
コアなファンを惹きつけている話題のブランド。
音楽の“ジャムセッション”にちなんで名付けたブランド名には、
「ノールールで自由に、ファッションを楽しんでほしい」という想いが込められています。
全8型の小さなコレクション。何をどう組み合わせて着回すかは、すべて自分次第。
今回はそんな思いでN.Jamを手がけるコンセプター 浜川さつきさんに、
ブランドストーリーやデザインのこだわりを語ってもらいました。

―今季で3シーズン目のN.Jamを立ち上げたきっかけを教えてください。
NOBLEのプレスを務める中で、NOBLEにこんなアイテムがあったらいいなと思って、ディレクターに提案したところ、「全部かわいいから、浜川さんのブランドとして手掛けてみたら?」と提案いただいたのがきっかけです。
―ブランドコンセプトを教えてください。
私のライフスタイルに音楽は欠かせないのですが、N.Jamの“Jam”は、ジャムセッションの略。楽譜やアレンジにとらわれず、ミュージシャンたちが即興的に演奏をするように、自分らしく、自由気ままにミックスして、ファッションを楽しんでほしい…という気持ちを込めたブランドです。
―1シーズン7~8アイテムというミニコレクションに限定している理由は?
作るのは、シンプルに“自分が今、本当に着たい服だけ”。その点に徹底してこだわっています。トレンドだからとか、お客さま目線は考えすぎないように。少数だからこそ、やりたいことが凝縮できるブランドです。自分のこだわりが強すぎるので、毎回サンプルがあがるたびに「これ私しか欲しくないかも?!」って不安になるんですが(笑)。嬉しいことに、デビューシーズンから目利きなファッション業界の方々に好評で、ブランドの認知度が高まりました。

―浜川さんが考える“N.Jamらしさ”とは?
アイテムだけ見ると、テイストに統一性がないと思われるかもしれませんが、逆にその幅の広さこそN.Jamらしさ。私自身、ファッションに興味を持ち出した頃から、ありとあらゆるファッション誌を読みあさっていて。好きなテイストが1つに絞られていないんです。いろんなテイストの服をMIXして、あれこれ工夫しながら着回しするのが好き。だからN. Jamでも一見バラバラなテイストに見えますが、どのアイテムと合わせてもスタイリングできるよう考えています。「こう着て欲しい」という正解はなくて、着る人が好きなように楽しんでもらえると嬉しいですね。
―デザインのインスピレーション源となるものは何?
素敵な女性を観察するのが好きで、特に写真集『GIRL』はよく眺めています。被写体の女性が着ている服を参考にするのではなく、この女性だったら、今こんな服を着るんじゃないかな…と、女性像をもとにイメージを膨らませます。大好きなドラマ『Sex and the City』の写真集『KISS AND TELL』もお気に入り。主人公キャリーの古着をミックスした着こなしに共感するし、90年代から最近までのファッションが網羅されているので参考になります。
リアルスタイルの情報としては、コレクション周辺のおしゃれスナップもSNSでよくチェックします。また、古着文化が定着している沖縄出身なので、アメカジのエッセンスも自分の根底にありますね。―2020SSのコレクションについて教えてください。
“ユニフォーム”を切り口に、「チャイナ」「マリン」「エクササイズ」「ワークウェア」と、4つのテーマで構成しました。
一番最初に思い描いたのは「チャイナ」。昔からチャイナ服が好きで、今再び新鮮だなと思って。赤素材にに金糸、という自分の中のチャイナイメージを発展させて、今季らしい透ける素材で仕立てました。ブラウスとTシャツの中間のようなトップスは、いわゆるチャイナ服のハイネックではなく、クルーネックでデイリーユースしやすいデザインに進化。歩くたびに揺れる裾広がりのスカートは、裏地を短めにして、透ける足もとで女らしさを香らせます。セットアップで着ると、ちょっとしたオケージョンにもぴったりですよ。

―「マリン」のテーマは、意外性あるデザインが新鮮ですね。
今年の秋冬トレンドのセーラーカラーを、今すぐ着たい!と思って。「サファリ」と「マリン」の中間みたいなイメージから、透け感あるリネン素材を用いました。トップスはセーラー襟の幅を従来よりも狭くして、前から見たときに襟がちらりと覗くような抜き襟デザインに。この理想の襟もとが完成するまで、何度も修正を重ねました。風通しのよいゆったりした広めの袖口や、こなれ見えする後ろ下がりのシルエットもポイント。いろんなボトムスと着回せるように、シルエットを調節できるストリングを裾にあしらったのもこだわりです。


着こなしの幅を広げたくてセットアップ提案したスカートは、縦のラインを描くシンプルなロングタイトスカート。スリットがかなり深めに入っているので、足さばきもよく、抜け感ある着こなしが叶いますよ。
―「エクササイズ」のテーマは、リラックスムードを求める今にぴったりですね。
透ける素材の服に合わせて、見えてもOKなブラトップを作りたいと思ったのが出発点です。私自身ブラトップはいくつもコレクションしていて、透ける服を着たときにすごく便利なんです。イメージしたのはエクササイズ用のブラトップ。それをベロア素材で作りました。ブラトップのアイデアから派生したパンツは、昔から好きでよく履いていたクライミングパンツが着想源。とろみのある光沢素材はデザイナーからの提案。スタイリング次第で女性らしい着こなしも楽しめます。Tシャツはメンズライクな生地感、短め丈とワイドな襟開きで女らしくバージョンアップ。ブランドコンセプトをひねったメッセージもお気に入りです。

―デビューシーズンからドット柄がアイコン的存在ですが、今季のニューアイテムは?
フェミニンなドット柄のイメージをがらりと変えるアイテムが欲しくて、オールインワンを作りました。ワークウェアならではの胸元のビッグポケットがポイントです。特にこだわったのが、エポーレット部分を黒のレース素材で切り替え、異素材ミックスで遊びをきかせたディテールは最終打ち合わせでデザイナーとパッと閃いて加えたデザイン。二の腕がすっきり見えるフレンチスリーブで、カジュアルなアイテムながら女っぽく着こなせます。夏に嬉しいゆったりシルエットは、上にトップスをレイヤードしても似合うよう計算しているので、ぜひトライしてみてくださいね。

―裏コンセプトとして、“ファッションしりとり”というテーマがあるそうですね。
そうなんです。N.Jamは着回しも楽しんでもらいたいと思って全体を構成しています。下の写真のように最初のスタイリングから1アイテムを残して新しいスタイリングを考える。しりとりのように楽しんでもらえたら嬉しいですね!1シーズン着て終わりでなく、デビューシーズンのアイテムと今季ものをMIXしても新鮮に見えるモノ作りがしたいと思っています。もう何シーズンかN.Jamが続いたら、これまでデザインした全アイテムをミックスしたスタイリング企画を手掛けてみたいですね。