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  3. EDIFICE BUYER RECOMMEND 「拡張性高いブランドの追求。EDIFICEバイヤーが考える次代の洋服へのアプローチとは。」
飽和するアパレル業界において、「今着たいもの」「これから着られるもの」を見極める力が個々に問われる時代となっている昨今。
SNSが流行しショップスタッフやバイヤーの思いが伝わりにくくなった今だからこそ、
改めてブランドに対するアプローチや制作意図などを発信し、EDIFICEの根幹を知ってもらいたい。
そんな思いを込めてこの春に登場するEDIFICE渾身のアイテムの中から4アイテムに絞って
EDIFICEバイヤー山本慎氏に検分してもらいました。
  • 「foot the coacher」

    本当の目的は、どんな洋服にでも合うマスターピースを提供したいということ。

  • ― そもそも別注に至った経緯とは?

    山本:FOOT THE COACHERのデザイナーである『竹ヶ原敏之介』氏とEDIFICEは過去に親交がある事と、現在EDIFICEでも大きく力を入れて取り組みを行っている「AURALEE」のシューズをデザインしているのが竹ヶ原氏という経緯もあり、今回の別注が実現しました。
    竹ヶ原氏が手掛けるブランド自体にはいくつかラインがあるのですが、このメインラインに別注ができることは本当にすごい事で、通常では考えられないほど希少性の高い事なんです。

    ― 具体的にどの部分が別注なのでしょうか?

    別注のポイントはインソール部分をオールブラックにしてもらった所です。
    変更箇所はその点のみですが、これほど完成された靴に手を施すこともないだろうと。むしろ、今多く見かける「スニーカーライクな革靴」というよりも「革靴をカジュアルダウンした革靴」といったテイストはこの他に見当たらなく、EDIFICEの得意とするスラックスなどのキレイ目なカジュアルボトムスを使ったスタイリングとの相性もバッチリです。

  • ― 今最も”EDIFICEらしいシューズ”なんですね

    そうですね。僕たちとしても移りゆく時代の中で、それでも変わらないモノがあると考えています。
    それは一種のマスターピースと呼べるモノで、今回の別注の目的はそんなマスターピースをお客様に提供したいという思いからでした。本当に履き心地がすばらしく、さながら”自分の為のシューズ”といった感覚に陥りますね。日本人の足に合うように作られているので当然なのですが、自分自身もその履き心地に心酔してしまい、プライベートで履くようになりました。

  • 「GRAMICCI」

    自分達が“本当に穿きたい”と思えるモノを。

  • ― もはや定番となったGRAMICCIへの別注ですが、特に今回はいつもと違うモデルができあがりましたね。

    そうですね。 その点が非常に重要で、もはや定番化してしまったモノに新たなアプローチを施すことが今回のテーマでした。その根幹となったのが「自分たちが今、本当に穿きたくなるようなシルエット」で別注すること。これこそが最適解だなという考えに至りました。

    ― それがワイドシルエットということでしょうか?

    そうです。ただ、いたずらに太くすれば良いという事ではなく、あくまでも大人の男性が穿いて”品”が醸し出せる、絶妙な太さを追求した結果になっていると思います。細すぎてもリラックスしにくく、太すぎると年齢よりも若く見えますからね。

  • ― なるほど。こだわったのはシルエットの部分のみでしょうか?

    いえ、実はあまり知られていないEDIFICEらしいこだわりがもう一つ。EDIFICEにご来店頂くお客様の中にはこのGRAMICCIのアイコンとも言えるウェービングベルトを垂らして穿くというスタイルに抵抗があるという方もいるとの声を聞いていて。このモデルではウエストの一番近い部分にひとつだけベルトループを付けてもらっていて、これによりベルトが垂れ過ぎないような工夫を施しています。こういった目立たないですが、気の利いた仕様って案外大事だったりするんですよね。

  • 「BARACUTA」

    様々なサイズをご用意するという事は、着用するすべての方をイメージするという事。

  • ― BARACUTAも昨シーズン非常に好評なモデルでしたね。今回ブラッシュアップされた部分を教えて下さい。

    昨シーズンのブルーを基調にした3パネルの裏地は絶妙なインパクトがあり、クラシックなブランドを良い意味でモダンにできたかなと思えたモデルでした。今回はそのモデルを踏まえて、トレンドのブラックで表現。さらにストライプもモノトーンに揃えることで統一感を出しました。ただこれだけだと昨シーズンのモデルに“あぐら”をかいているだけだと思い、更に新しい試み行っています。

  • ― 新しい試みとは?

