松田未来 | ヘアメイクアップアーティスト

堂々と労る!
守る、ケアする、全力で

それぞれの “美しさ” について考えるコラム連載「Way of thinking beauty」。
ファッションやヘアメイク、心身との向き合い方など、毎回ゲストを迎えて紐解いていきます。

前編 : 『他人に向ける視線が、自分に返ってくる』自分軸で生きる、心の処方箋
後編 : 『着地点を決めなくては、道に迷ってしまう』“ありたい自分”になるために大切なこと

前後編にわたりお届けした松田未来さんのロングインタビュー。
連載のラストを飾るのは、未来さん本人による書き下ろし。

「私が私で良かった。そんな風に人生を振り返れる年の重ね方をしたい」
と語る未来さんが、人生100年時代をどう生きていくかを綴ったエッセイです。

一生付き合っていく自分の心と体。
大切な人に接するのと同じように、自分のことも大切に扱うことは、
ご褒美でも、特別なことでもなんでもない。
心身の健康を保つための当然の権利だとーー。

自分を大切にすると、社会の美しいところが見えてくる

「自分を労わる、守る、ケアする、全力で」

このコラムを書くことになった日から、
日常の中でふと気づいたことを
iPhoneのメモに書き留めていた。
そして今、見返えしてみると、
冒頭の言葉がはじめに書かれていた。

数ヶ月前に書いた自分の言葉なうえに、
スマホに入力した文字なのに、
その言葉は、
優しく、そしてとても力強かった。

改めて、「自分を守る、ケアする、全力で」
とはどういうことかーー。

自分自身を労わること。
それはスペシャルなことでもなんでもなく、
自分に与えられた当然の権利。(もはや義務に近い)
そして“全力”でする必要があると感じていて。

それも24時間365日!
日々大切にしながら、
なにかあればすぐにケアをし、
なにか起こる前に身を守り、
大事に、大事にしたいといつも思っている。

なぜなら、
そうすることで、
不思議と心が満たされていき、
自分だけでなく、周りの人にも優しくできたり、
社会の美しいところに目を向けられる。
なんだか心のゆとりが生まれてくる気がするのだ。

突然だが、私は猫と暮らしている。
(10年前、大雨が降った翌日に道でばったり出会って保護したのがきっかけ)
10歳になった今でも、美味しそうにご飯を食べていると
「えらいね、えらいね」と声をかけ、
元気に走り回っていると、
「すごい!健康な証拠だね」と嬉しくなる。
喉をごろごろならしてと甘えてきたら、
「自分の気持ちを伝えるのが上手だね~」と言いながら撫でる。
これを10年やっている。(笑)

人も動物も、やがて死を迎える。
ずっと今のままではいられないことは、100%決まっている。

だから私は、愛猫はもちろん、大切な人、
そして自分の心身が健康であるありがたみを、深く深く味わう。

風邪をひいた時に痛感する、あの“健康のありがたみ”を、
いつも感じながら生きている。

毎朝目覚め、体を動かせることも、
お腹すいた〜!と、ご飯を食べたくなることも、
(悩み事が大きい時って食事が喉を通らなかったり、
体調が悪くても食欲って減少することありますよね)
仕事ができることも、
次の休みに行きたいところを考えることができるのも、
なにもかもがありがたいこと。

そういえば、アメリカの投資家ウォーレンバフェットの名言に
「車は古くなったら乗り換えることができるけど、
自分の体は取り替えることはできない」
というような言葉(実際はもっと長いけれど、私の解釈はこう)があるけれど、
本当にその通りだと思う。

最近よく耳にする
「自分の機嫌を自分でとる」という言葉も、
同じことなんだと思う。

一生付き合っていく、
自分の心と体。

毎日メンテナンスしながら、
これでもか!というくらい大切にしていく。

私が私を大切にしなくては、
誰が大切にしてくれる?

