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  3. 藤原さん、ぼくらが別注したリーバイスいかがですか?
  • デニムがまだワークウエアの分脈で語られていた1900年代初頭にデビューして以来、およそ40年ものあいだ展開された〈リーバイス〉の名作、タイプ1(ワン)ジャケット。さらに、その対となる傑作501をベースに、ヴィンテージ由来のディテールワークと現代的なアレンジを加えてリリースされた〈エディフィス〉と<フォーワンセブン エディフィス>、そして〈ジャーナルスタンダード〉と<ジャーナルスタンダード レリューム>による別注モデルたち。昨年末の発売以降、瞬く間にベストセラーとなった本別注プロジェクトの魅力を、日本が世界に誇るヴィンテージデニムアドバイザーの藤原裕さんに深堀りしていただきました。

    Photo:Norihito Suzuki  
    Interview&Text:Takehiro Hakusui  
    Edit:Takashi Abe

    藤原 裕
    ふじはら ゆたか

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    1977年生まれ。ヴィンテージショップ「ベルベルジン」のディレクター。個人名義では、注目ブランド〈NEW MANUAL〉のディレクションや、数多くのブランドにてデニムアイテムの企画立案、さらに〈リーバイス〉のアーカイブブックの監修など、多岐にわたり活躍。またデニムスタイルを提案するショップ「THENIME(ザニーム)」では、ヴィンテージデニムに関するアドバイザーを担当。

    1977年生まれ。ヴィンテージショップ「ベルベルジン」のディレクター。個人名義では、注目ブランド〈NEW MANUAL〉のディレクションや、数多くのブランドにてデニムアイテムの企画立案、さらに〈リーバイス〉のアーカイブブックの監修など、多岐にわたり活躍。またデニムスタイルを提案するショップ「THENIME(ザニーム)」では、ヴィンテージデニムに関するアドバイザーを担当。

    ヴィンテージとは違った感覚で名作を楽しめます。

    ヴィンテージとは違った感覚で名作を楽しめます。

    藤原さんが初めてタイプ1ジャケットを手に入れたのは、いつ頃ですか?

    初めてアメリカ買い付けに行かせてもらった22歳の頃、常連のお客様から「サイズ大きめのタイプ1ジャケットで背中が2枚接ぎになった個体を昔見たことがあって、もし渡米のタイミングでそれを見つけたら買いつけてきてほしい」というご依頼があったんです。とはいえ、その頃の僕はまだそんな個体を見たことがなく、まずは当時の大御所ディーラーだったジップさん(ジップ・スティーブンソン。現HTCオーナー)を訪ねました。彼は体も大きく、もしかしたら私物として何着か持っているんじゃないかと。案の定「50サイズのデッドストックを持っている」とのことで早速見せてもらったら、確かに背中がT字型にセパレートされていて。それからセパレートタイプを重点的に探し始め、翌年とあるディーラーさんから3着所有しているうちの2着を3ヶ月粘って譲ってもらうことができました。自分自身が手に入れたのは、それから2、3年後のことですね。

    一番最初に手に入れたタイプ1ジャケットがTバックだったと?

    はい。大きいサイズはタマ数こそ少ないものの、ジャストサイズが一般的だった当時はまだ人気薄でしたし、当然状態にもよりますが、見つけることさえできれば比較的安価で手に入れることができました。

    今日お持ちいただいたタイプ1ジャケットもTバックですね。

    最初に手に入れてから徐々に状態が良いものにアップデートしながら、これは15、6年ほど前にワンウォッシュで手に入れたものです。

    当初はジャストサイズが高価、大きめサイズが比較的安価だったワケですが、それが逆転したのっていつ頃ですか?

    18年前くらいですかね。タイプ1ジャケットの仕様上、ジャストサイズで選んでしまうと、どうしても丈が短くなってしまい、肩も落ちず、今の感覚で合わせづらくなってしまって。お客様の大半が大きなサイズを探し始めると同時に価格の逆転現象が起き、現在に至っています。

    そもそもTバックの名付け親は藤原さんと言われてるようですが。

    いえ、じつは僕ではないんです。雑誌の取材を受けた際、担当ライターさんが“背中(バック)がT型”だからと、面白半分で名付けたのが大元です(笑)。

    ベテランのデニム好きからオリジナルを知らない世代にまで。

    ベテランのデニム好きからオリジナルを知らない世代にまで。

    そうだったんですね。今回の別注企画はそんなTバックを筆頭に、ヴィンテージ由来のディテールワークを継承しつつ、現代的なサイズ感でアップデートしています。

    まず何よりユニークなのがサイズ感ですよね。XXLサイズのみTバック仕様になっていますが、MやLといった標準サイズでもかなり大きめな作りですよね。丈も長めに設定されていますし、アームもざっくり太めだから、今の気分で楽しむなら理想的なフォルムだと思います。

    そうですね。MならXL、LならXXLといったように2サイズアップくらいで設計されているようです。

    僕の場合、Lがちょうど良い感じですね。とはいえ、当時の最大サイズでもTバック仕様のXXLほど大きな個体はまずあり得ないので、ヴィンテージとはまた全然違った感覚で楽しめるサイズレンジの広さも魅力のひとつだと思います。

