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  • ジャーナルスタンダードファニチャーの 名品モノがたり。

    第二回「UNITED WALLPAPER」金丸力也さん 「WESTOVERALLS」大貫達正さん

    JOURNAL STANDARD FURNITUREのアイテムルーツを辿る連載企画、第二弾。
    今回登場するのは、1950年代に消滅してしまったアメリカの壁紙メーカーである「UNITED WALLPAPER(ユナイテッド ウォールペーパー)」の貴重なアーカイブを復刻させた金丸力也さん。そして、デニムを核としてワークやミリタリーを現代的に解釈するウエアを手がける「WESTOVERALLS(ウエストオーバーオールズ)」の大貫達正さん。この秋、JSFとトリプルコラボレーションした、ヴィンテージファン垂涎のインテリアをリリースします。コラボレーションに込められた思いと、印象的なエピソードについて語っていただきました。

    JOURNAL STANDARD FURNITUREのアイテムルーツを辿る連載企画、第二弾。今回登場するのは、1950年代に消滅してしまったアメリカの壁紙メーカーである「UNITED WALLPAPER(ユナイテッド ウォールペーパー)」の貴重なアーカイブを復刻させた金丸力也さん。そして、デニムを核としてワークやミリタリーを現代的に解釈するウエアを手がける「WESTOVERALLS(ウエストオーバーオールズ)」の大貫達正さん。この秋、JSFとトリプルコラボレーションした、ヴィンテージファン垂涎のインテリアをリリースします。コラボレーションに込められた思いと、印象的なエピソードについて語っていただきました。

    金丸 力也(株式会社リックプランニング代表)

    1970年生まれ。東京都出身。
    Wranglerの世界的なコレクター。
    内装業リックプランニングを営むクラフトマン。
    UNITED WALLPAPERのプロジェクトを始動。
    Instagram:@_united_wallpaper_

    大貫 達正(SANTASSÉ代表)

    18歳の時に原宿の古着店で販売を始め、やがてバイヤーに。
    28歳で独立し、デザイナーとしてのキャリアをスタート。
    WESTOVERALLSをはじめ多岐にわたって活躍。
    新たにSANTASSÉを設立し、今年3月に新店舗のSANTASSÉ MUNI をOPENする。
    Instagram:@westoveralls /@tasseionuki19801117

    東 由香里(株式会社BAYCREW'S)

    JOURNAL STANDARD FURNITURE/ACME Furnitureのバイヤー・デザイナー。 2012年に入社後、インテリアグッズの買付けやオリジナル開発を手がける。

    “幻の壁紙メーカー”が、アメリカンヘリテージに敬意を持つ日本人によって復刻

    ―――今回のコラボレーションは2022年、金丸さんと大貫さんが最初にタッグを組んだことがきっかけでした。その経緯を教えていただけますか?

    金丸力也さん(以下、金丸):普段は内装の仕事を本業にしており、正直な話、最初は「UNITED WALLPAPER(以下、UWP)」を本格的に復刻するつもりはなかったんですよ。きっかけは、達正くんのショールーム(サンタセッ ギャレリー)の内装の相談を持ちかけられたときでした。壁紙の提案の一つとして、カタログを見せたら「これ、めっちゃいい。ファッションじゃないですか!」と言われてびっくりして。

    大貫達正さん(以下、大貫):僕も元々アメリカンカルチャーが大好きで、UWPが実在した1920〜50年当時のカントリーハウスの壁紙がめちゃくちゃかっこよくて目についたんです。しかも、UWPのロゴもかっこいい。もう消滅してしまったことを金丸さんから聞いて、これは後世に伝えないといけないものじゃないかと思いました。僕自身、今“伝統の継承”をテーマにモノ作りをしている思いがあったので、フックアップしたいと。そこでまずは、金丸さんに商標権を取ってもらうところから始まりました。

    金丸:内装屋としてその発想はなかった。ロゴの良さも全然気づかなかったくらい(笑)。
    アメリカの家の壁は、昔からペンキで塗るのが主流でした。壁紙文化はその後も浸透せず、UWPは廃れてしまったのだと思います。でも日本では、壁紙はなくてはならないものですよね。根付いている文化だからこそ、あまり前に出過ぎず、使いたいように使ってもらいたいなという思いが最初からありました。まずは、達正くんが道筋を立ててくれたんだよね。

