
What’s Maika Loubté wearing björk?
1993年にソロデビューして以降、特定のジャンルに属さず、様々なアプローチで音楽を表現している稀有なアーティスト・ビョーク(björk)。唯一無二のサウンドスケープを世に発信したり、アクティブパーソンとして環境問題や女性の権利についてメッセージを届けたり、その活動は多岐に渡る。そんな彼女のアーカイブフォトにフィーチャーしたシリーズの第三弾が、ジャーナル スタンダードより登場。今作はビョルン・オプサールというノルウェー出身の写真家が、1995年にビョークの名アルバム『Post』のツアー用ポスターに撮影した写真を含む計3作品をスウェットに落とし込んでいる。そして今回、ビョークのファンであるアーティストのMaika Loubté(マイカ・ルブテ)が着用したファッションビジュアルとインタビューを公開。ビョークとの出会いや自身の音楽感、最新アルバム『Lucid Dreaming』のことまでたっぷりと語ってもらった。
Photo_Takako Noel
Hair_Katsuyoshi Kojima(TRON management)
Make-up_YUKA HIRAC(VOW-VOW)
Model_Maika Loubté
Edit_Ryotaro Miyazaki

What’s Maika Loubté wearing björk?
1993年にソロデビューして以降、特定のジャンルに属さず、様々なアプローチで音楽を表現している稀有なアーティスト・ビョーク(björk)。唯一無二のサウンドスケープを世に発信したり、アクティブパーソンとして環境問題や女性の権利についてメッセージを届けたり、その活動は多岐に渡る。そんな彼女のアーカイブフォトにフィーチャーしたシリーズの第三弾が、ジャーナル スタンダードより登場。今作はビョルン・オプサールというノルウェー出身の写真家が、1995年にビョークの名アルバム『Post』のツアー用ポスターに撮影した写真を含む計3作品をスウェットに落とし込んでいる。そして今回、ビョークのファンであるアーティストのMaika Loubté(マイカ・ルブテ)が着用したファッションビジュアルとインタビューを公開。ビョークとの出会いや自身の音楽感、最新アルバム『Lucid Dreaming』のことまでたっぷりと語ってもらった。
Photo_Takako Noel
Hair_Katsuyoshi Kojima(TRON management)
Make-up_YUKA HIRAC(VOW-VOW)
Model_Maika Loubté
Edit_Ryotaro Miyazaki
ーJOURNAL STANDARDが取り組んでいるビョークのフォトコレクションシリーズは今回で3回目を迎えます。Maikaさんは以前からビョークのファンということですが、出会いについて教えてください。
前回のTシャツは購入させていただきました! ライブでも着たことがあります。スパイク・ジョーンズという映画監督の作品を集めたDVDがあって、その中に「It's Oh So Quiet」という曲のMVが収録されていました。ミュージカル調のもので、すごく不思議な感覚になったんですよね。多分20歳ぐらいだったと思います。それがきっかけでビョークの存在を知りましたね。あと、ミシェル・ゴンドリーがディレクションしたMVも素晴らしかった。
ー実際にビョークから影響を受けたことはあるんでしょうか。
初めて聴いたときの衝撃はすごかったですね。これまで体感したことのない音楽というか。ただ、うまく言葉で説明できないんです。ガシッと心を掴まれた感じというか。ビョークってアイスランド出身で、英語に独特の訛りがあるんです。ネイティブの綺麗な発音で歌わなくても、その人自身のオリジナリティを表現できるっていうことは彼女から学ぶことができました。いかにも本場っぽい曲を作るより、自分の個性を優先したほうがいいなって。
ーなるほど。曲を作る上での指標みたいな感じなんですかね。
