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  3. 「こなれ」ってなんだ? #3. 無地のTシャツを考える。
  • WHAT IS KONARE?「こなれ」ってなんだ?

    #3. 無地のTシャツを考える

    WHAT IS KONARE?「こなれ」ってなんだ?

    #3. 無地のTシャツを考える。

    今日もどこかで、誰かが言う。
    「こなれてるね!」
    それ、意味分かって言ってます?

    Styling:Haruki Uchiyama
    Photo:Daiki Endo
    Grooming:Nanako Yajima
    Model:Lenny
    Text&Edit:Nobuyuki Shigetake

    こなれ【▽熟れ】

    読み方:こなれ

    1 食べた物がこなれること。消化。「―の悪い食べ物」
    2 物事を理解し習得した程度。「―の悪い文章」
    (デジタル大辞泉より)

    こなれ感

    読み方:こなれかん
    別表記:こなれ

    服飾業界で使われることの多い、無理せず着こなしているまたは着慣れている雰囲気を意味する語。
    「こなれ感」のある服はシンプルであることが多く、環境や体格に合った快適さも基準になることがある。 (実用日本語表現辞典より)

    薄手のコットンニットのように扱う。

    夏はTシャツ! Tシャツの季節だ! 着るだけでサマになる! ……そんな思考が停止したコピーを巷ではよく見かけるが、暑いからTシャツを着るのは当然のことだし、実際のところ、シンプルなTシャツ1枚でサマになるかどうかは着る人次第。とはいえ、メンズファッションにおいて、Tシャツ無しで夏を越すことは不可能である。言い切ってしまってもいい。だからこそ、どうすれば「こなれ」るのかを知っておきたいのだ。

    そもそもTシャツというアイテムの特性上、夏に着るにおいてはそこまで懲りようがないし、ワンツーコーデに終始してしまうのが関の山。であれば、少し工夫するのみで「こなれ」てくれそうだ。6月の東京の平均日中最高気温は26℃。暑い日も涼しい日もあるので確かに平均するとそれくらいかもしれない。朝昼晩の気温差を考えるとTシャツ1枚では心許ないので、肌寒い時期に長袖のシャツに長袖のコットンニットを重ねるのと同じように、半袖のシャツに半袖のTシャツを重ねる。

    <ジャーナルスタンダード>が<チャンピオン>とコラボレートして作ったTシャツは、言うまでもなくリバースウィーブ®であるわけだが、着目すべきは、色と大きさを特注した胸元の“Cロゴ”と、製品染めによる深みのある色出し。下に着たリーフ柄のシャツは1975年創業、イタリアを代表するシャツメーカーである<バグッタ>のもの。174センチのレニーくんがLサイズを着るとややオーバーサイジングだけれど、Tシャツの袖、裾から露出する柄を楽しむのであれば、むしろこれくらいのサイズ感がいい。

    合わせとしては足し算になるので、全身をアーシーなトーンで統一して、男くさくもミニマルにまとめる。とはいえシャツの上品さは活かしたいから、足元には<ジャーナルスタンダード>が<ジーエイチバス>に別注したブラウンとブラックのコンビローファーを。ハーフサドル仕様の『LOGAN』をベースに、ソールはライトウェイトラグソールに変更しているため、軽さとグリップ性、クッション性についてもいわゆるローファーのそれとは一線を画す。

    ぶっちゃけ着なくても良い。

    Tシャツは袖を通すことで衣服として成立するとばかり思っていたが、“着ない”という選択肢もあるのかもしれない。ローゲージのニットをプロデューサー巻きするように、シャツをたすき掛けするように、ロングスリーブのTシャツを腰巻きすることで、寒暖差に対応する利便性と、少しの「こなれ」をプラスすることができる。

    <ラブークル>のイージーパンツはそのリラクシンなムードが魅力であるが、足元がビーチサンダルだと途端に東南アジアの旅行者感が出てしまうので、<エンツォ・ボナフェ>のグルカサンダルを合わせて少しの緊張感を添える。同ブランドは先日、惜しまれつつもデザイナーが逝去したことも記憶に新しいところだが、革靴業界における巨匠であり、品質重視主義を貫いたボナフェ氏が残した有形無形は、あまりに大きな功績として後世語り継がれるであろう。

    話を戻して、腰に巻いた、アールグレイのような美しい紅色のフットボールTシャツは<テイクイット>のもの。1960年代~70年代のヴィンテージをデザインソースとしたこの1着は、表レーヨン・裏コットンのオリジナル生地を用いており、着たら心地よく、巻いたらどこか、上品な印象に。

    <エイトン>の数あるベストセラーの中でも特に白眉とされる、スビンコットンを用いた『SUVIN60/2 OVER SIZED T-SHIRT』をベースとした<エディフィス>の別注Tシャツは、大きく開いたサイドスリットがユーモラス。こちらの仕様は同じく<エイトン>でリリースされているウィメンズのTシャツがデザインの基づきとなっているのだが、メンズのアイテムへ落とし込むにあたって再構築された、絶妙なバランス感覚はさすがの一言。