
KUONとWISM。
その蜜月関係はKUONのブランド立ち上げ時である2016年の春から続いている。2月26日(土)に発売となる別注アイテムの制作秘話と共にKUONデザイナー石橋氏とWISMコンセプター堀家が、自分達のフィルターを通して描いてきた今までと、それぞれのブランドを通してのこれからを語る。

KUONとWISM。
その蜜月関係はKUONのブランド立ち上げ時である2016年の春から続いている。2月26日(土)に発売となる別注アイテムの制作秘話と共にKUONデザイナー石橋氏とWISMコンセプター堀家が、自分達のフィルターを通して描いてきた今までと、それぞれのブランドを通してのこれからを語る。
PROFILE
石橋 真一郎「KUON」デザイナー
文化服装学院を卒業後、東京・丸の内のテーラーに師事した後、パリコレクションブランドにてパタンナーとして活躍。2014年からはフリーランスとして数々のブランドのデザイン、パターンを担当。2016年にKUONとしてのコレクションをスタート。Instagram:@shinichiro_ishibashi_,@kuon_tokyo,@kuon_store
「今の多様性という部分に対して核心を突いてくる」
―今回のKUONとWISMの別注アイテム「REVERSIBLE CARDIGAN SUPER LOOSE」について、なぜこのアイテムを別注することになったのかを教えてください。
堀家:KUONの展示会に伺った時に、今回別注させてもらったデザインの他にもうひとつ別注したいものとして考えていたアイテムがあって。迷いに迷ったんですが、もうひとつのデザインのほうはある意味「完成」されていて、尚且つ石橋さん(KUONデザイナー)の過去と現在の歴史が詰まったようなアイテムに見えたので、WISMの別注としていじれないなと思ったんです。
だからといって今回の別注させてもらったアイテムのベースとなったアイテムが「完成」されていなかったわけではなくて、モノに対しての余白を感じたので こちらであればWISMらしく料理させてもらえるかもと思いお願いをしました。石橋:まず堀家さんからお話をいただいた段階で、堀家さんも自分も別注を製作するなら「黒」が気分だったんです。
前の別注( WATER REPELLENT UTILITY JACKET)も黒で作っていて。KUONって通常のリリースであまり黒を使わないんですが、個人的には黒が好きなこともあり前の流れからも黒で別注しましょうとなりました。あとは、今回の別注アイテムのサイズがKUONの通常のインラインでいう2XL一択なんです。なんでそうなったかという理由も面白くて。
堀家:なんだったっけ?(笑)
石橋:(笑)、サイズを「選んでもらう」んじゃなくて今の自分の体型の中で「どう着るか」考える洋服があってもいいんじゃないかっていう話を堀家さんがしていて。それが自分はとてもかっこいいなと思って。小柄な人が着たら大きく着られるし、大きい人が着ればそれなりにタイトになる…それぞれの着こなしに個性が出てくるし、今の多様性という部分に対して核心を突いてくる言葉だと思ったんです。
堀家:すごい良い事言うじゃない、俺(笑)。
堀家:確かに今自分の中で疑問に思っているのが、「優しい服が増えたこと」。サイズ展開が豊富にあったりお客様に寄り添うような優しい服が増えたけれど、昔はもっと着たい服に対して自分からその服に合わせていく「着こなし方」ってあったよなと思っていて。
『世の中は知らないけど、俺ならこのアイテムをこう着る』という部分に対して、WISMが今年ちょうど10周年なのでアクセルを踏みたいなと。それが自分の中でも今ブームというか10周年で一貫して考えている部分かもしれないです。
世の中のMサイズに合わせていくのではなく、このサイズがかっこいいんだというところをWISMとして自信をもって伝えていければと思っています。優しいだけが服じゃないという部分を。石橋:『どう着よう?』って服目線で考えるのって楽しいですもんね。
堀家:ですよね、そこのふり幅を大事にしたいんです。
