- 6人のスタイリストが着こなす、
特別なBarbourとMACKINTOSH。ともに英国で生まれ、古くからファッション好きに愛されてきた〈Barbour(バブアー)〉と〈MACKINTOSH(マッキントッシュ)〉。今回、両ブランドのマスターピースとも言えるアイテムをÈDIFICEが別注し、現代の解釈を加えてリリースする。そのアイテムは、いかにして着こなすべきか。6人のスタイリストたちのスタイルサンプルを見ながら、そのヒントを探っていく。Photo_Takuma Utoo、Kazuki Miyamae
Text_Keisuke Kimura
Edit_Ryotaro Miyazaki1980年生まれ、東京都出身。小沢宏氏に師事し、2007年に独立。ブランドのビジュアルディレクションやアーティスト、広告、ショーでのスタイリングなど、その仕事は多岐に及ぶ。最近は月1、2回のペースでバスケをプレー中。
-まずは着こなしのポイントから、教えてください。
山田:硬い感じの素材が売りのひとつでもあると思うんですけど、そういうものには逆に、とろみだったり、柔らかいものを合わせたいんです。靴も、レザーのシューズとかでサラっと合わせるよりも、あえてハイテクスニーカーを履いてみたり。
-普段から、そういう合わせ方をすることが多いですか?
山田:上下の素材感がちょっと遠いほうが好きかもしれないですね。スラックスにTシャツとかね。近い素材感の色違いみたいになるのは結構苦手かもしれないです。
-山田さんはBarbourに親しみがありますか?
山田:昔から何着か持っていて、好きですよ。ただ、オイルドタイプは臭いがあるので、妻からの評判はあまりよくなくて(笑)。その点、この別注はオイルドではないし、そこもひとつ、ポイントなんじゃないですかね。
-お持ちのものと比較してみたときに、本作はいかがですか?
山田:まず、色がすごいフレッシュというのと、ここまでかたい服ってなかなかないですよね。現代の人たちって馴染みのいい服に慣れてると思うんですけど、この硬さを、逆に楽しんでほしいというか。
-ほかに、山田さん的なコーディネートのポイントも聞かせていただきたいです。
山田:かなり汎用性がある気はしていて、スーツに着てもいいだろうし、デニムにも合うから、あまり考えずにぱっと羽織れると思います。オイルのものより軽く着れるから、いまぐらいの季節でも、 ロンTとかTシャツの上にさらっと羽織る感じで全然いいですよね。
そしてぼく、主張のある服をあえて着るっていうのが好きなんですよ。重いコートも好きだし、歩いていると疲れる靴とか。着てるっていう実感がある服が好きなんです。
-その感覚は、昔からありましたか?
山田:昔から古着が好きだったし、そのときも「あと1回このボタン止めたらスナップボタン死ぬかも」みたいなやつとか、ジップも、つけ根が壊れかけてたりとか、制限付きの服に免疫があるっていうんですかね。もちろん、この別注は作りはしっかりしていて頑丈ではあるけど、この“着てる”っていう感覚は、結構好みなんですよね。
1983年生まれ、北海道出身。二村毅氏に師事し、2012年に独立。現在は雑誌やブランドのビジュアルをはじめ、多方面で活躍中。最近は、疲れが取れやすくなると噂のアンダーウェアを、毎日着用中。
Outer:Barbour for MARKAWARE&ÉDIFICE TRANSPORT
Inner:COMME des GARÇONS
Pants: CELINE
Shoes:JJJJound × Reebok
-始めに〈Barbour〉のイメージから教えていただけますか?
西又:やっぱりもう、オーセンティックっていうことに尽きると思います。アイテムで言うと、やっぱりオイルドジャケットの印象が強いですよね。ただ、今日着たアイテムは、見た感じはオイルドっぽいのに、オーガニックコットンという。
-本作を実際に着てみて、いかがでしたか?
西又:オイルドじゃないとなると、かなり気軽に羽織れるなと感じましたね。かと言って、見た目はオイルドの気配もするから、いいとこどりというか。
-着心地やサイズ感はどうでしたか?
西又:インラインのものよりも大きく作ってあるから、ゆとりがありますよね。オーバーコート的な使い方もできるかなと。着丈もそこまで短く感じなかったですし、好みのバランスでした。
それと、表地がかなり高密度の生地なので、ちょっとの雨も全然平気だろうし、風よけにもなってくれると思うんです。昔からですけど、やっぱり機能的なものが好きなので、そういうギミックは心をくすぐられますね。
-西又さん流の着こなしのポイントも教えてください。
西又:ここ数年、ゆるいシルエットって多かったじゃないですか。でも、一昨年ぐらいから、ジャストサイズなムードも出てきてる。もちろん、ゆる×ゆるでも、全然いいいんですけど、そのムードも入れつつ、パンツはジャストのものを穿いて、しっかり締めてあげたって感じですかね。
-一般的にも、ジャストなサイズ感に戻りつつありますか?
