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  • 矛と盾、
    アキレスと亀、
    柔らかなニューエラ®️。

    ストリートクロージングのアイコン的存在であり、MLB(メジャーリーグベースボール)唯一の公式キャップ。そういったイメージが先行しているせいか、いつだって漠然と〈New Era®️〉には骨太な印象を抱いていた。けれど、〈JOURNAL STANDARD〉とのタッグで作った『Antinomy COLLECTIONS』は、そんなステレオタイプとはちょっとばかし様子がちがいそうだ。

    “二律背反”を意味する同コレクションでは、〈New Era®〉のクラシックたちをカシミヤ、ハイロフト、アルカンターラといった柔らかな素材にチェンジ。相反する要素を共存させた、穏やかで知的な〈New Era®️〉をこの冬、ワードローブに。

    写真:菊地晶太 プロップスタイリング:長坂磨莉 文&編集:重竹伸之
    Photo_Shota Kikuchi / Prop Styling_Mari Nagasaka / Text&Edit_Nobuyuki Shigetake

    About Pure Cashmere

    伊・トスカーナのM.T.R.社(Manifattura Tessile Risaliti)と150年以上の歴史を持つ繊維専門商社・瀧定名古屋株式会社の協業によって生まれた、通称“エクスクルーシブカシミヤ”。従来の繊維組織の加工技法を応用し、組織の凹凸を限りなくフラットに近づけたことで、驚くほどスムースで美しい仕上がりに。その後、時間をかけながら丁寧に毛並みを整え、極上の風合いと光沢を追求した。

    Navy ¥10,000Gray ¥8,000Navy(NANZUKA) ¥8,000Brown(NANZUKA) ¥8,000

    ベースモデルとなったのは『Low Profile 59FIFTY®』。〈New Era®〉のシグネチャーである『59FIFTY®』の基本的なスペックを踏襲しつつ、クラウンをやや低めに、バイザーを緩やかにカーブさせたニュー・スタンダードなベースボールキャップだ。『NY』ロゴは、既視感のないゴールドの刺繍。ともすればツヤ感が漂ってしまいそうな挑戦的なディテールは、なめらかなカシミヤ素材と調和させればまったく嫌味に感じない。

    一方のロサンゼルス・ドジャースには『9TWENTY™』を。リア(後方)にサイズ調整を可能にするアジャスターを設けた、数ある〈New Era®〉のプロダクトのなかでもとりわけ普遍性の高いモデル。それにしても、起毛したカシミアの精悍な表情に、どうしたってキッズな『LA』ロゴの組み合わせって、面白いほどにナンセンスだ。もちろん、良い意味で。

    見慣れたMLBロゴをアブストラクトなファイヤーパターンにイメージチェンジしたのは、『NANZUKA GALLERY』に所属する、現代美術作家の中村哲也氏。〈New Era®〉と中村氏といえば、今夏にリリースされたダブルネームモデルが巷間を賑わせたことが記憶に新しいところだが、これはその秋冬版。ネイビー、タンともにいずれもベースモデルには『9TWENTY™』を採用した。

    カシミヤの魅力というと脊髄反射のごとく、包み込むような独特の肌触りと格別の断熱性を挙げたくなるところだが、実のところ、軽量性や保湿性、通気性についても白眉だったりする。そんな天然の高機能素材を贅沢に使った〈New Era®〉のカフニットは、いずれも大人っぽく被れそうなベーシックな3色展開。ネイビーにはニューヨーク・ヤンキース、ブラウンにはロサンゼルス・ドジャース、グレーにはニューヨーク・メッツのロゴが鎮座する。

    ※2024年2月発売予定。

    About POLARTEC HIGHLOFT

    世に言う“フリース”を世界で初めて作ったポーラテック社が近年に開発した超軽量断熱素材。方法論としては長い毛足でデッドエア(衣服の内部に抱き込まれる動かない空気)を蓄えて保温する、という昔ながらの手法ではあるが、技術向上によって、そのメリットを損ねることなくより軽く、より柔らかな肌触りを実現した。2023年現在、同社のフリースバリエーションの中でも最上級のあたたかさと軽量性を誇る。

    Navy ¥8,000Brown ¥8,000White ¥8,000

    ハイロフトは、日進月歩のフリーステクノロジーの機能特性、デザイン用途をさらに広げ、高めていくために開発された、ポーラテック社の技術力の結晶。想像以上に軽く、それでいていつまでも触っていたくなるほどのソフト感。ハイロフトファイバー技術の魅力を存分に堪能できる、ザ・フリース的なオフホワイトカラーのボアハットは、単調になりがちな真冬のワードローブにひとさじの可愛げを添えてくれる。

    アウトドアウエアに用いられるファブリックとして絶大な信頼を寄せているハイロフト、ひいてはポーラテック社だが、過酷な環境下で重宝されるのは底知らずの防寒性ではなく、むしろ軽量性や通気性。一見して相反する機能特性が同居するフリース素材のハットは、ウィンターアクティビティから真冬のタウンユースまでを網羅する、冬の被り物の新たな選択肢として。

    ニューヨーク・メッツのシャープなロゴが映えるこのネイビーのハットは、ハイロフトフリースの立体的な質感にかこつけて、ダウンジャケットや、それこそボアジャケットなどのしっかりボリュームのあるアウターとの組み合わせを楽しんでみたい。さながらクイーンズを闊歩するB-BOYのような、ヒップホップノリなスタイルにもよく似合いそうだ。

    About ALCANTARA

    「近未来のマテリアル」と呼ばれる、伊・アルカンターラ社が開発した革新的な人工皮革素材。特徴となるのは、スウェードを思わせる細かな起毛と滑らかな手触り。アルファ・ロメオやポルシェなどの高級車の内装素材に採用されているのは、クルマ好きの間では周知のことだろうか。そういったバックボーンやメイド・イン・イタリィの素材そのものが放つエレガンスばかりに着目されがちだが、難燃性、通気性、耐久性に優れたハイスペックな高機能素材であることをここに強調しておきたい。

    Navy ¥13,000Beige ¥13,000Brown ¥13,000

    アルカンターラの魅力のひとつに、その美しい色出しが挙げられる。やや青みが強いダークブルーと生地特有の静かな色気とが絶妙にマッチしたこちらのベースモデルは『9TWENTY™』。また、時間を共にすればするほどに経年変化を遂げるのもアルカンターラの特徴であり、魅力。この夜空のような豊かな藍色は、どのように移り変わっていくのだろうか? 想像をかきたてられる。

    サンディエゴ・パドレスのチームロゴが鎮座するのは、ドライなブラウンカラーを纏った『Low Profile 59FIFTY®』。誕生当初はスウェードの代替品のように扱われていたアルカンターラだったが、現在では、技術革新による品質の向上によって、見た目や機能性においてはリアルレザーよりも優位にある、という見解もある。事実、このキャップも真っ先にリアルスウェードを想起させるカラーリングではあるが、本革ではこの繊細さと高級感は両立できないだろう。

    そしてもう一点、アルカンターラの魅力として挙げられるのが、環境や社会問題にも眼差しを向けた、“ナチュラル”な商品であるということだ。そんな背景にも意識を向けながら被りたいダークブラウンの『9TWENTY™』は、すでに10年選手クラスの渋みがあるし、ヴィンテージウエアとのコーディネートにも程よい具合にハマってくれそう。長く、大事に被りたくなるキャップっていうのは、こういうやつなんだろうな。