「取っ掛かりがあることで「何それ?」というコミュニケーションが生まれることがとても大事」
石橋:今回の別注に関してはリバーシブルになっていて 裏側に返すとメッシュになっているんですが、それが今回のKUON22SSのテーマである「-Colors of Light-」光と影にもフィーチャーしていて。
表裏どちらで着ようかとか、例えば今日は彼が表で着ていて翌日は彼女が裏で着ているとかそういう事もすごく面白いのかなと思っています。
デザインもフワッと羽織れるもの、気軽に羽織れるものを意識して作っていて、且つ裏面は変わったことがしたい。こういう取っ掛かりがあることで「何それ?」というコミュニケーションが生まれることをとても大事にしていて、技術的な部分をどうこうというよりもラフに着脱できてテンションもあげてくれるようなものを作りたいと思ったのがこのアイテムのスタートでもあります。
堀家:あえて袖口とか裾からメッシュが見えるようになっていたりとか。
石橋:涼しさとか軽さも出ますよね。春夏なのでそこも意識しています。
堀家:リバーシブルもこのデザインもポイントですけど、素材も面白いですよね。
石橋:素材に関しては、表側は和紙とコットンで作られていて。
堀家:質感が本当に何とも言えない感じ。すごいなぁ。
石橋:和紙ってすごく軽くて丈夫という特性があるのと、織り方が楊柳という手法で織られていて日本に昔からある夏に見かける素材なのですが、カラッと爽やかに着られるんです。
裏に関してはメッシュにしていて、メッシュの下に敷いているのがグレーなのですが光が当たると影が出来たり動いたりすると表情や奥行きが変わる、そういう所も楽しんでもらえるところかなと思っています。
堀家:先程聞いたKUONの22SSのテーマにも繋がってくる表現ですよね。
石橋:まさにそうですね。
堀家:このアイテムに関してはKUONのラインナップの中でも一歩先を行くような『挑戦しているアイテム』に感じたんですよね。展示会で見た時もひと際異様だったというか。
石橋:そう感じていたのですね、分からなかったです。
堀家:そのいい意味での異様さがお客さまの「試着してみたい」という衝動に繋がるスピードが速いんじゃないかと感じたんです。今ってなかなか試着まで繋げるのにも時間が掛かるので。
堀家:自分はバイヤーとして展示会に行かせてもらっていますが、一番目のカスタマーとしてお客さまと同じ感覚でモノを見ていると思っているので、お客さまがどういう部分に興味を持つかという所は常に考えてその目線を持って見ていますね。とても背筋が伸びる瞬間というか、リスペクトを持っていつも行かせてもらっています。
「-Colors of Light-」
―ちなみに先程から出ているKUONの22SSのテーマをあらためて教えていただけますか。
石橋:今回のSSのテーマは「-Colors of Light-」というテーマです。今コロナ禍で自分たちもなかなか外に出られないし、コレクションもデジタルのプレゼンテーションになっていたりして。 洋服の大事なところって、質感だったりにおいとか音とか人が動いた時の雰囲気とかだと思っているんですけど、それが一切できませんとなりこの状況の中で何を作ろうかなと考えた時に「視覚」に訴えかける表現がとても必要と思ったんです。
光と影が視覚の中ですごく重要な部分だなとなり、その中でモノをどう作っていこうと考えたのが今回のテーマのスタートでした。石橋:今はデジタルがゆえに細かいディテールまで見えない部分もあるかもしれないけれど、実際もっと身軽に動けるようになった時に、実物の服を見てもらえれば先程も話したようなコミュニケーションに繋がっていくと思っていて。
そんな思いも込めて今回物作りをしました。LOOKは光の三原色を使っています。重なると影が出来る、黒くなるという表現です。
「KUON 2022SS LOOK」
堀家:いつも仲良くふざけ合っている関係ですけど、こういう話を聞くとデザイナーさんなんだなと思うね(笑)。
石橋:デザイナーっぽいですか(笑)。
