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  3. WEAR THE NEW STANDARD 新しい日常を、新しい服と。vol.3 働く男のローカルライフに、上質なアウトドア&ワークウェア
  • vol.3
    働く男のローカルライフに、
    上質なアウトドア&ワークウェア
    仕事のスタイル、移動手段、住む場所、家族と過ごす時間…etc.
    ライフスタイルの変化によっていろんなコトがミニマライズされている
    今こそ、必要なのは自分の暮らしとしっかり向き合える「服」。
    そこでこの秋冬、JOURNAL STANDARD relumeでは新しい日常を
    より良く過ごすための「ニューノーマル・ワードローブ」の数々を提案。
    連載第3回のキーアイテムは「アウトドアウェア」と「ワークウェア」。
    かつて暮らした東京を離れ、豊かな自然に囲まれた地元・岐阜で大切な
    家族とともに新たなキャリアにチャレンジしている纐纈(こうけつ)隆士さんの
    ローカルライフに焦点を当てながら、仕事や生活と直に繋がる
    冬のアウトドア&ワークウェアをピックアップしました。
  • 大学進学とともに上京し、在学中から好きなファッションの道を志して都内のセレクトショップなどで販売員をしていた纐纈さん。そんな彼が数年前、生まれ育った岐阜県恵那市に戻った理由は、曽祖父の代から続く建築業を継ぐため。帰郷後に地元で一から専門技術を学び、現在は設計士である両親とともに一級建築士設計事務所「ミノキビレッジ」を切り盛りしながら自ら設計・施工監理・大工を担当している。

    写真はミノキビレッジの作業場に併設されたオフィススペースで、図面や資料製作に精を出す纐纈さん。この日の仕事着に選んだのはレリューム限定リリースとなる「アブガルシア」のフリースジャケット。フィッシング愛好家たちの間で言わずと知れた大手釣り具メーカーが展開するブランドだけに保温性、軽さ、通気性を確保する裏地のメッシュなど機能面の信頼性は十分。それでいてオーバーサイジングや落ち着いたカラーリング、大ぶりのフラップポケットなど現代的な要素が盛り込まれているので野暮ったく見えないのも特徴だ。

    「ボリュームのあるボアのフリースですが、デザインがシックなので急な来客や打ち合わせが入ってもこのままで対応できるところが魅力的ですね」

  • この日はミノキビレッジで設計・施工を手がけた住宅のアフターチェック。すでに居住するお客さんと接するため、アウターは中綿入りのフーデットコートをチョイスして防寒だけではなく見た目のスマートさも印象づけて。こちらも「アブガルシア」のもの。保温性に優れているだけでなく、フィッシングウェアならではの立体的パターンが袖の可動域を広げているので非常に動きやすく、また表面には3層構造の防水生地を採用しているため雨や雪にも強い。

    「ミノキビレッジのモットーはお客様に『最高に自己満足な家』を造っていただくこと。そのためコミュニケーションや信頼関係は何より大事にしていますから、当然ながらお客様にお会いする際は機能最優先であったとしても最低限きちんと見えるアウターは必要です。また工務店の仕事ってどうもねじり鉢巻をした大工さんが気難しそうに仕事をするイメージがありますよね。実際に僕自身もこの世界に入るまではそう思っていましたから。そういった建築業特有の昔気質の堅苦しさを、服装などでも少し柔らかく見せてきたいなとは考えています。その点でこの中綿のコートはとてもバランスが良いように思います」

  • 木材店での資材選びも当然ながら良質な住宅造りに向けて重要な仕事になってくるそうだ。ここでもコートタイプのダウンをチョイス。アウトドアシーンで確かな存在感を示すブランド、「スノーピーク」のボリューミーなリラックスシルエットのダウンコートは、表地に耐久撥水加工が施されたリサイクルナイロンを採用し、中身も“Green Down”と呼ばれるリサイクルダウンが用いられるなど環境に配慮したサステイナブルな仕立てが特徴。またシンプルなデザインの中に、大容量のユーティリティポケットや中身がハンドウォームポケットになった脇のコンシールファスナーなど日常使いに便利なディテールも多数散りばめられている。

  • 休日は愛車のジープ・グランドワゴニアで、趣味のサーフィンや子供とのアウトドア遊びに出かけることもしばしば。イエローのダウンジャケットは、滋賀県米原市発の国産シュラフメーカー「ナンガ」が生産している名作「滋賀ダウン」とレリュームによるコラボレーションアイテム。760フィルパワーをほこるヨーロッパ産ホワイトダックダウンを中に備え、表面には防水透湿性に優れたポリウレタンコーティングが施されたハイスペックアウターながら、それを感じさせないクラシックなデザインがどこか纐纈さんのローカルライフとの親和性を高めている。

