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【JOURNAL】⻄本美沙さんに聞く、これからのフェムテック、SRHR 実現のヒント

新作サニタリーショーツ発売、特別記事。⼥性の選択肢を増やしたい。ランドリーボックス代表・⻄本美沙さんに聞く、これからのフェムテック、SRHR 実現のヒント #emilyweek_journal

  • 「フェムテック」という⾔葉が注⽬されるようになり、⽇々の⽣活に変化を感じている⼈も、そうでない⼈もいるかもしれません。今回は、“あらゆるワタシに選択肢を”をコンセプトに、⽣理やセクシャルウェルネスなど、すべての⼥性の悩みに寄り添う記事コンテンツを提供するとともに、さまざまなフェムテックアイテムも販売するWEBメディア「ランドリーボックス」の代表・⻄本美沙さんにインタビュー。⼥性の選択肢を増やすことの⼤切さや、フェムテックのこれからの課題、また、⾃分の体や性について主体的に選択できる権利「SRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)」についてお話を伺いました。

  • ▶ “⾔いたくても⾔えなかった”想い。「ランドリーボックス」を⽴ち上げたきっかけ

  • ―― ⻄本さんが「ランドリーボックス」を⽴ち上げた経緯について教えてください。

  • きっかけは、会社員時代に始めたブログでした。当時、ブログサービスのPR担当になり、ユーザビリティの確認のためにも⾃分で何か書いてみようと思ったんです。テーマを考えたとき、ファッションやメイク、⾷などのジャンルは既にやり尽くされていて、それ以外で⾃分の興味のあることが、⼥性のセクシャルウェルネスでした。セルフプレジャーやセックス、性にまつわる悩みなど、周りの⼈にも取材しながら記事にするうちに、「実は私も気になっていた」「ずっと⼀⼈で悩んでいた」という声をたくさんいただくようになって。いかに⼥性の性の話がタブー視されてきたのか、実感するとともに、みんな「⾔いたいけど⾔えなかった」だけなんだと気づきました。それから、安⼼して悩みを話せる場をつくりたいと、「ランドリーボックス」を⽴ち上げることにしました。

  • ―― 当時は「セクシャルウェルネス」という⾔葉もおそらく使われていなかったと思うのですが、性について発信することに抵抗はなかったのでしょうか?

  • 私にとって、セルフプレジャーやプレジャーグッズは、メイクやファッションと同じくらい⽇常的なものだったんです。⾃分に合うものを探して、通販で買ってはいろいろ試していましたね。そうしたことを、誰彼構わず⼈前でベラベラしゃべるようなことはありませんでしたが、恥ずかしいとか、はしたないとも思ったことはなくて。それは、親の影響もあるかもしれません。「⼥の⼦らしくしなさい」とか「⼥の⼦なんだからダメ」というようなことを、⼀度も⾔われたことがなかったんです。むしろ、「興味のあることはどんどんやったらいい」といつも背中を押してもらいました。

  • ⻄本さんが代表を務める web メディア「ランドリーボックス(https://laundrybox.jp/)

  • ――「ランドリーボックス」を⽴ち上げた当初、⽣理を⼤きなテーマにしたのはどうしてでしょうか?

  • 読者の悩みを聞くなかで、多くの⼥性が、⾃分で⾃分の性器を触ったことがないという事実を知りました。パートナーや医師には触らせるのに、それって不思議なことですよね。まずは、⾃分の体を知ることが、多くの課題解決の⼤前提にあるんじゃないかと思ったんです。その⼊り⼝としてフォーカスしたのが、「⽣理」でした。⽣物学的⼥性には共通して⽣理があり、それについて悩みを抱えている⼈も多い。まずは⾝近な⽣理と向き合ってみることが、⾃分の体を知るきっかけにもなると考えたんです。

  • ―― ⻄本さんご⾃⾝も⽣理にかなり悩んでいたとか…。

  • 私は経⾎量がかなり多く、毎⽉下着やデニムを汚してしまうことが⻑年の悩みでした。ある⽇、ニュースメディアで「⽉経カップ」が発展途上国で配られたという記事を読み、これはなんだろうと、興味を持ったんです。さっそく海外から取り寄せて試してみることにしました。最初は使い⽅もわからず、慣れるまでには時間がかかりましたが、「スクーンカップ」というタイプが⾃分には合っているとわかり、快適に使えるようになりました。するとあんなにも辛かった⽣理期間が激変して。たった1つアイテムを変えるだけで、こんなにも楽に過ごせるようになるんだと感動しました。

    その後、子宮腺筋症も見つかったのですが、きっかけは月経カップがすぐにいっぱいになるくらいに経血量が増えたこと。月経カップは量の変化がわかりやすいので、病院に行く判断材料になりました。こうした成功体験から他の⽣理⽤品も気になりだし、調べては試すようになったんです。
     
