

case:
007
Kenta Hamano
ミュージシャン・俳優
(在日ファンク / N e w d a y)
Photo_Toshio Ohno (L MANAGEMENT)
Hair & Make-up_Kosuke Abe
Edit & Text_Rui Konno
case:
007
ミュージシャン・俳優
(在日ファンク / N e w d a y)
Photo_Toshio Ohno (L MANAGEMENT)
Hair & Make-up_Kosuke Abe
Edit & Text_Rui Konno
今年も春がやってきた。出会いと別れ、期待や不安。
色んな予感と気持ちが胸の中を巡りつつも
なぜだがジッとしてはいられない。
それは、輝いて見えるあの人たちだって変わらない。
新しい景色を見るために人知れず葛藤して、
今も挑戦を繰り返しているはず。
歳も性別も、畑も違う13人の人々が教えてくれた、
彼らの心を動かすもの。
時代の閉塞感がどれだけ強まっても、
好奇心と情熱は奪えない。
お気に入りの1着に袖を通したのなら、
さぁ、新たな自分に会いに行こう。
良い音楽というやつには、
往々にしてつくり手の生き方が滲み出るものだ。
ジャズマンの激動の人生から生まれる
憂いを帯びた音色も、
逆境を跳ね除けるソウルシンガーの力強いステージも、
楽曲の魅力をより際立たせる。
そんな視点で振り返ると、
浜野謙太の半生は波乱含みとは言い難いように思える。
解散から数年を経ても
語り草になるバンドでその名を知らしめて
今では仲間たちと各地のフェスを沸かせ続け、
役者としても個性を光らせる。
しかし、その成功とは裏腹に、
彼の中では小さな違和感が膨らみ続け、
いつしか挫折感として胸中に残るようになった。
彼の痛みや後悔も、いつかその音楽に
新たな深みを与えるのか。
笑顔の奥に覗かせた、葛藤と希望。
プロとしての浜野さんの活動はご存知の方も多いでしょうが、元々はどんな風に音楽に傾倒されていったのか、教えていただけますか。
元は、ホーンセクションが入ってる音楽が昔から好きだったんですよね。自分が吹奏楽部だというのもあったし、父さんがジャズ好きだったしで。コンボ(少数編成)のモダンジャズはアメリカの一部だけでの流行りだったらしく、全体的には(大人数編成の)スウィングジャズが主流だったみたいで、そういうダイナミックなものが好きでした。それが小学校から中1くらいかなぁ。
大所帯のミュージシャンに惹かれたのはどんな部分だったんですか?
ホーンセクションならではの、わざわざ集まって人力で賑やかにさせる、大の大人が何人も揃って演ってる“ヤカラ感”が好きなんですよね(笑)。ヒップホップのミュージシャンとかも、ヤカラ感に憧れるし、ジェームス・ブラウンもヤカラ感があった頃が最盛期だと個人的に思っていて。
“ヤカラ感”って良いフレーズですね(笑)。
SAKEROCKでも、みんながどうバンドをうまくやっていくかを考えてるときに、僕はどうイキるか、カマしてやるか何てことばかり考えてました。周りがロック、ロック言ってて気に入らなくて、ルーツミュージックとかジャズもあるんだぞって噛みついたり。この場を借りて皆さんに謝りたいです(笑)。
(笑)。人気バンドで活動しながら、そんなフラストレーションを抱えられていたんですね。
僕の知の体系が、多くに支持される人たちとは違ったんですよね。今、音楽シーンを席巻していたり、あらゆるジャンルで頑張ってる人たちってもともとはそのジャンルのオタクみたいな部分があったと思うんです。僕はジャズとかファンクと言ってもそこの中でグッときた人をピンポイントでしか掘り下げていなかった。で、SAKEROCKっていうのは色んな知識の蓄積の上でああいう音楽を演っていて、色んなものを知ってる人たちが“こんなことやる若者は面白いな”って思ってくれていて、そこにはロックの地平もヒップホップの地平もなかったっていうのが、俺は全然わかってなかったんですよ。
昨年、在日ファンクがリリースされたシングル、『おかんむり』も、ポップでしたけど、反骨精神は健在でしたね。
僕、本当はめちゃくちゃ怒っててカッコいい曲をつくりたいんですよ。でも、それだとメンバーが動かないんですよね。「こんな強いこと言われても楽しめないよ」、とかって言われちゃう。でも、『おかんむり』はメンバーみんなが調和したんです。メッセージ性もあるけど行き過ぎていなくて、メロディもちゃんとあるし、グルーヴ感も楽しめるし、それでいてシンプル。今の7人がハマったところでできたのが、『おかんむり』だったのかな。まぁ、あのPVでもめちゃくちゃ揉めたんですけどね。 (笑)。
大所帯だと意志統一は難しそうですね。
そうですね。それに、みんな歳も歳でキャリアもあって、楽しむことの深さを分かってるから嘘はつけないし。でも、それは良いことなのかなと思うし、アプローチの仕方が増えたのは面白いです。ひとつの視点では、一筋縄ではいかなくなってる。僕らとしてもそうしていきたいし、変わっていっても良いのかなと思うんです。
失礼な質問ですけど、そういうモチベーションが途切れたり、音楽を止めてしまおうと思ったことはなかったんですか?
