持っていただきたい。とはいえそういう物って高価だったりすると思うので、できる範囲で、生活の中に取り入れられる豊かさみたいなものも含めて味わっていただけたら嬉しいですね。

  • ▶ 長期的に信頼関係を築いていくことの価値と重要性

  • ーー 最後に、パノコトレーディングさんが、オーガニックコットンを通して伝えていきたい想いを教えてください。

  • REMEI社やbioRe Foundationのスタッフ達がよく使う「ロングターム リレーションシップ」という言葉があります。短期的な取り組みではなくて、長期的に信頼関係を築いていくことが重要なんだって言うんです。私も今回タンザニアを訪れて、実際に現地でプロジェクトに関わる方達と話をする機会があったのですが、すごく感謝してくれて「これからもプロジェクトの一員であり続けて欲しい。」と一様に言われました。

    信頼関係を築くというのは、農家の方々とbioRe PROJECTのスタッフもそうだし、bioRe PROJECTと私達の関係、私達とEMILY WEEKとの関係、EMILY WEEKとそれを買うお客さまとの関係においても重要なことです。そういった鎖が綺麗につながり続けていくことが理想だなと思うし、私達もその一点に価値を置いています。長期的な信頼関係を築いていくために、今後もどうすれば良いのかを考えていきたいと思います。

  • 三保 真吾(みほ しんご)

  • 株式会社パノコトレーディング 取締役1977年熊本県生まれ。武蔵野美術大学ファションデザインコース卒業。2007年パノコトレーディング入社。2020年より現職。

  • <bioRe COTTON生地による定番RESETシリーズ>

  • EMILY WEEK

    【RESET】オーガニックコットン混 ブラ(イエロー)

    ¥6,600

  • EMILY WEEK

    【RESET】オーガニックコットン混 ブラ(インディゴ)

    ¥4,235

  • EMILY WEEK

    【RESET】オーガニックコットン混 サニタリーショーツ(イエロー)

    ¥4,730

  • EMILY WEEK

    【RESET】オーガニックコットン混 吸水ショーツ(インディゴ)

    ¥3,773

  • EMILY WEEK

    【RESET】オーガニックコットン混 ブラ(シダーウッド)

    ¥4,235

  • EMILY WEEK

    【RESET】オーガニックコットン混 ブラ(ユーカリ)

    ¥4,235

  • EMILY WEEK

    【RESET】オーガニックコットン混 ショーツ(シダーウッド)

    ¥2,310

  • EMILY WEEK

    【RESET】オーガニックコットン混 吸水ショーツ(ユーカリ)

    ¥5,390

  • <bioRe COTTON使用、マタニティシリーズ>

  • staff credit
    取材・文 / 柿沼あき子
    撮影・デザイン / 中森陽子

  • ***
    #EMILYWEEK_JOURNAL では、さまざまなゲストをお迎えし「女性が心地よく生きるには?」について考えます。

  • 日々を頑張るすべての女性の日常を、心地よいリズムに。

  • EMILY WEEK(エミリーウィーク)
    Harmony in Rhythm for Women's daily life.
    "日常を、心地よいリズムに。"
    EMILY WEEKは、女性の体の変化とそれぞれの選択を、心地よいアイテムでサポートします。