    当時はまだ⽇本にないものが多く、役⽴ったのが個⼈の⽅のブログ情報でした。ただし、それを⾒つけるまでが⼤変で。当事者意識として、こうした情報が集約されていたらもっと便利なのにと感じた体験も、「ランドリーボックス」の⽴ち上げへとつながっています。

  • ――「ランドリーボックス」では、エミリーウィークのことも取り上げてくださいましたよね。

  • 社会の仕組みだったり、価値観だったり、何かを変えたいと思ったとき、情報や知識だけでなく、視覚的なアプローチの効果というのはすごく⼤きいと思うんです。エミリーウィークは、機能⾯だけでなく、⾝につけることで⽣理期間をハッピーに過ごせるようなおしゃれさが、当時本当に新しかったんですよね。ファッションという切り⼝から、⽣理の⽂化を変えていこうという、これまでにないフェムテックの先駆者的ブランドとして注⽬していました。

    「ランドリーボックス」では、ほかにも、⽇本のフェムテックを盛り上げようとする、さまざまなブランドや企業に取材をさせていただきましたが、そこには、競合に対する敵対⼼ではなく「みんなで変えていこうよ」というシスターフッド感があったように思います。個⼈や 1 社の⼒だけでは、社会の構造を変えることはなかなか難しいけれど、同じ想いを共有できる横のつながりは、⼤きな希望でもありました。

  • 2019年にエミリーウィークを取り上げて頂いた記事(https://laundrybox.jp/magazine/emilyweek/)

  • ▶ 2019年から4年、「フェムテック」が盛り上がる今、感じる社会の変化

  • ―― ランドリーボックスを⽴ち上げた2019年ころから、世の中では⽣理や⼥性の性について取り上げられることが増えたように感じます。4年経った今、どのような社会の変化を感じていますか?

  • 2017年頃からの「#me too」運動もあり、個⼈の体験から声が集まり、それによって社会が変わるという事例がたまっていき、「声を上げていくって⼤切だよね」という思いが広がっていった結果なのかなとも思います。また、それに呼応する形で、企業やメディア、そして社会も、変化が求められるようになりましたよね。

  • ――「フェムテック」という⾔葉も、2019年頃からよく⽿にするようになりましたね。現在は、経済産業省がフェムテックを推進し、国をあげて盛り上げようという動きもあります。

  • 国が関わることで、インフラが整っていく素晴らしさももちろんあると思います。ただ⼀⽅で、フェムテックが少⼦化対策や労働損失の回避策としてフォーカスされかねないのは、気になるところでもあります。私たちは、⼦どもを産むためだけに、労働するためだけに⽣まれてきたわけではないはず。産む選択もあれば産まない選択もある。働けない環境にある⼥性もいる。あらゆる環境や⽴場にある⼥性のことを考えながらフェムテックを推進していく必要があるのではないでしょうか。

  • ―― 私たちはフェムテックと今後どのように付き合っていくのがよいでしょうか。

  • まず、フェムテックはあくまでもビジネスカテゴリを称したものです。この盛り上がりのなかで、フェムテックのサービスも有象無象になっているように感じます。「フェムテックだから、⼥性に良いものなんだ」と⼤きくまとめてしまうのではなく、どんな課題をどのように解決するものなのか、サービスの中⾝を冷静に⾒る必要があると思うんです。とくに最近は、「〜を使えば妊娠できる」といった度を越えた表現や、「みんなも〜をケアしよう」という発信が増えることによって、結果的に「女性は〜しなければいけない」と不安を煽ったり、ジェンダーのステレオタイプを強化してしまっている現状も感じます。私たちのようなメディアや情報発信側は情報の扱い⽅に⼀層注意する必要がありますよね。
     
    当たり前ですが、フェムテックが、⼥性の悩みを何でも解決できるわけではありません。サービスやアイテムに頼るより、医療機関にかかる⽅がいい場合もあるでしょうし、定期的に婦⼈科検診を受けることは⼤前提。フェムテックは、自分の体をケアする架け橋にはなると思いますが、言葉に踊らされたり、依存しすぎるのではなく、プラスαのケアとして、⾃分に合ったものを利⽤するのが理想だと思っています。

  • ▶ “あらゆるワタシの選択肢を増やす”ことの意義

  • ―― フェムテックの今とこれからを考え、「ランドリーボックス」では、今後どのような取り組みをしたいと考えていますか?

  • 今、準備しているのは共通の課題を解決できるようなコミュニティです。⽇々、本当にいろんな悩みが寄せられているので、そこに対して⼀⽅的に情報提供するだけではなく、みんなで対話をすることで、解決していくような仕組みを作りたいなと思っているんです。
     
    何より⼤切なのは、⾃分たちはどんな⼈たちを助けたいのか、どんな悩みに寄り添いたいのか、ということを真摯に考え続けていくこと。さまざまな環境下や⽴場で⽣きる⼥性たちを取りこぼさないよう、常に視野を広げながら、情報を届けていきたいです。

  • ――「ランドリーボックス」のコンセプトである“あらゆるワタシに選択肢を”は、まさに「SRHR(セクシュアル・リプロヘルス/ライツ)」を伝えてくれるものでもあると思います。選択肢を増やすことで、⼥性が得られるメリットとはどんなことだと思いますか?