    大貫:つくばの喫茶店で熱弁しましたね(笑)。伝え方として、まず思いついたのはファッションでした。いきなりドンズバのインテリアだと「ふーん」と流されて終わってしまう気がして。WESTOVERALLSとUWPとトリプルコラボというかたちで、まずはファッションでロンハーマンと手を組み、次のステップでJSFと一緒に家具を作りたいなと。どちらも共通してファッション企業であり、ライフスタイルとしてインテリアを扱っている。UWPの良さをしっかり伝えられると思いました。ロンハーマンでは、当時のアメリカのDIY文化をオマージュして、UWPの2柄をのせたオーバーオールなどのアパレルをウィメンズとキッズで作りました。

    (左)UWPのカタログより。女性のイラストで壁紙DIYのメソッドを説明している。
    (右)1950年ごろのアメリカの家庭で常備されていた工具セット。

    UWPのカタログを見ると、イラストで女性がたびたび登場します。昔は女性も当たり前に家のDIYをしていたからですね。60年代のアメリカが舞台の映画でも、女性がカントリーハウスでペンキを塗っているシーンなんかを観ていたのでイメージはついていました。そこでウィメンズウエアにそのカルチャーをのせつつ、子供もお揃いの作業着でその手伝いをして・・・という家族のストーリーを描きました。おかげさまでコレクションはすぐに完売。そして次のステージとして、今回の家具作りに至ったというわけです。

    “本物”のヴィンテージが醸す、圧倒的なオーラ

    ―――UWPの魅力はどんなところにあると感じますか?

    金丸:改めて思うのは、パワーです。ヴィンテージ “っぽい” ではない、本物が放つオーラがありますね。それは、今みたいにPCで簡単に作れるものではなく、当時の作り手たちの思いが詰まった手間暇のかかったものだとわかります。誰もが感覚でヴィンテージだとわかることって理屈ではなく、時代が積み上げた説得力なんだと思います。

    大貫:先ほど女性のDIY文化に触れましたが、UWPはメンズライクでありながらウィメンズっぽくもあるんですよね。当時から、女性の心をつかむキャッチーさも重要なポイントだったと思うんです。ヴィンテージってメンズっぽい無骨なほうにイメージが向きがちですが、ここは大きな魅力だと思います。

    東由香里さん JSFバイヤー(以下、東):最初に展示会でUWPを見た時、半端ないオーラを感じました。家具にのせたら絶対かっこよくなるという自信は最初からありましたね。

    金丸:あえてプリントではなくジャカードで柄をのせたところが面白くもあり、大変なところでしたよね。

    東:ジャカードは7〜8色を用いて色の浮き沈みを作るので、イメージ通りに仕上げるために何十色という数の糸から選びます。さらに、家具は一生使うものなので生地強度がとても重要。強度のある生地に仕上げるのにとても苦労しました。1から作り直し、何度も修正サンプルを作って検証を重ねました。

    大貫:昔とまったく同じものは作れないという障害にぶつかりましたが、壁紙を生地におこして、さらに織りで再現したことがプラスの価値になりましたね。僕らのような小さな会社ではかなりコストがかかるところを、このように実現したのは3社コラボじゃないとできなかったことです。

    金丸:おっしゃる通りです。さらにこのジャカード生地を弊社でスキャンして、壁紙にしたんですよ。コラボがあったからこそオリジナルが進化して、新柄としてアップデートされた。むしろ、オリジナルを超えたとも思っています。

    大貫:スキャンの技術こそ、現代ならではの取り組みですよね。

    金丸:日本の重要文化財を保存するために使われている高性能の機械を使っています。

    大貫:UWPのアーカイブも立派な文化財ですからね。伝統工芸は残す意味があると思っています。トラディショナルをふまえて、時代によって変化しながら後世に残していく必要がある。