    また、今回の別注では、〈エディフィス〉と<フォーワンセブン エディフィス>、そして〈ジャーナルスタンダード〉と<ジャーナルスタンダード レリューム>それぞれ異なる色合いで仕上げているのも大きな特徴のひとつです。

    〈エディフィス〉の方はダーク、〈ジャーナルスタンダード〉の方は若干薄めでラフな印象ですね。セルビッジデニムを採用しつつも、あえてヴィンテージ然としていない色合いは、ベテランのデニム好きからオリジナルを知らない若い世代までの幅広い世代が、楽しめるのではないでしょうか。

    また両ブランドともに様々な年代の代表的なディテールワークをミックスし、ダメージやリペア跡なども再現した仕様になっています。

    確かに胸ポケットは大戦モデルにならいフラップなしとなっていますが、一方で前開きが5ボタン仕様(大戦中は物資減から4ボタンへの改定が義務化された)なことから、年代を跨いで代表的なディテールワークが上手にミックスされていますよね。ことフラップに関して個人的にはあってもなくても良いと思っていますが、ボタンに関してはやっぱり4つだと中途半端な感じがするので嬉しいアップデートです。それに〈エディフィス〉の方はあえてシンチバックが切れたデザイン、一方〈ジャーナルスタンダード〉の方はアームにリペア跡を再現したり、ボックスステッチにほつれ加工を施すなど、それぞれの色合いに寄せた仕様もユニークだと思いますね。

    501は、ウエスト40をトライしてみたい。

    501は、ウエスト40をトライしてみたい。

    続いては501についてお聞きします。両別注モデルともにセットアップを想定した色合いで仕上げています。

    色合いもさることながら、この大きなサイズ、いいですね(笑)!ウエストサイズはどんな展開なんですか?

    下は28インチで、上は44インチになります。ウエスト40インチと44インチに限っては、レングスを26インチに設定しています。

    44インチまであるんですね。レングスも26と一見かなり短そうですが、ウエストが大きい分、股上も長く設定されているので、絞って穿く前提で設計されているんですね。また、ことヴィンテージに限ってお話すると、一昔前までウエスト40インチ以上はほぼ売れ残っていたんです。ところが近年になってあえて大きいサイズのウエストを絞って穿かれるお客様を見かけるようになりました。先日、うちの若い女性スタッフから教えてもらったのですが、大きいサイズの501を穿く場合、トップボタンを右側のベルトループに通してから閉めるとベルトを使わずともある程度ウエストを絞って穿くことができると。

    まさに知る人ぞ知る実用的なアイデアですね。他にも両ブランドともビッグEとレザーパッチ、前開きのVステッチ、ヒップポケット内側のバーダック(補強糸)に白糸でハイライトを設け、コインポケット裏にセルビッジを配しています。

    〈ジャーナルスタンダード〉の501はアーキュエイトがレインボーステッチでになっているんですか?

    はい。そもそもレインボーステッチはいつ頃採用された意匠なのでしょうか?

    登場したのはおそらく’50年代前半、それから'67年頃のいわゆる“501ビッグE”と呼ばれるモデルまでに稀に見られる意匠ですね。ファクトリーの職人さんが部位ごとに糸を替えずそのまま縫製したイレギュラーなディテールなので、ヴィンテージでもなかなかお目にかかれないんです。というか、なぜレインボーステッチと呼ばれるようになったんでしょうね?

    と、言いますと?

    いや、オレンジとイエローの2色しか使っていないのにレインボーってちょっと語弊がないですか(笑)。“ツートーンステッチ”とかに改名した方が誤解を招くこともないですし、これを機に呼び名を代えてみてはいかがでしょう(笑)。

    別注でしか実現しない、プレミアムなホワイト501。

    別注でしか実現しない、プレミアムなホワイト501。

    確かにその通りですね(笑)。また、〈ジャーナルスタンダード〉の別注、正確に言いますと<ジャーナルスタンダード レリューム>の別注では、同型のホワイトもリリースしています。

    ダメージ加工こそあれ、通常のデニムに比べるとちょっと大人な印象が強いので、クリーンなニュアンスで取り入れたいですね。ただ、ホワイト501の全盛期といえば'80年代ですし、ヴィンテージではビッグEもレザーパッチ仕様も当然存在しないので、この別注でしか実現しなかったプレミアムなホワイト501と言えるんじゃないでしょうか。

    ちなみに藤原さんだったらどのモデルをどう着こなしたいですか?

    個人的にはタイプ1ジャケットはサイズL、501はやはりウエスト40にトライしてみたいですね。ヴィンテージとは異なる雰囲気が逆に新鮮ですし、いつもとはちょっと違った感じで取り入れたいかな。何よりここまで大きなサイジングを本家〈リーバイス〉が製造することはなかなかないと思うので、やっぱりあえて大きめのサイジングを楽しみたいですし、価格帯も良心的なので、ヴィンテージ好きならずとも今までにはない感覚で付き合える画期的な別注企画だと思います。