堀家:KUONというブランドが進化している過程を自分は一緒に見させてもらっているので、元々は刺し子・襤褸のようにファーストクラスのアイテムがメインで。
徐々にビジネスクラスのようなアイテムも出来てきたのだけれど、このビジネスクラスのアイテムをファーストクラスに持っていこうというブランドとしての気概がどんどん自信になっていたり、好きなことをやろうという部分に繋がっているのかなと自分からは見えてるんです。奥行きやふり幅にリンクしているというか。石橋:表面的な刺し子や襤褸=KUONではなくて、ひと目で見て「KUONだよね」というモノを作れるようになりたいなと思っていて。
生地がデニムであろうが「KUONだよね」が出来ていないと真似されてしまうと思うし、オリジナリティってそういうことだなと思っています。
「コミュニケーションを取りつつ同じ目的に対して進んでいく」
―KUONのブランドコンセプトが日本語の「久遠」、「遠い過去または未来」「永遠」に由来しているかと思います。WISMが今年10周年、KUONのブランド設立から今までという歴史に対して石橋さん、堀家さんの今までとこれからをそれぞれのブランドを通してお伺いできたらと思っているのですが。
堀家:頑張ってます、努力してます、愛してくださいってことを、人に言われるならいいんですけど自分で言ってるのって絶対応援したくないじゃないですか。もともとWISMが出来た10年前からやり続けてきている事って、賛否両論あるにしても他のお店が出来ないような尖った事をやってきていると思っていて、10周年という節目でやっぱりもう一回ちゃんとアクセル踏もうって思っています。
まわりはどう思おうと自分はこう思うということに対してきっちりやらないと普通のお店になってしまうなと思っているので。無駄に尖る必要は無いと思っていますが、現状に対して自問自答しながら物事を考えるようにしています。石橋:全く一緒ですね。自分たちが何をどう表現したいかをすごく大事にしていかなければいけないと思っていて、さらにそれを本当に好きと言い切らなければいけないと思うんです。
併せて、KUONにはバラエティ豊かな人材が揃っているので、コミュニケーションを取りつつ同じ目的に対して進んでいく事がすごく大事なことだと思っています。
堀家さんをはじめとして色んな人たちが僕たちのことを見てくれて、アウトプットしてくれるという関係性が多くなっていって長く続けばいいなと思っています。石橋:これからという意味では、「作ること」で言えば糸から物作りしてみたいです。
最初から最後までを自分たちで作れるようになることは理想ですね。この糸は○○さんが手掛けているとか、何をするにしても人と人との関わりだと思っているので、モノだけ作って売っているだけではなくそのようなエピソードも大事にしていきたいなと思っています。
堀家:KUONのチームってかっこいいですよね。それぞれが技術者で個が立っていてそれぞれがそれぞれの分野で全力を出している、『決意と覚悟がある』チームだなと。
最後まで全員で知恵を絞り出して最高にいいものを作り出そうとする。スペシャリスト集団だと思っています。石橋:堀家さんが一番KUONチームの事を知っていますね(笑)。
―今回そんなスペシャリスト集団のKUONチームが堀家さんの事をKUONのYoutubeで紹介して下さっているんですよね。
石橋:KUONチームみんな堀家さんに興味があるんですよ(笑)。
堀家:オフィスで仕事しているシーンとかも撮ってもらっています(笑)。周りがすごくびっくりしていましたが、リアルな部分を撮りたいと言っていただけたのは有難いと思っています。
石橋:堀家さんが普段どんなことをしているのか全部が全部知らないと思うんです。KUONとしては知りたいし、そういう人と物作りをしているんですよという所を伝えたいなと思ったんです。面白い企画になったんじゃないかなと思います。堀家さん、Youtubeかっこつけてないですか(笑)?
堀家:かっこつけてないです(笑)! KUONというフィルターを通して見える自分を楽しみにしています。