体を休ませることも、
美味しいものを食べることも、
好きな人たちと過ごすことも、
部屋にお花を飾ることも、
どれもご褒美としてすることなんてなければ、
甘やかすことでもない。

ただ心身の健康を保つためにしていることで、
すべては私たちに与えられた当然の権利なのだ。

人生100年時代と言われる昨今、どう生きていくか。

この先、何が起こるかわからない。
けれどいつだって
自分を形成するすべてに「ありがたいなぁ」と思いながら、
大切な人に接するように自分にも優しく声をかけ、
一生付き合っていく自分自身を、
メンテナンスしながら生きていきたい。

毎日全速力だと身がもたないし、
全速力を出さないといけないタイミングも人によって違う。

車で例えるならば、
緩急をつけつつ、優しく運転していきたい。
そして、そういう心の持ち主に“私”という身体(人生)を運転して欲しい。

“0か100の思考”をやめたら生きやすくなった

自分を大切にする方法の一つとして、決めていることがある。

それは、0でも100でもない思考。

何か新しいことに挑戦するとき、
習慣やマインドを変えたいと思ったときも......
何事も0か100でないことを頭に入れておくと、
気持ちがすごくラクになるし、
確実に一歩ずつ進みたい方向へと向かえる。

例えば、自宅でオンラインのボディトレーニング(60min)を受けるとしよう。
調子よく頑張れる日があれば、
「今日はちょっと60分はしんどいな」という日もある。

そういう日こそ、
100を目指さずに、とりあえず10分やってみるだけでいい。
調子が出て最後までやり通してもいいし、30分でやめてもいい。

100に届かなくても、
たとえ10でも20でもいい、動くことを意識していくと、
人生は、自分の進みたい方向に緩やかに舵をきれるから。

以前の私は完璧主義で(自覚はあまりなかったけれど)、
いつも100や場合によってはそれ以上を目指していた。

95でも達成感を得られなかったり、
100に到達できないと思ったら、
はじめから0を選んだり......。

そんな“0か100の思考”をやめた時から、
とてもフットワークが軽くなった。

冒頭で触れた「自分を全力で大切にする」という話も、
いざそうしようと思っても、
すぐにその感覚をマインドに染み込ませるのは難しいと感じる人も。

けれど、これまでの
“自分を大切にしている度”に比べたら
ほんの少しだけでも行動や思考のレベルが上がっていたら、
もうそれでOK!

諦めてしまったり、忘れてしまっては0になるけど、
毎日0.1でも前に進んでいると、
気づいたら100を超えているかもしれない。

モチベーションなんて
そんなに長く続くものではなく、
つい後回しになったり、
面倒になったりしてしまうもの。

ここ最近、私は姿勢を美しくすることに力を入れているのだけど、
気がつくと、ラクな姿勢をとっていたり、
ストレッチや意識をすることを面倒に感じてしまったりする。

なので定期的に整体やジムにいき、
今の体の状態を事細かに聞いて、自宅でできるストレッチや
姿勢の保ち方など何かしらの課題を与えてもらう。
そうすると帰り道にはモチベーションが復活している。

自分のやる気なんて、
はじめから「そういうもんだ」と分かっているので
習慣になるまで、こまめにモチベーションを保ったり上げたりする伏線を張っておく。

100の日があって、70の日があって、
10の日があって、また100の日がくる。

そうすると、だんだんモチベーションが切れるときの自分の傾向が分かってくる。
それも自分を知るために大切なこと。

自分と一生付き合っていくのだから、
少しでも自分が心地よく、楽しく、気持ちよく過ごせるよう、
俯瞰して自分を見て、知って、支えていく。

何かを失った時、当たり前のことが当たり前でなくなった時、
後悔しないように、普段から優しく優しく、自分に接していきたい。

私が私で良かった。
そんな風に人生を振り返れる年の重ね方をしたい。

たった一人のあなたを、大切にしてあげられるのは、まぎれもなくあなたなのだ。

ヘア&メイクアップアーティスト
rihkaディレクター
松田未来

著書「私が私らしく生きる美学」双葉社
好きなことは、猫、早寝早起き、ワイン、
旅先でとことんゆっくりすること。
Instagram:@mira0911
YouTube:Mirai'svlog

次回更新
11月21日(月)
※更新日は予告なく変更する場合があります。

Text:Mirai Matsuda
Edit:Nana Omori
Illustration : maegamimami

SHARE ON SNS