

唯一無二の色彩表現を魅せる陶芸作家の竹村良訓氏とjournal standard Furnitureのコラボレーションランプを初めて世に送り出します。
2021年6月26日(土)よりjournal standard Furniture日本橋とベイクルーズストアにて販売を開始します。
今回は工房にお邪魔した様子と、作品制作のこだわりなど語ってくれたインタビューとともにご紹介します。




ー竹村さんが陶芸家になったきっかけを教えてください。
もともと美大で木工や漆を学んでいて、その後は大学院で文化財保存修復を学んでいました。陶芸は美大在学時に陶芸サークルで始めたんですが、それを機に陶芸科に参加して、大学院の時に窯やろくろを購入して制作を始めました。師匠はいなくて、すべて独学です。サークルで窯焚きや釉薬作りを仲間に教えてもらったりしながら制作していました。自由なサークルだったのでカリキュラムに沿った習得法ではなく興味の向くままに技術を習得していったという感じですね。それを続けていくうちに自分の作品に向き合うことになって自然の流れで陶芸家になっていったんです。初めて個展を開いたのは大学院を卒業して2年目の頃です。先輩が個展をやっていたギャラリーに行ったら、そこで個展をやらせてもらえるようになりました。

ー竹村さんの作品といえばカラフルな彩りが特徴的ですが、この作風に至った経緯は?
30歳前後までは試行錯誤して悩みながら、いろんな作風で制作していたんです。真逆の渋いものやシンプルなものを作っている時期も経て、今の作風に至りました。私は一点ものの制作が多く同じものをあまり作らないので、作風の体現性がない制作をしていると思います。同じ作品の大量生産には興味がなくて、自分はデザインだけして自分以外の職人さんたちの手でみんなで作るというやり方は面白くないと思うんです。自分で研究することが好きで、常に新しいことへ挑戦したいという思いがあります。だから新しい技法が増えていきます。昨年からは新たに練りこみを始めたり。今のこういうやり方が自分にとっては作りやすいんです。

ー今回の作品を作ろうと思ったのはなぜですか?
今回のスタンド型の照明は何年か前からやりたいと考えていたんです。でも照明器具なので陶芸家の自分だけでは完結できない。協力してくれる方がいたらいいなと自分の中に長く宿題としてあったのですが、今回ようやく実現しました。

ーカタチの発想はどのように思い浮かぶのですか?
カタチは作りながら考えていきます。寝っ転がりながら「こんな感じ?」といたずら描きをしながらイメージを膨らましていきますね。デザインするというよりは「出来るのかな?」と想像しながら作り方を考えます。細かいカタチはろくろをひきながらその場で作って、色も形ができてから考えていく。その場に立つまでは考えは無の状態ですね。

ー作品にネームが入っていないのはなぜですか?
私は全ての作品に名前を入れないですね。作風を一目見て誰の作品か気づいてもらえるなら記名は必要ないと思います。名もないビンテージ品のようなイメージで作っているんです。誰がどこの国で作ったのか分からない、そんな雰囲気が出ているものにしたい。出所不明、作者不明のものってむしろ面白いから。何十年、何百年経った時に自分の作品もそうなっていたらいいなと思いますね。
そう思うようになったのは大学時代に文化財保存修復を学んでいた経験があるからです。修復をやっていた頃に名もない作品を預かっていて、誰が作ったのか分からない本来の流通価値がないもの、だけど所有者にとっては修復してまで残したいほど愛着がある、そういうものを目にしていました。だから自分の作品も名前なんか入れなくたって、持っている人が本当に愛着を感じて子や孫に受け継いでいってくれたらいい、なんてことを妄想しています。
でも実は過去に作品にサインを入れて後輩に見せたこともあったんです。そうしたら「めっちゃダサいからやめろ、こんなならサインなんて無い方がいい」と言われてやめました。笑


ー今後、挑戦したいことはありますか?
陶芸品には可能性がたくさんあります。道具として使えるだけでなく、飾ることもできる。でも自分の作品は美術品みたいに手に触れないものというよりは暮らしに溶け込んでいてほしいし、それでいて大事にもされたい。いろいろと陶芸品のいいとこ取りをしたくて今の作品を作っています。
ちゃんと手に届くアートのジャンルもあるし、今回のような道具としての使い道がはっきりしているインテリアのジャンルもあるし、食器じゃないものもいいし家具とのコラボもしてみたい。陶芸の可能性を感じながら、生活の中に溶け込む作品をこれからも作っていきたいですね。



プロフィール
竹村良訓さん
釉薬を追求し、多くの色の中から、そのフォルムにあうぴったりの洋服をみつけるように、その形を美しく彩る器づくり。
同じものはなく唯一無二の作品です。
1980
千葉県に生まれ
1999
武蔵野美術大学 工芸工業デザイン学科 入学本科で木工(&漆芸)を専攻する傍ら、サークル活動で陶芸に出会う。
2003
同校 卒業
東京芸術大学大学院 保存修復学科(工芸)入学
文化財修復を修め、同時に陶芸学科で古陶磁の研究・ 復元制作にも努める。在学中に漆芸技法の応用による陶磁器・漆器修復の仕事をはじめる。
2005
同校 修了
以後、展示多数
2008
陶芸教室【陶房『橙』】を開く
現在
陶芸作家、陶芸教室経営、修復家として活動中