芝居とのバランスで、“あぁ、このままやってて良いのかな……”と思うことはありますね。どちらも中途半端になってしまうんじゃないか、って。どれもやってることが違うんですよね。SAKEROCKのときはいちプレイヤーで、演技もいちプレイヤーですけど、在日ファンクはリーダーで舵取り。しかもプレイヤーというよりは、つくる方の比重が大きいので。自分のモチベーションが何なのか、はっきりとはわからないけど、いちアーティストとして何かしらの決定はしなきゃいけないんじゃないかな、という葛藤はありました。
そういった迷いからはどのように脱せたんですか?
今もまだ悩んでいて、険しい時期だと思います。だから、「俺はこうです!」ってなかなか言えないけど、ずっと何かに挑戦し続けてるような感覚はあります。
芝居も音楽も、キャリアを積むとある程度のレベルまでは経験則で持っていけたりするものなのかなと思うのですが……。
メジャー(レーベル)のときは、自分もそういうものだと了解してやっていたんです。期日があって、そこまでにつくって出す、ということをやっていて。技術的に“これで完成!”という風に決める自信がないから期限を設けて仕上げようというやり方ですよね。それが、今のレーベル(カクバリズム)になって、「浜野さんが納得してから出してください」と言われるようになって。そこで、あ……! と思いました。当たり前のことなんですけどね、俺は今までこなしちゃってのたかな……と。良い曲もつくって来たつもりでしたけど、離れていってしまったファンの方には、そういうところを見られてたのかもしれないですし。
熱心なファンほど、失望とは隣り合わせですもんね。
はい。ただ、そこで色々なことに直面できました。今までとても狭い視野でやって来てたのかも知れないな、とか、僕が20代のときにイキり続けてたのはもったいなかったな、とか。もっと早く、自分が何もできない人間なんだと気づけば良かった。僕らのPVにも出てくれた笠松将くんの主演映画『花と雨』を観たんですが、笠松くん演じる主人公のSEEDAさんは、心の支えがお姉ちゃんしかいなかったように描かれていて、SEEDAさんが成功するまでの孤独さと言ったらないなぁ、と。でも、その孤独な期間って大事なんだと思うんです。20代の僕はそれを経験しなかったし、今は結婚して子供もいる。どう見ても孤独じゃない今、孤独を必要としてます。今、自分たちのチームみたいなものが出来て、逃げ場がなくなったからなのかもしれないですね。素敵な人たちと繋がって自分のダメさに気づきました。経験するべきことを経験してないし、孤独じゃなかったから、人のありがたみや大事さを感じれてなかったんですよね。それでカクバリズムに戻って来て、「あ、人って大事だな」って。
表現を生業にしている人間の栄光と挫折を少しだけ垣間見られた気がします。ミュージシャンというのはつくづく稀有な生き方なんだと思いますが、最後にズバリ、音楽人生の中で味わった“絶頂”と“どん底”は?
絶頂は、瞬間瞬間であるんですよね。演奏しながら、「絶対今、バンドメンバーもお客さんも同じことを考えてるな」っていう一瞬があって、それは小箱でも大箱でも、アウェイでも本当に最高。どん底は……これから来るんじゃないかなぁ?(笑)
PROFILE
浜野謙太 / はまのけんた
1981年生まれ、神奈川県出身。カクバリズム所属。インストゥルメンタルバンド、SAKEROCKのトロンボーン・スキャット担当としてその名を全国に知らしめ、2007年には自身がリーダーとしてボーカルを務めるディープファンクバンド、在日ファンクの活動を開始。2015年にSAKEROCKは惜しまれつつ解散するが、役者業や別バンド・Newdayでの活動など、多方面でその存在感を強めていった。現在は出演映画『ロマンスドール』『酔うと化け物になる父がつらい』が公開中。在日ファンクとしての最新作はシングル『おかんむり』。
最新情報は自身のTwitterより。
Twitter : @hamano_kenta
しらかめ
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