指標という存在ではないかもしれないですね。彼女を目指しても、到底及ばないですし。ただ、ビョークの型にはまらない表現の自由さだったり、英語圏の人が書かなそうな詩を書いたりするボーダーレスなスタイルが、とてもクールなんです。わたしのキャパシティを広げてもらった感じがします。
ーMaikaさんが曲作りをする上で、基盤となるジャンルは設けているんでしょうか。
自分がアウトプットしたい音楽というのは日々変化するので、特にジャンルなどは考えていないかもしれないです。いつも自分に正直でいるようにしていて、常に感性は大事にしていますね。音楽的な冒険を優先したいから、こういうアーティストだからこのジャンルの曲を作ろうとはならないです。また同じような曲調のものも作らないようにしてます。なので過去の楽曲を改めて聴いてみると、若干の違和感があるんです。このビジュアルの写真を撮っていただいたTakako Noelさんが撮影中に数年前の曲をBGMとして流してくれたんですが、スタイルもいまと違っていて恥ずかしかった(笑)。
ー確かに照れていましたね(笑)。これまで触れてきた音楽のバックグラウンドについても聞かせてください。
もともと5歳からクラシックピアノを習っていて、20歳ぐらいまで続けていました。その裏ではポップスに憧れがあって、趣味程度で作曲をしていたんです。14歳のときに通っていた学校のクラスにとっても歌の上手い子がいたので、楽曲提供もしたり。あとは両親が音楽好きっていうのも、のめり込んだきっかけのひとつです。
ーMaikaさんは日本やフランス、香港で生活をされていたそうですが、現地ならではの音楽体験とかもありましたか?
幼少期のことだったので、現地の音楽に触れる機会はあまりなかったかな。両親の影響でビートルズを聴いたり、当時流行っていたJ-POPを聴いたりして、ポップスへの知見を広げていった感じですね。
ー日本のどういうアーティストの曲を聴いていたんですか?
結構いろんな方の曲を聴いていましたよ。例えば宇多田ヒカルさんとかスピッツとか。
ークラシックからポップスに傾倒し、それから現在のエレクトロへ移行したのはいつぐらいですか?
電子音楽を作るようになったのは、香港から東京に引っ越したタイミングです。実家の近くにハードオフがあったんですよ。そこで激安のアナログシンセサイザーを購入したことがきっかけで。自分の満足する音源を完成させようという気持ちの高まる日々が続いて、ひたすら制作していました。
ー普段の楽曲制作をする上でのインプット方法について教えてください。
様々な音楽を聴いて、それらが体内に蓄積していったところで新たな音楽が生まれることが多いです。
ー最近はどんなアーティストを聴いているんですか?
去年にアルバムを出して以降、クラシックをよく聴いていますね。最近だとバッハとか(笑)。あとはゲームのサウンドトラックとかも多いですね。ゲームクリエイターのトビー・フォックスさんの作品はかなりリピートしています。
ーかなり幅広いジャンルの音楽を聴くんですね! オフの日はどのように過ごしているんですか?
RPGゲームが大好きで、永遠とプレイしています。いつかはゲーム配信もやってみたい! じつは専用の機材も買い揃えていて(笑)。それと料理も好きなので、ほぼ毎日作ってますね。ストレス解消にぴったりで、和洋問わず作っています。
ーコロナが始まって、今年で3年目に突入します。最近のMaikaさんの音楽活動について教えてください。
ライブをする機会はめっきり減りましたよね。それって、アウトプットする場が減ったというよりも、インプットする場が減ったなと思うんです。
ーそれはどういうことですか?
自宅で黙々と音楽を聴くことだけがインプットではないのかなって。ライブを観に来てくれるお客さんの熱量や、フェスやイベントで一緒に出演するアーティストの生歌からも得られるものはたくさんあると思うんです。貴重な機会がコロナの影響で減ってしまったのは、とてもやるせないです。ーコロナ禍で需要が増えた配信ライブに関してはいかがでしょう?