  • 「SRHR」とは、生と生殖に関して、個々人が適切な知識と自己決定権を持ち、必要なヘルスケアを受けることができること、みずからの尊厳と健康を守れる権利のことをいいます。この権利を守るためには、避妊や中絶などをはじめ、あらゆる人がその選択肢に望んだときにアクセスできる手段をつくっていくことも大切です。

    そこで、選択肢が増えれば増えるほど、それぞれが感じている健康や性にまつわる課題を解決できる可能性は広がり、多くの権利が守られることにつながります。また、自分が体の自己決定権を持っているということに気づくきっかけにもなるかと思います。

    そもそも、⾃分が⽇常的に我慢をしていると気づいていない⼈も多いと思うんです。例えばエミリーウィークの店舗へ⾏って、肌触りのいい吸⽔ショーツを⾒たときに、「そういえば、私、ナプキンかぶれが嫌だったんだ」と気づく。これって、すごく⼤切なことで、新たな選択肢を前にしたときに、これまで「仕⽅ない」「そういうものだ」と済ましてきたことが、実はそうじゃないと気づくことができる。そうすると、⾃分の⽣活をもっと⼼地よく、快適にすることができますよね。

  • ▶ ⾃分の体のことは⾃分で決める。「SRHR」を⼤切に、⼼地よく⽣きていくには

  • ―― すべての⼈が、「SRHR」をきちんと実⾏できるには、どのようなことが必要だと思いますか?

  • できるだけ早い段階から、ヘルスリテラシーを⾼めて、自身の体のことをまず自分が理解しておくことは大切ですよね。そのためには、個人任せにするのではなく、包括的な性教育をしっかりと⾏なっていくことがとても重要だと考えています。

    ⽇本で性教育というと、体の仕組みや⽣殖に関する知識を学ぶものだとイメージしがちですが、包括的性教育には、ジェンダー平等や⼈権、多様性など幅広いテーマが含まれています。⽇本でもこうした教育が浸透していけば、「SRHR」の理解も深まっていくのではないでしょうか。

  • ―― ⼀⼈ひとりが、⽇常の中で⾃分の権利を意識することが⼤切ですね。

  • ⾃分の健康における⾃⼰決定権を⾏使するということは、みんながこうだから、ではなく、あらゆる場⾯で「⾃分がどうしたいのか」を自分自身と対話し、きちんと考えることが必要になります。すごく⼩さなことですが、自分にとって大切なものだと感じるのであれば、下着⼀枚にしても、⾃分が⼼地良いと感じるものを選ぶ。そうした意識と選択の積み重ねだと思うんです。
     
    個を⼤切に⽣きるというと、孤独になると感じてしまう⼈もいるかもしれませんが、それは違います。重要なのは⾃分のことを主に考えつつも、周りの⼈と相互理解していくこと。「SRHR」は、あらゆる人が持っている権利であることを忘れずに、互いに個を脅かすことなく、相⼿を尊重しあえる関係性や環境を築いていくことなんです。そのために必要なのが、対話ではないでしょうか。

    自分と異なる人をないものとして考えるのではなく、「あなたのこの部分はわかるよ」「でも、私はこうかな」と、気持ちを伝え、視野を広げ続けることで、少しずつ環境は変わっていくんじゃないかなと思うんです。

  • 西本 美沙(にしもと みさ)

  • ⼤学卒業後、PR会社を経て2011年にドワンゴ⼊社。広報・宣伝業務を担当。会社員の傍ら始めたブログをきっかけに、⼥性の体や性を取り巻く環境に対する関⼼が⾼まり、ウェブメディア「ランドリーガール」を開設。2019年、ランドリーボックスを設⽴した。「あらゆるワタシに選択肢を」をビジョンに⽣理やセクシャルウェルネスなど⼥性が抱える悩みに特化したプラットフォーム「ランドリーボックス」を運営するほか、リアルな声を起点としたマーケティング⽀援やコンテンツ制作事業を展開している。

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  • staff credit
    編集・文 / 秦レンナ
    撮影・デザイン / 中森陽子
    企画・ディレクション / 柿沼あき子

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    #EMILYWEEK_JOURNAL では、さまざまなゲストをお迎えし「女性が心地よく生きるには?」について考えます。

  • 日々を頑張るすべての女性の日常を、心地よいリズムに。

  • EMILY WEEK(エミリーウィーク)
    Harmony in Rhythm for Women's daily life.
    "日常を、心地よいリズムに。"
    EMILY WEEKは、女性の体の変化とそれぞれの選択を、心地よいアイテムでサポートします。