西又:そうですね。オーバーサイズはオーバーサイズで、まだまだ全然ありだと思うんですけど、確実に戻りはじめていると思います。なので、今作も大きすぎないし、サイズによっては、ジャスト目にだって羽織れる。その辺のバランスを楽しめるのも、いいですよね。
1983年生まれ、埼玉県出身。甲斐弘之氏に師事し、2009年に独立。メンズファッション誌をメインに、広告やカタログなどでスタイリングを手がける。最近の移動はもっぱら「MATE」で、週2でサウナに通い中。
ーBarbourにはどういう印象をお持ちでしたか?
豊島:トラッドとか、クラシックとかっていうイメージが強いですよね。それと、個人的には、コーデュロイの襟とかサイズ感とかが、意外と合わせるのが難しいイメージもあって。ただ、今回の別注はリラックスフィットになっているし、オイルドじゃないので、普段のコートを羽織る感覚で、 そんなに考えずに着られるなと思いました。
Outer:Barbour for MARKAWARE&ÉDIFICE BEDALE
Shirts:Sans Limite
Inner:FYNELYNE
Pants: Levi’s®︎
Shoes:Le Yucca's × L'ECHOPPE
Cap:toteme
-合わせやすさも感じたと。
豊島:そうですね。インラインのものだと、ちょっと大きめのサイズにすると、袖が長すぎたりっていうのがぼくの場合あるんですけど、今回着させてもらったものは、その辺も考えられていて、現代的なシルエットになってました。素材もオーガニックコットンで、バリッとしていますけど、着こんでいくうちに馴染んでいくだろうし、その経年変化も楽しみですね。
-ほかに、今作で気になったポイントもお伺いしたいです。
豊島:カラーも独特だなと思って。黒がちょっとだけ褪せたような絶妙な色合いで、それも着やすさに繋がってるのかもしれないです。Aラインの感じも、すごくファッションっぽくなってるなと。
-着こなしのポイントも教えていただけますか?
豊島:別注のジャケットを主役にしたかったので、全身、ダークトーンですね。クラシックになりすぎないようにも意識しました。なので、デニムとかで、ちゃんと革靴履いてる感じとかがいいなと。身幅もあるから、レイヤードも楽しめましたね。
それと見た感じ、もっと重いのかなと思ったんですけどそんなこともなくて。肌触りも悪くないので、Tシャツの上からサッと羽織ってもいいかもしれないし、これからの季節はカットソーとか、真冬はもうちょっと着込んであげてもいいですね。3シーズンで着れるアイテムだと思います。
1996年生まれ、埼玉県出身。宇佐美陽平氏に師事し、2022年に独立。ブランドのコンテンツや雑誌のスタイリングをメインに活動する若手のホープ。サッカー好きで、特にスペインのリーガ推し。
Outer:Barbour for MARKAWARE&ÉDIFICE TRANSPORT
Shirt:USED
Inner:RICHARDSON x DAIDO MORIYAMA
Pants: USED
Eyewear:EYEVAN
Shoes:USED
Cap:SOLARIS&CO.
-佐藤さんは〈Barbour〉にどういう印象をお持ちでしたか?
佐藤:トラッドだったりオーセンティックな印象ですね。個人的にも昔からすごく好きで、スタイリングでもよく使わせてもらっているんです。
-今日のコーディネートについても教えてください。
佐藤:合わせるパンツはストレートやテーパードなど、スタンダードなシルエットの方がよりフィットすると思ったのですが、自分だったらどう着るかって考えたときに、個人的にすごいフレアパンツが好きなのと、ほぼ毎日革靴なので、そこのスタイルは変えずに、キャスケットをかぶって自分らしく着させていただきました。
-実際に着用してみて、いかがでしたか?
佐藤:インラインのものだと、全体的にもう少しコンパクトだと思うんですけど、今回の別注はゆとりあるシルエットで、丈も短すぎず長すぎず、絶妙なバランスだなと感じました。もちろん、Barbourが本来持っている無骨なかっこよさもしっかりありながら。
レイヤードもしやすくて、スタイリングに奥行きも作りやすいし、すごい汎用性の高いアイテムだなと感じました。自分のスタイルにも、違和感なく馴染んでくれましたし。
-ほかに、気になるポイントはありましたか?
