BAYCREW’S FESTIVAL OSAKA 2026

NOTO FIELD NOTE

能登のいまと、そこにある営みを訪ねる。

土地の声を、料理にする。

NOTO FIELD NOTE #04土地の声を、料理にする。

フードブースを通じて、能登の食文化を伝えてきた『BAYCREW’S FESTIVAL』。海の幸や山の幸、発酵の知恵など、独自の食文化が育まれてきた能登は、多くの料理人を惹きつけています。その魅力に惹かれ、国内外に伝えているのが、銀座〈ESqUISSE〉のリオネル・ベカさんです。

2011年に初めて能登を訪れ、2019年の「ESqUISSE in NOTO」をきっかけに、この土地と深く関わるようになったリオネルさん。震災直後には、〈mebuki 芽吹〉の池端隼也さんらとともに「NOTO NO KOE」を立ち上げ、料理人や生産者、職人たちをつなぎながら、能登の食と文化を伝えてきました。今回の『BAYCREW’S FESTIVAL』の会場では、その活動の一環で制作された『NOTO no KOE little book』も数量限定で販売します。

能登の食文化をどう捉え、どのような活動を続けているのか、リオネルさんに話を聞かせてもらいました。

写真提供:NOTO NO KOE

能登に恋をした。

リオネルさんが能登を初めて訪れたのは、2011年のことだった。能登島にある農園を訪ねたのが最初のきっかけだという。その後、2017年に家族旅行で能登を訪れ、2018年の秋頃からは、翌年に開催された『ESqUISSE in NOTO』の準備のため、何度もこの土地へ通うようになった。「2011年に初めて訪れたときは、ほかの日本のさまざまな土地と同じように、“美しい場所”だという印象でした。それが2017年に家族で訪れたとき、ほかの土地にはない魅力を感じるようになったんです」。

『ESqUISSE in NOTO』を通じて、能登の景観や自然だけでなく、そこに暮らす人々とも出会った。〈L'Atelier de NOTO〉の池端隼也さんや〈Villa della Pace〉の平田シェフをはじめ、職人や生産者など、さまざまな人と交流を深めていった。「能登の人たちはとても魅力的です。それぞれが能登独自の知性や才能を持っている。能登には、能登独自の時間の流れがあって、そのなかで人々が“真実とは何か”を示してくれるように感じます。土地の美しさだけでなく、そうした人々の姿勢に強く惹かるようになりました」。

能登の人々は、現代を生きる私たちに、これからどこへ向かうべきかを示してくれる。リオネルさんは、能登との出会いをそう捉えている。「能登からはたくさんのことを教わりました。私は、この土地に恋をしたんです」。

「NOTO NO KOE」が伝えてきたこと。

2026年5月に七尾・塩津の〈Villa della pace〉で開催された「NOTO NO KOE Vol.4」の様子。リオネルさんの呼びかけで、能登と国内各地から7人のシェフが集まり、能登の食材と伝統料理を新たな表現で届けた。

「NOTO NO KOE」は、震災直後の2024年春に始まった。リオネルさんが能登を訪れたのは、震災から約2か月後のこと。現地を見て、何か行動を起こさなければならないと考えたという。「緊急に助けが必要だと思いました。何かを立ち上げて、資金を集めなければいけない。そう考えて、2024年5月に銀座の〈ESqUISSE〉で最初のイベントを開催しました」。

イベントには、能登に関わる料理人や職人を招き、料理を提供するだけでなく、震災直後から炊き出しに携わってきた料理人たちの活動を伝えるトークセッションも行った。

この投稿をInstagramで見る

その後、「NOTO NO KOE」は次の段階へ進んでいく。2024年11月と2025年春には能登でイベントを開催し、子ども向けの料理ワークショップも実施。被災した子どもたちに、料理を通じて楽しい時間を過ごしてもらう機会をつくった。「少しずつ、能登の時間も進んでいってる。だから「NOTO NO KOE」も次の段階に進めたかったんです。そこで、能登でこれまでのように料理を楽しみ、楽しい時間を過ごせることを、能登の外にいる人にも、能登に住む人にも知ってもらいたいと考えました」。

2026年には、リオネルさんによる能登の写真や、多種多様なアーティストとクリエーターによる写真、絵、文章で構成された「NOTO no KOE ― little book」を出版。さらに、能登の食や文化、土地の美しさを伝えるイベントも開催した。

『NOTO no KOE little book』 フレンチシェフのリオネル・ベカ、ラジオパーソナリティのクリス智子、フードプランナーの勅使河原加奈子の3人が、約1年をかけて石川県・能登に思いを馳せながら制作した。『BAYCREW’S FESTIVAL 2026』の会場でも、数量限定で販売予定。