それはとてもいいコンテンツだなと思っていて、わたしも不定期でやっています。チャットを通じて、ファンの方とも交流できるし。そしてこの状況だからこそ、アコースティックセットにもこだわっています。他のアーティストの方の配信を見た際に、トラックで歌っているのを聴いてみて、もどかしさみたいなものを覚えたんですね。まだコロナが始まって、それぞれが試行錯誤をしていた段階だったんですが。
ー昨秋に約2年ぶりとなるアルバム『Lucid Dreaming』をリリースされましたね。コンセプトに“明晰夢”が掲げられています。
そうなんです。頻繁にそういう夢を見るわけではないんですが、2年くらい前に立て続けに見たときがあって。意味不明な夢の中に、不思議といいメロディが落ちているんですよ。それをみんなにも共有したいなと思って、このアルバムに落とし込んだんです。
ーそれは自分の脳内で作曲しているってことなんですかね?
それについては答えが分からないんです(笑)。脳内で創作しているのか、それとも別の何かへアクセスしているのかというのは不明で。調べたところ、人それぞれで夢の構造も違うみたい。
ーアルバムは14曲収録されていますが、“明晰夢”から作った曲はどれに当たるんですか?
インストゥルメンタルに該当する4曲です。例えば「Demo CD-R From the Dead」っていうタイトルの曲があるんですけど、それは夢の中で流れたメロディを基に作っています。直訳すると“死体からデモCD-R”っていう(笑)。
内容を簡単に話すと、1人で自宅で過ごしていたら、ベランダのプランターに男性の変死体が転がっていたんです。急いで警察を呼んで、刑事さんたちが現場を調べていたら、その遺体は若いバンドマンっていうことが分かって。遺体を搬送する際に、なぜかCD-Rが出てきたんです。1人の刑事さんに「これを再生できる機器はありますか?」って聞かれて、家にあったプレステ2で再生したんです。そしたら、シューゲイザーみたいなノイズがザーッて流れて。その後に流れてきた音源がめちゃくちゃよかったんですよ。夢から覚めた後、すぐにボイスメモでメロディを記録しました。ー他にもTempalayのAAAMYYYさんをゲストに迎えた曲も収録されていますね。
はい。2017年ぐらいからライブやイベントで一緒になることがあって、お互い認識はしている感じでした。それで彼女のソロアルバム『BODY』を聴いて、すぐにファンになって。感想をDMで伝えました(笑)。いつか一緒に曲を作りたいなと思っていて、今回わたしからオファーしたんです。以前にAAAMYYYとウェブメディアで対談をさせてもらったんですが、本人もわたしのファンだったと聞かされたときはびっくりしましたね。とても光栄ですし、すごく奇跡だなと感じました。
ーまさに相思相愛ですね。『Lucid Dreaming』の1曲目は、水に潜る音からスタートします。それ以外にも水を連想させる歌詞が多く登場しますが、理由はあるんですか?
夢とは別に水が裏テーマだったりするんです。宮沢賢治の『ながれたり』っていう短編の詩があって、そこからインスピレーションを受けて制作した「Nagaretari」という曲も当てはまります。作中では川の流れの中で、人が逆らえない水の力に押されながら、死に向かっていくことを描いています。
ーアルバム全体を通しても、“生と死”にリンクしているものもありますよね。
川の流れと同様に、時の流れには誰一人として抗うことができないんです。そういったどうしようもない儚さだったり茫然とした感じを汲み取り、『Lucid Dreaming』を制作しました。
アルバムの7曲目に入っている「5AM」も祖母との別れについて歌っています。自分の中で死を受け入れることができなくて、明け方まで眠ることができなかったんです。その気持ちを曲として表現したかったんですが、うまくまとめることができなくて、作詞は弟に依頼したんです。身近な存在の方が、わたしの想いを代弁してもらえるかなと思ったんです。ただ、死についてはマイナスの側面でなく、穏やかなものとして届けたかった。
ー最後になりますが、2022年のビジョンや今後の展望について教えてください。
去年の秋にアルバムを出したので、それのリミックス盤はリリースしたいなと思っています。あとはアーティストとのコラボレーションとかもしたいかな。ただ、いい曲を作るにはたくさんインプットも必要なので、その時間も作りたいです。あとは告知になっちゃうんですが、去年末に表参道のWALL&WALLで開催した100人限定のライブ映像を公開したので、みなさんにぜひ観ていただきたいです!