佐藤:深めのオリーブと聞いていたんですけど、色も絶妙なニュアンスだなと思って。ワントーンで組んでも絶対かっこいいジャケットだと思います。モダンな感じで組んでも、キレイにまとまってくれそう。別注の相手がMARKAということもあって、品の良さみたいなものもしっかり感じられるのもいいなと思いました。
それと、着ていくうちに、かなり馴染んでいくんだろうなと思って。堅牢性もあるから、一生ものな気もしますね。
1981年生まれ、長崎県出身。橋本敦氏に師事し、2011年に独立。現在はファッション誌やブランドのカタログ、アーティストのスタイリングなどと幅広く活躍中。レコードと本の収集がライフワークで、時間を見つけては古本屋やレコードショップに繰り出している。
-早速ですが、着こなしのポイントからお聞かせください。
松川:最初にアイテムを見たときに、ちょっと自分のキャラじゃないなっていうのがあって、どう落とし込もうかなと思ったところが正直ありました。英国の、気品あるアイテムは普段はなかなか身に付けないので。
ストレートに行けば、ドレッシーに着こなすのがいいんだろうし、品を持たせたほうが様になるのかなって思ったんですけど、あえて 自分らしく着たいなと思って、アメカジをベースに落とし込んでみたという感じですね。
-たしかに、松川さんらしいコーディネートだなと感じました。
松川:“外す”っていう言い方も違うし、“抜け感”という表現ともちょっと違って、あくまで“自分らしく”みたいな、そんな感じですかね。
「この服はこうだから、 この方程式に当てはめる」みたいな、そういうバックボーンの持たせ方も好きなんですけど、モデルに着せるんじゃなく、等身大の人がこの服を買うわけなので、そういった時に、別にパーカを着て、キャップをかぶって、デニムの上からでもいいじゃないっていう。
-実際に着てみた印象はどうでしたか?
松川:MACKINTOSHって、勝手に硬い感じのイメージがあったんですけど、素材含めてすごく柔らかくて、いい意味でギャップがありました。あと、中にいくら着込んでもストレスがない作りになっていて、長いシーズンで着れそうだなとも思って。昨今のオーバーシルエットとか、ビッグシルエットの流れで作ってるというよりは、アウターとしての大きさを感じましたね。
-イメージしていたよりも、サイズ感も大きかったと。
松川:そうですね。別注ということもあると思うんですけど、全然リラックスして着ることができました。なので、ちょっとトラッドなものを敬遠していた人も、これであればさらっと着れるんじゃないかと思いますね。
1986年生まれ、埼玉県出身。五十嵐孝智氏に師事したのち、2011年に独立。カジュアルからフォーマルまで守備範囲は広く、数々のブランドや媒体でスタイリングを手がける。最近は昭和のアニメを見ながら、ファッションのインプットをしている。
-井田さんはMACKINTOSHのアイテムはお持ちですか?
井田:キルティングのものですけど、持ってますね。自分が初めて買った90年代後半の時期は、セレクトショップが全盛の時で、オーセンティックやトラッドなものが流行っていました。その中の一つにMACKINTOSHもあったイメージでした。
-今作を実際に着用してみて、いかがでしたか?
井田:メンズのインラインでは少ない、肩がドロップになったデザインを採用していて、新鮮でしたね。トラッドな雰囲気も残しながらですけど、やっぱり現代の形にデザインされ直しているものは、着やすいなと思います。
-コーディネートのポイントについても、教えてください。
井田:裾がパッチワーク仕様になったオーバーオールですね。あえて着崩すというよりは、自分の最近のムードな洋服にそのまま合わせるのがポイントだと思います。
-ほかに、どんな着こなし方がイメージできますか?
井田:普通にデニムにティンバーランドを合わせて羽織るのもありだし、スラックス×革靴とかでも合うと思います。形もステンカラーでベーシックなものだから、汎用性はあるのかなと。自分の好きなスタイルにも合うナチュラルさがいいと思いますし、それがいまっぽいですね。
あと、ボタンが本来であれば水牛ですけど、今作は金属ですよね。そこもちょっと、色気があっていいなと思ったところではあります。
-今日は井田さんらしい着こなしというか、着崩し方だなとも感じました。
井田:トラッドのものを着崩すみたいな着方はありますけど、別注のものだと、形がいまっぽくなっていたりするので、あえて着崩す必要もないですよね。だから逆に、トラッドに着てもいい。いい意味で、着こなしの幅があるアイテムだなと思いましたね。自分らしく、深く考えずに着ることが出来るベーシックなデザインは一着持っているだけで、重宝するんじゃないでしょうか。