    東:今回の商品もまた、未来のヴィンテージになっていくんでしょうね。

    空間のアクセントに映える、パーソナルな一人がけソファ

    東:今回作ったアイテムは、あえて大きい家具ではなく1Pソファとスツール、クッションカバーです。すでにお持ちの家具にプラスアルファしやすいサイズを意識しました。小さくても十分アクセントになります。そして今回、家具と一緒にUWPの壁紙をシールにして販売します。

    金丸:化粧フィルムと呼ばれている塩化ビニールシートで、玄関やキッチンのドアをはじめ、自宅の好きなところに簡単に貼れるものです。手帳やケータイ、PCなどに貼ってもいいアクセントになりますね。

    東:ぜひ壁紙の面白さをお客さまに感じてもらいたいと、金丸さんにリクエストしました。

    金丸:購入した人に、貼ったところを写真に撮って投稿してもらっても面白いと思いますよ。たとえば僕の母は段ボールに貼ったり、嫁はシューズボックスに貼ったりしていました。シールを貼ることで、人に見られるところに置いていてもかわいいよねと。自分のライフスタイルに合わせて、気軽なDIYとして楽しんでもらいたいです。

    ―――今回はソファやクッションでしたが、次に作りたいものはありますか?

    大貫:サステナビリティの観点から、もういらなくて値段もつかない家具にUWPの壁紙を貼って、再び価値をつけるのはどうでしょう?新しいリサイクルのあり方を提案できそう。今って情報量が多いぶん、家具一つとっても何を買おうか困る人が多いと思うんです。そんな中でこうした唯一無二のものに大きな価値を感じるし、需要は絶対ある。余計な先入観などなく、いいと思えるものじゃないかな。UWPの確かな“本物”の価値に裏打ちされているし。

    アーカイブから採用したパターンはカウボーイ(左)とダマスク(右)の2柄。
    大貫さんはこの日、BODEのカウボーイ柄シルクシャツ、カウボーイ柄バックルのレザーベルト、蹄型のバックポケットデニムという、コラボの柄にリンクさせたコーディネート。

    金丸:僕もリサイクルに興味あります。ファッションでは古着を解体してリメイクしているけれど、企業として古い家具をリメイクして売っているところはまだ少ないんじゃないかな。最新の技術とUWPの柄で付加価値をのせて、捨てるはずだった家具を再利用する「再生家具」。今の時代に合っていますよね。

    東:まさに今回、店頭でもカラーボックスやスモールチェストにUWPの壁紙を貼って販売しようと考えています。

    大貫:会議室にあるようなパイプ椅子とかも絶対可愛くなりそう。次はプリントアイテムでやったら面白いですね。この企画はアイデアが尽きないね。

    東:それ、ぜひやりましょう!

    Vintage Wall Paper
    meets
    Furniture

    COWBOY

    1950年代ヴィンテージのウェスタンパターンをモチーフにしたカウボーイ柄。
    ヴィンテージ感溢れる色合いはそのままに、
    ジャカードファブリックで再現することにより立体感のある表情に。

    1950年代ヴィンテージのウェスタンパターンをモチーフにしたカウボーイ柄。ヴィンテージ感溢れる色合いはそのままに、ジャカードファブリックで再現することにより立体感のある表情に。

    DAMASK

    UNITED WALLPAPERの膨大なアーカイブから、トラディショナルなダマスク柄をピックアップ。
    貴重なオリジナルサンプルをもとに当時のクラシックな雰囲気のまま
    ジャカードファブリックにデザインを忠実に蘇らせました。

    UNITED WALLPAPERの膨大なアーカイブから、トラディショナルなダマスク柄をピックアップ。貴重なオリジナルサンプルをもとに当時のクラシックな雰囲気のままジャカードファブリックにデザインを忠実に蘇らせました。

    Information

    先行発売:
    2023年8月18日(金)~
    店舗:
    NEWoMan 新宿店
    発売開始:
    2023年9月8日(金)~
    店舗:
    渋谷店 / 自由が丘店 / 堀江店 / ACME Furniture目黒通り店 / BAYCREW’S STORE

    PHOTOGRAPH:YUMA YOSHITSUGU
    TEXT:CHIKAKO ICHINOI