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    僕にはどんな〈バブアー〉が
    似合うんだろう?

    “一雨一度”な秋の東京における僕らの定番アウターと言えば〈バブアー〉のオイルドジャケット。ご存じのとおり、イギリスのトラディショナルなアウトドアブランドによる看板アイテムであるわけだが、『BEDALE』を筆頭にバリエーションが豊富で、モデルごとに面構えや機能も違えば、なにやら使用用途も違うらしい。どれを選ぶべきか悩ましい?いいや、逆に言うと誰にでも似合う〈バブアー〉がある、ということになるんじゃなかろうか。

    Styling:Haruki Uchiyama / Photo:Misuzu Otsuka / Grooming:Natsuo / Model:Filipp(Human)、Haniel(Dog) / Text&Edit:Nobuyuki Shigetake

    今回スタイリングで使った〈バブアー〉の一覧がこちら。
    真ん中から左がノンワックス、右がオイルド。
    塗布されたオイルの量もそうだが、丈の長さ=生地の量でも重さが変わってくる。
    各アイテムの詳細はクリックでチェック。

    ネイビーの〈エディフィス〉のセットアップに重ねたのは『SPEY』という、フライフィッシングにルーツをもつモデル。なるほど、それならこの特徴的な短丈のシルエットにも合点がいく。ただ、きっと僕らは釣りには使わないだろうから、ニットでネオンイエローを差してみたり、マフラーの裾で遊んでみたり、長短のレイヤードを駆使してみたりして都会的なスタイルを楽しみたい。パネルごとに色が違うクレイジーパターンは〈ジャーナル スタンダード〉お得意のアレンジ。

    ルアーなどの小道具をぶら下げるためのD環や、開閉が容易な大きめのフラップポケットが『SPEY』のシグネチャーポイント。機能がそのままデザインになったような姿からは”道具としての洋服”の片鱗を嗅ぎ取れるから、デニムとチェックシャツを合わせてワークスタイルに落とし込んでみるのもアリ。とはいえ正統派すぎるのも違うので、極端にテーパードしたバルーンシルエットのデニムを選んだり、シャツの襟はラフに立たせたりして遊びをプラス。

    ベテラン揃いの〈バブアー〉の中でも一際フレッシュな魅力を放つ『TRANSPORT』だが、実は1990~2000年代初頭のわずかな期間にのみ流通されていたモデルの復刻品。名前の通り運送業者向けに作られたもので、特徴となるのはレイヤードがはかどりそうなデカめの身幅に良い塩梅のショートレングス、日常使いで重宝するスナップボタンに前見頃のポケット。あれ?なんだかこの手のジャケット、着たことがあるぞ? と思ったら、コーチジャケットじゃないか。それならばと、難しいことは考えずにいつものようにボーダーのカットソーや〈ニューバランス〉のシューズを合わせてみる。

    スモーキーピンクのニットに合わせたマットなグレーの上下は、この秋にリリースされた〈アンブロ〉と〈ジャーナルスタンダード〉のコラボレーションモデル。何を隠そう〈アンブロ〉はイギリスのブランドなので、〈バブアー〉とは故郷が同じなのだ(ちなみに足元に合わせた〈クラークス〉も同郷)。向こうの若者たちからすると気恥ずかしいくらいに地元愛に満ちた、オーセンティックな組み合わせかもしれないけれど、遠く離れた東京ではむしろ新鮮だったりする。

    『BEDALE』はエリートバンカーたちのスーツの上の羽織りものとして、母国イギリスでは街の風物詩らしい。日本でもスーツの上から羽織っているサラリーマンを見かけることがあるけれど、ルーツは乗馬用。ってことは、相反する組み合わせ?と思ったものの、乗馬は貴族や上流階級の嗜みであったことを考えると、フォーマルな合わせはむしろ正解。チェックシャツとツイードジャケットのブラウンのワントーン合わせは美術教師のような渋さがあるが、上からフーデッドの〈バブアー〉を重ねると少しだけ渋みがやわらいで、その分モダンさが際立ってくる。

    〈バブアー〉のワックスワンタッチハーネス 5,500円〈バブアー〉のフリースドッグブランケット 8,800円、〈バブアー〉のドッグトイは参考商品 (※Barbourの公式サイトに飛びます)

    ここまで当然のように写り込んでいた彼の名はハニエルくん。人懐っこくて元気な11歳のジャックラッセルテリア。イギリスは個人、企業問わず犬が大好きな国柄らしく(なんと約30%もの家庭でワンちゃんを飼っているそう)、〈バブアー〉にもドッグ用ウエア、アイテムが豊富に取り揃えられている。また、Instagramではこんなアカウントも運営しており、フィードには〈バブアー〉愛好家たちが投稿した、〈バブアー〉を纏った愛犬たちの大量の写真が……微笑ましすぎて、眺めているだけで数時間経過してしまいそうだ。

    〈リーバイス®︎〉のデニム、〈チャンピオン〉のスウェット、〈ニューエラ®︎〉のベースボールキャップ……と王道なアメカジスタイルにはバーシティジャケットでも合わせたくなるのが男のサガってところだが、グッと堪えて、ウール素材の『BEDALE』でイギリスを一点投入。さすがは英国王室御用達。アメリカの野球観戦親父のようなイナたい合わせでも、どこか品がにじみ出る。素材に用いた”CORDURA COMBAT WOOL”は、あのコーデュラが作ったナイロン混のウール素材。一般的なウール織物と比較して約14倍の摩耗強度があるため、犬がワルさをしても無問題。

    183cmのフィリップくんが着ても膝上ほどの丈になる『BURGHLEY』は〈バブアー〉のアウター群のなかで最長ということもあって迫力こそ充分なんだけれど、オイルドなのも相まって、正直とても重い。ただ、〈チャンピオン〉のスウェットパンツや〈ジャーナル スタンダード〉のベストといった、ラフでライトでリラクシンなアイテムと合わせればその重さもいくらか緩和される。これくらい軽快に着られるなら、「ちょっとそこまで」のつもりの愛犬との散歩で、ついつい隣町まで行ってしまっても大丈夫そうだ。

    セミロング丈の『GAMEFAIR』は、その端正な顔付きをあえて活かさず、古着屋で発掘したワークブランドのハーフコートのようなノリで着こなしてみたい。ミドルでもロングでもないどっちつかずな曖昧さが、襟のない、ややストレンジな趣のカウチンニットや、丈足らずなのにオーバーサイズなチノパンツともよくマッチする。タフで男らしいスタイリングに取り入れてもそっちに転びすぎずどこか上品にまとまるから、英国王室御用達はやっぱり伊達じゃない。

    『GAMEFAIR』のルーツは競馬観戦用のコート。だから”GAME”なわけだが、場外馬券場的なそれを想像してもらっては困る。近代競馬発祥の地であるイギリスの競馬場の多くには今でも厳格なドレスコードが存在しており、基本的にはモーニングスーツにトップハット、会場やイベントによってはネームタグの着用が義務付けられることなんかもあるらしい。そんな現地での由緒正しい観戦スタイルもカジュアルな要素を足し引きすれば、日常的なハット・スタイルとして楽しめるのでは?たとえばスーツはモックネックのニットに差し替えて、芯地の入っていないネクタイはストールのように首から垂らして。