    まずこのモデル自体、昨今のトレンド傾向も踏まえ、スリムフィットと呼ばれる細身のモデルから、クラシックフィットという程よくゆとりのあるベーシックなモデルに変更しているのですが、サイズ自体の展開をXXL相当のモノまでご用意し、全5サイズの展開としました。経緯として、オーセンティックなアイテムだからこそ、定番な着こなしではなく、時代性を加味してモダンにアレンジしたい。そういった自分達のスタイルに対する考えと、着用するすべての方をイメージし、様々な身長や体型によって着こなしを限定しない幅広いサイジングで提案したいという2つの考えがあったからです。なので、あえて大きめなサイジングで合わせて、ボトムスを細身にしてみる、などのチャレンジングな着こなしも非常に面白いのかなと思います。

  • 「ORIGINAL KNIT」

    サイズやカラーはお客様のクローゼットに馴染む事を前提にしたものであるべき。

  • ― 最後に選ばれたのはオリジナルのニットですが、バイヤーの山本さんから見た視点で選ばれたのでしょうか?

    はい、今回選ばせていただいた仕入れのブランド達と、今最も相性の良いオリジナルという事で選ばせていただきました。EDIFICEの企画陣が得意とするニットアイテムの中でも、さらにこだわりが感じられるアイテムなんです。

    ― 幾つものニットを見てきた山本さんが感じた、そのこだわりの部分を教えて下さい。

    まず、一見コットン100%かと思わせる風合いながら、化学繊維を織り交ぜることにより生まれる、発色の良さや色糸のミックス感が特徴です。そして、この色糸に関してはすべてEDIFICEでカラーパターンを何度も検証して生み出された色の配合でして、トライアンドエラーを繰り返しながら出来上がった渾身のミックス感が感じられます。

  • ― 確かに明るい色も入りながら全体のトーンは落ち着いている、とても着やすそうな色ですね。

    そう思って頂くのって、やっぱりお客様のクローゼット、ワードローブをいかに想像してモノ作りができているかという視点に繋がると思っています。ただ単純に「きれいだから」という理由で色を選ぶのではなく、着る人の顔を思い浮かべて全体のトーンを決めていく。それができているという点で見てもとても魅力的なアイテムだと思いますね。

    ― オリジナル商品から得られるインスピレーションみたいなものもあるのでしょうか?

    はい、オフィスでもモノ作りをしているチームは比較的近くに集められているので、常に意見交換ができる環境です。例えば今回のニットに化学繊維を混紡している意図も、元々スポーティなスタイルを表現する際に使いやすいような意図で考案されています。これは仕入れブランドにも共通する考えですので、常に刺激をもらいながらアウトプットに活かせていますね。

  • ― ありがとうございました。今後入荷してくるアイテムも楽しみですね。

    個人的にはどのアイテムもそうですが、“今の気分”を表現しないといけないと思っています。いまや同じような商品が市場に並ぶ中で、独自性、単一性というものが徐々に出しにくくなってきている時代。その中でいかにEDIFICEの商品を選んでもらうか。その答えは「ストーリー」を感じるかどうかだと思っています。背景のあるものには「深み」があり、「着る意味」を見いだせます。今後入ってくるアイテムももちろん、これから自分が携わるアイテムすべてにおいて、この「ストーリー」を感じる表現は続けていきたいですね。

  • 山本 慎 | MAKOTO YAMAMOTO
    2010年よりセレクトショップ「エディフィス」にて販売員として入社。以後2013年にバイヤーに就任し、国内外を飛び回る日々を送る。インスタグラムでは日々の気になったモノを随時更新中。

    Instagram : @tokoma.y