    「ファッションの世界で働いていたこともありますから、やはり洋服は好きですね。田舎でのローカルライフだからこそ、そこもしっかり生活に取り入れてどんどんシーンに合わせたアイテム選びやコーディネートを楽しんでいきたいと思っています。それに仕事でも、例えば『今日は作業場での大工仕事がメインだからアメリカ製のワークウェアやジーンズを仕事着にしよう』などといったように、環境に合わせてどんな服を選ぼうかと考えること自体が楽しいことですし、それが仕事に向かうテンションを高めてくれたりもしますよね」

  • 自宅からミノキビレッジの作業場へ向かう途中の山あいにて。ここには纐纈さんが幼い頃から慣れ親しんだ、木曽川の源流がもたらす恵那市の豊かな原風景が今も変わらず広がる。着用したのは、アメリカンアウトドアの王道「シエラデザイン」の別注ダウンジャケット。コットン60%・ナイロン40%の通称「60/40クロス」を低圧窯で長時間かけて製品染めを施しているので、ダウンの膨らみと生地の撥水性を損なうことなくニュアンスのきいたカラーリングが実現。壮大な自然環境、そして都市生活の両方にフィットするモダンクラシックなデザインが魅力だ。

    「高校生の頃には一日でも早く外に出たいと思っていましたが(笑)、やはり東京で生活をしてみてこの土地の魅力を再確認したところはあります。こうして帰ってきて、豊かな自然に囲まれた環境で好きな仕事をしながら暮らせることがいかに自分と家族にとって幸せなことかを日々実感していますね。また、逆に離れたからこそ、住んでいた当時は気づかなかった東京の良さも見えてきた感じがしています。たまに展示会などで東京へ行くといい刺激を受けますね」

  • 最後はミノキビレッジの作業場にて、機械で一本一本丁寧に木材を削る纐纈さん。ニューヨーク・ブルックリン発のワークブランド「SMITH'S」に別注したフリース素材のオーバーオールは、アメリカンワークウェア特有のオーセンティックさはありながらもファブリック選びやシルエットで時代性にマッチしたデザインにアップデート。温もり感のあるフリース素材が、冬場のキャンプやアウトドア遊びへの順応性も高めている。右下の写真は、纐纈さんと、事務所の代表を務める父・守さん。

    ちなみに、実は「ミノキビレッジ」という事務所名は纐纈さん自身がここ恵那市飯地町に帰ってきてからつけた名称だそう。どんな仕事であっても時代に寄り添ったモダナイズが必要という彼の考えのもと、ローカル工務店としてのあり方や仕事の発信のし方にも彼らしい工夫が凝らされている。

    「カタカタ、ひらがな、ローマ字、何が良いかといろいろと考えた結果、『ミノキ屋』という創業時の屋号を復刻しつつ、豊かな自然、山の上、ファミリー的な雰囲気などを連想させる『村』の英語を掛け合わせて『MINOKI VILLAGE』にしました。ロゴデザインは知人のデザイナーに起こしてもらいました。またこうして田舎で、真面目かつおもしろおかしく働く姿を発信することで、建築業や家を造る楽しさをもっと知ってもらいたいと思って事務所のインスタグラムも始めました。うちは代々、設計からデザイン、施工まで家造りの工程を1から10まで全て自分たちで行うオリジナルの工務店ですので、『ミノキビレッジに頼んだらなんか家造りを一緒に楽しめそう!』と思っていただけたら嬉しいですね」

  • 纐纈隆士Takashi Kouketsu

    1989年岐阜県生まれ。東京都内の大学卒業後、大手セレクトショップに就職してショップスタッフとして働く。結婚を機に地元である岐阜県恵那市に戻り、家業である建築業を一から学ぶ。現在は一級建築事務所「ミノキビレッジ」で設計・施工監理・大工を担当しながら、ファッションの仕事で培ったセンスとコミュニケーション能力を武器にSNSでの発信やブランディングにも力を注ぐ。
    「ミノキビレッジ」公式インスタグラム
    https://www.instagram.com/minoki_village/?hl=ja

  • Photo_Shunya Arai(YARD)
    Stylist_Shuhei Yoshida
    Edit&Text_Kai Tokuhara