リオネルさんが料理を通じて伝えたいのは、能登に残る“マイクロカルチャー”の価値だ。「私が生まれ育ったフランスでは、その土地ごとに無数の小さな文化=マイクロカルチャーが存在しています。能登にも、マイクロカルチャーがたくさん残っている。土地から得たものを大切に保存するための知恵や、発酵の技術、日々のちょっとした仕草や知識もその一部です」。

能登の農耕儀礼「あえのこと」を手がかりに、7人のシェフが能登の自然と食文化に向き合った。土地に積み重なる時間を料理で表現し、未来へつなぐ試みを、キュレーターを務めた平田シェフは「能登饗藝料理」と名づけた。

何も料理人に限ったことではない。マイクロカルチャーは職人やアーティスト、生産者、服をつくる人など、土地に関わるさまざまな人の営みと切って離せない関係にある。「デジタルに置き換えられるものが増えている時代だからこそ、こうした知恵や技術、文化を大切にしていきたい。それらは地域のエコシステムの基礎になるものです。その価値を、料理を通して伝えたいと思っています」。

海と山が近接する、食の土地。

フランスには、土地ごとの食文化や食材を表す「テロワール」という考え方がある。リオネルさんは、能登にもさらに細かな「マイクロテロワール」が存在すると話す。「テロワールというと、作物やチーズ、ワインのように“目に見えるもの”を思い浮かべます。でも、それらの生産の背景には、食材をつくる技術や知識、長い年月をかけて培われた生活の知恵があります」。

能登で強く惹かれたのは、限られた範囲に多様な食材が揃うことだった。「地図に目を落として、偶然指を置いた場所から半径20キロ以内にある食材だけで、レストランをつくれるのではないかと思うほどです。海のもの、山のもの、耕した土地から得られるもの。そのすべてが揃っている」。

半島という地理的な条件も、能登の食を形づくっている。海に囲まれ、潮や風、空気の影響を受ける土地には、豊かな海の幸や海藻があり、山には春の山菜や秋のきのこがある。発酵の文化も深く根付いている。「料理人にとって、能登はまさにパラダイスのような場所です」。

さらに、集落や村ごとに異なる文化が残っている。独自の習慣や宗教観、暮らしの知恵が細かく分かれ、ほとんど固有の言語を持っているように感じるという。「豊かな食材と、土地ごとに異なる文化。その両方があるからこそ、能登は料理人にとってインスピレーションの宝庫なのだと思います」。

料理人が伝える、土地の声。

震災後の能登で料理人が果たせる役割について、リオネルさんはまず、料理をつくり、食べる人に喜びを届けることだと話す。「料理をつくって提供し、食べる人に幸せになってもらう。料理を通して楽しませ、喜びを与える。それが料理人の基本的な役割です」。

同時に、料理はその土地の“結果”でもある。土地が与えてくれる食材を受け取り、料理人が持つ技術や知識によって、一皿に仕立てる。その料理を通して、土地の声を伝えていく。「その土地で食べ続けられてきたものや、つくられてきた料理を受け継ぎながら、自分の技術や知識を使って、土地が与えてくれるものを表現する。料理人には、そうした責任があると考えています」。

一方で、震災後の能登では、食材を料理にする人や、料理を食べる人そのものが減っている。地元の客と観光客の双方が減少し、飲食店にとって厳しい状況が続いている。「震災直後の緊急支援とは別に、今の能登の料理人やレストランには、別の形の助けが必要です。料理人自身がこれまでとは違う方法を考えることも必要ですし、行政や国の支えも必要になる。そして、外から能登へ人を呼び戻すことも大切です」。

そのために、「NOTO NO KOE」では、イベントや書籍を通じて能登の食を伝えてきた。今後はさらに、若い料理人を能登へ招き、土地の食材を使った料理や、地域での活動を経験してもらう場もつくろうとしている。「次のステップとして、能登に料理文化アカデミーのようなものをつくりたいと考えています。能登の外から若い料理人を呼び、能登の食材を使ってもらう。能登で経験を積み、いつかこの土地に住んで、店を開いてくれる人が生まれたらと思っています」。

能登の食を守ることは、食材を守ることに加えて、土地に残る知恵や技術、人々の暮らし、そこから生まれる文化を受け継ぐことでもある。リオネルさんは、その価値を料理人たちとともに伝えようとしている。

左がリオネルさん、右が「NOTO NO KOE」のメンバーでもある、フードプランナー/フランス語翻訳家の勅使河原加奈子さん。

本イベントの支援先への寄付 / 協賛に
ご協力いただいた企業の皆さま

  • GRAND FRONT OSAKA
  • 三井不動産
  • 三菱地所
  • 阪急阪神ビルマネジメント
  • LUCUA OSAKA
GET TICKET