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  3. Journey to INDIGO PEARL エディター小林 文が訪ねる山梨・甲府 「鮮やかなインディゴパールが染まるまで」
  • Lilasのアイコン、“インディゴパール”シリーズ。
    ネイビーブルーのカラーはデニムと相性がよく、
    カジュアル派にもファンが多い。 エディター小林 文さんもそのひとり。
    真っ白なパールがどのようにして あの鮮やかな藍色に染まるのか…
    小林さんが山梨県甲府市のアトリエを取材しました。

    なぜ、
    甲府にアトリエが?

    山梨県甲府市は古くから“ジュエリーの街”だという。その歴史は江戸時代の末期ごろから。金峰山一帯を中心に水晶が産出され、人々は研磨・加工する技術を身につけ、地場産業としてひろがった。今でも小さな工場やアトリエが多く、Lilasのジュエリーもブランドデビュー当初からこの地で製品化されているものがいくつかある。そのひとつが“インディゴパール”だ。

    「天然のパールを
    天然の藍で染めたい」
    デザイナーと職人の試行錯誤

    LilasはSpick & Spanの店内で展開していることもあり、「デニムにもリゾートドレスにも似合うジュエリーを提案したい」とデザイナー千葉さんは言う。パールを気負わずラフに楽しむには…と考え、インディゴ染めを検討。当初はデニムブランドへ声をかけたが、なかなかうまく染まらない。それでも諦められない千葉さんは、山梨甲府のメーカー(有)フレア 千田さんに相談した。「パールをどうしてもインディゴ染めしたいんです」――。今から9年前、2015年だった。

    テキスタイルの学校出身のデザイナー千葉さんは染めの知識を千田さんに説明。(有)フレアは、Lilasのなかでも凝った商品をうみだすメーカーで信頼は厚い。千田さんにとって染めは初の試みだったが、さっそく自社に持ち帰った。

    パールの種類や形、大きさ、気温や湿度、藍液の濃度や量、染色回数、乾燥時間によって染まり方はさまざま。来る日も来る日も手を真っ青にして試行錯誤を繰り返し、色落ちや色止めチェックもしっかり確認。ようやく双方が納得のいく“インディゴパール”が誕生した。

    染め

    天然の藍の葉から抽出し発酵させた藍液のビニール袋に、天然のパールをつけていく。数日後、水切りネットでパールだけをすくいあげ、平らなバットにひろげる。屋内で半日乾燥。その後、また藍液のビニール袋に入れて数日間つける。これを合計4回繰り返す。驚いたのは色の変化。淡いブルーから濃いネイビーブルーになるのではなく、最初は薄いエメラルドグリーンだということ。空気に触れることで酸化し、淡いブルー→ネイビーブルーと変わる。同じ配合の藍液を使い同じ手順でおこなっても、天候などで微妙に変動するため、毎回丁寧に見極めながら調整するのだそう。ちなみに、藍液をかいでみると温泉地に降り立ったときに似た少し鼻にツーンとくる香り!

    磨き

    やわらかい丸型の布がついたバフという電動の大きな機械で、ピアスやリング、ネックレスなど、インディゴパール以外の地金部分を研磨。その後、小型のリューター(ネイリストさんが甘皮を処理する際のあの機械に似ている!)で細かな部分を磨き、ツヤを引き出す。

    糸通し・糊付け

    染めムラやヒビがないか検品。(ちなみに、漏れた3割弱のパールは9年前の当初から大切に保存。整いすぎていない味のある風合いで“エシカルパール”として製品化している。素敵!)ネックレスの糸はパールに馴染むよう、ブルーの色味を厳選。見えないところまでしっかりインディゴブルーにこだわって。イヤリング・イヤカフ・リングなどは、糊の強度を考慮し2種類を混ぜて使用。細い針のついた工具でパールの穴に糊を入れ、地金パーツと接着。糊のはみ出しや気泡がないかルーペで丁寧にチェック。想像以上にどの工程も手作業・手仕事!

    取材を終え改めておもう
    「カジュアルに馴染む」
    インディゴパールの魅力

    私とインディゴパールの出合いは数年前の展示会。元々、「白T✕白パールネックレス」に憧れがあるものの、実際は年齢が追いついていないせいか、どうも照れくさい…。もう少し自分自身に貫禄が出るまでお預けかなと思っていた矢先だった。

    フォーマル感が薄く、甘さは控えめ、シック。白パールがカジュアルを「格上げする」のだとしたら、インディゴパールはカジュアルを「引き締める」イメージ。ワードローブの主軸がブルーシャツやデニムの私にとって、インディゴパールはとても落ち着く存在となった。

    今回山梨を訪れ思ったのは、「ブルーだから落ち着く」わけではないということ。水も空気もきれいな場所で、職人おひとりおひとりが静かな愛で向き合い、丁寧に育んでいる。その空気感のインディゴパールだからこそ、力の抜けた上品なカジュアルが似合うのだ。

    デニムやリネンに爽やかな輪郭をつくり、ヘルシーなツヤを添える――。愛用中のネックレスとともに、私も自分なりのカジュアルを極めていく所存です!

    AYA KOBAYASHI

    1985年うまれ。ファッションエディターとして、主婦の友社『GISELe』や講談社『mi-mollet』などで編集・執筆中。お笑いライターとしても活動。一児の母でもある。Lilasの3mm粒インディゴパールショートネックレスは2022年からの妊娠中から愛用。