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  • City & Pants.街とパンツ、
    神保町とカーゴ。

    City & Pants.街とパンツ、
    神保町とカーゴ。

    都市を形成するあらゆる街には、
    おしなべてその街に似合うパンツがある。
    街とパンツにだってそれぞれ特徴や個性、
    マナーやムードがあるわけだから、
    当然と言えば当然なのだけど。

    Photo:Daiki Endo
    Styling:Haruki Uchiyama
    Grooming:Nanako Yajima
    Model:Ame
    Text&Edit:Nobuyuki Shigetake

    神保町に似合うパンツ。

    “本の街”として知られる神保町がどのようにして今の姿になったのか。そのルーツは明治時代にまで遡る。諸説はあるが、周辺に位置する明治大学や中央大学の学生たちによる、教科書の購入→売却のループによって古書店街として発展していった。これがもっとも有力な説とされている。今となれば学術書からアングラ・インディペンデント系のZINEまで、多種多様な本が背(表紙)を並べる日本一の古書店街であり、東京においてもとりわけはっきりと“性格”を持つ街のひとつである。

    GRAMICCI × JOURNAL STANDARDのカーゴパンツ 15,400円、JOURNAL STANDARDのベスト 価格未定(※9月頃入荷予定)、EDIFICEのストライプシャツ 18,700円、NIKEの『DUNK HI』はスタイリスト私物

    何の気なしに神保町に立ち寄り、思いがけず荷物が増えてしまった。そんな経験をしたことがある人、多いのではないだろうか。気になるタイトルの文庫本を見つけた。資料として役立ちそうな雑誌を見つけた。最近好きになった写真家のアートブックを見つけた。理由は多岐にわたるだろうが、とにかく神保町は手ブラでは帰らせてくれない。そんな街には、どのようなパンツが似合うのだろう?

    <GRAMICCI(グラミチ)>と<ジャーナルスタンダード>のコラボレーションワークは長きにわたるが、街にもよく馴染んでくれそうなナイロン素材のカーゴパンツは、両者のらしさが程よい塩梅でミックスしているし、コンクリートみたいなグレーはスタイリングにどこか知的な印象をプラスしてくれる。両サイドには大きなポケットが付属しているので、文庫サイズならそれぞれ2冊ずつ、計4冊までなら携行OK。トーマスメイソンファブリックを使った<エディフィス>の定番シャツの上に重ねた<ジャーナルスタンダード>のベストも、いざとなればバッグの代わりになってくれる。

    神保町といえば、magnif。magnifは2009年に創業したヴィンテージマガジンに特化した古書店で、特にファッション誌、カルチャー誌のアーカイブについては、希少なものから大衆的なものまで、国内で横に並ぶ店がないほどのバリエーションを取り揃えている。すずらん商店街の中ほど、イエローのファサードが目印。(magnif:東京都千代田区神田神保町1-17)

    神保町クルージングで決して忘れてはいけないのが、矢口書店。大正7年創業、100年以上の歴史を誇る老舗の古書店は、映画・演劇・演芸を専門で扱っており、軒先のディスカウント・コーナーさえも個性に溢れている。個人的には、そういった点こそが、神保町の面白いところだと思っている。(矢口書店: 東京都千代田区神田神保町2-5-1)

    ちなみに神保町では、本の日焼けによる劣化を避けるために、古書店の多くが靖国通りの南側、つまり北向きに建っている、という話があるのだが、本当なのだろうか?

    100円コーナーから救出したのは、斎藤美奈子著『文学的商品学』。ファッションや食べ物といった9つのテーマをめぐって、 村上春樹から渡辺淳一まで、著名作家の作品に登場する”商品”の描かれ方に着目した、痛快無比な文芸評論。