Spotify
Hyper-ballad
▼Maika's comment
10年ほど前に、ビョークを知るきっかけになった曲のひとつです。90年代を知っている方にとっては言わずと知れた名曲だと思いますが、初めての方にもおすすめしたい、大好きな曲です。中盤以降の張り裂けそうなヴォーカルに、胸を痛ませながらずぶずぶと感情移入して聴いていました。重低音のベースが肝なので、イヤホンを通して爆音で。Venus As A Boy
▼Maika's comment
一見穏やかそうなのに、奇妙な浮遊感。MVは唯一無二ですね。この頃のビョークのビジュアルはポップで、みんな大好きなんじゃないでしょうか。わたしの周りにも好きな人が多い曲です。jóga
▼Maika's comment
スケールが大きいのに、痛いほど感情に訴えかけてくる不思議な曲だと思います。ストリングスと、破裂しそうなビートが対比的。美しさと荒々しさの二面性。穏やかなのに、自分で自分を追い詰めていくような焦燥感をひしひしと感じる曲ですね。心酔して聴いていました。Hidden Place
▼Maika's comment
進んで自分の殻にこもりたくなるような、ミステリアスな気持ちに。この曲は、ダウナーな気分を肯定したいときに良さそうです。ダークな曲に需要があるのは、理屈じゃなく、誰しも心の闇に引っ張られてしまうときがあるからでしょうか。Declare Independence
▼Maika's comment
ビョークの押さえようのないエネルギーが、脳天にぶつかってくるような曲。衝突事故寸前って感じです。政治的メッセージの強さと凶暴性が共存していて、個人的には元気なときじゃないとこの曲を聴かないです。ただ、目を背けてはならない気もしていて。特にMVは必見です。Utopia
▼Maika's comment
2017年のアルバムからピックアップしました。フルートと電子音とビョークの歌声が、アンビエント的に響いてくるなあと思います。初期の頃とは全然違う音楽性で、スケールの大きい母性と魂の自由さを感じることができます。現在のビョーク、何にも縛られていなさそう。
Maika Loubté

- PROFILE
シンガーソングライター/プロデューサー/DJ。2016年にソロ名義で活動開始。幼少期から10代を 日本、パリ、香港で過ごし、現在は東京を拠点としている。ヴィンテージアナログシンセサイザー に出会い、エレクトロニックミュージックの影響を受けたスタイルで音楽制作を行う。国内外のフェ ス出演、アーティストやCMへの楽曲 提供等でも活動中。2019年に2ndアルバム『Closer』を配 信、LP(日本盤およびEU/UK盤)としてリリース。 2020年10月発表の「Show Me How」が、マツダの新型車「MAZDA MX-30」のテレビCMのコラ ボ曲として大々的にフィーチャーされ、自身もCMに出演し、一躍注目を浴びる。2021年10月 ニューアルバム『Lucid Dreaming』をリリース。
Web:https://www.maikaloubte.com/
TikTok:https://www.tiktok.com/@maika_loubte▼Information
Digital Album『Lucid Dreaming』
発売元:WATER RECORDS
配信URL:https://lnk.to/ML_LucidDreaming
『Lucid Dreaming』
Tracklist :
1. I Was Swimming To The Shore And Heard This
2. Flower In The Dark
3. Mist
4. It’s So Natural
5. Spider Dancing (Album edit)
6. Demo CD-R From The Dead
7. 5AM
8. Kids On The Stage
9. Broken Radio
10. Show Me How (Album edit)
11. Lucid Dreaming
12. System
13. Nagaretari
14. Zenbu Dreaming