NOTO FIELD NOTE
能登のいまと、そこにある営みを訪ねる。
NOTO FIELD NOTE #03「復旧」の先にある、これからの輪島。
能登の豊かな食文化を支えてきた漁業。その拠点であり、商業や人の流れを支えてきた街の中心でもある輪島港の復興は、地域の再生に欠かせないものだと考えています。
2024年1月の能登半島地震から約2年半。輪島港では漁船が再び海へ出て、水揚げも行われています。時間が経ち、少しずつ日常を取り戻していくなかで、改めて浮かび上がってくるのが「復旧」と「復興」の違いです。
元の状態に戻すことと、その先の暮らしをつくっていくことは、同じではありません。輪島港の現状や漁業の変化について、輪島市役所の新谷さんに話を聞きました。
少しずつ戻る、港町の日常。
輪島市で生まれ育ち、現在は輪島市役所で復旧に携わる新谷さんは、能登の被害についてこう話す。「能登は本当に大きな被害を受けました。ただ、人口の少ない地域だったからこそ、被害の規模が限定的に見えているように感じますね」。
輪島は能登半島の先端にあり、メインの道路も限られている。目的がなければ訪れる人が少ない地域でもあるため、資材や人を運ぶこと自体に時間がかかる。そうした条件が重なり、復旧も遅れがちになっているという。輪島港は、漁業の拠点であると同時に、商業や人の流れを支えてきた街の中心でもあった。地震によって地盤が隆起し、港の設備や周辺の建物も被害を受けている。
「輪島港には、230隻ほどの漁船があります。現在は漁船の多くが稼働していますが、漁船と岸壁の高さが合わなくなっています。以前はそのまま魚を揚げられたのですが、今は一度仮置きして、そこからベルトコンベアで運ぶ。水揚げのたびに、ひと手間かかる状態です」。
水揚げ量は震災前の6〜7割程度。震災前に3つあった巻き網漁の船団も、現在再開できているのは1団のみだ。漁業が止まっていた間に、別の仕事へ移った人も少なくない。「居住エリアを移して、違う仕事に就くと、そこで生活が成り立つようになるんですよね。そうすると、戻ってこない人がほとんどです。それでも、再開した船団には『もう一度みんなでやろう』と戻ってきた人たちがいる。地域のつながりが残っていたからこそ、再開できた部分もあると思います」。
取れる魚の量が減ることは、漁師にとって望ましいことではない。それでも、量だけを追うのではなく、魚の扱い方や資源との付き合い方を考えるきっかけにはなっている。「魚は処理の仕方によって、味や品質が大きく変わります。魚をどう扱えばよりおいしくなるのかを追求している人もいる。そうした取り組みが広がれば、たくさん取ることだけに頼らず、限られた海の幸を無駄なく活かせる。漁師さんの負担を抑えながら、水産資源を守っていくという意味でも、大切なことだと思います」。
港の周辺では整備も進められており、今後は、漁協の施設や加工場、加工した魚を食べられる店などを集められないかという構想もある。「以前の朝市のように、人が訪れるきっかけがこの場所に生まれればいいと思っています。漁業のためだけではなく、魚を食べたり、地域を知ったりできる場所になれば、港の新しい役割にもつながりますしね」。
港に新たな施設をつくれば、かつての人の流れがそのまま戻ってくるわけではない。人口が減り、地域の外へ出た人も多いなかで、誰がそこで働き、商いを続けていくのか。港の再整備には、担い手の問題もついてまわる。
「復旧」と「復興」のちがい。
一方、市街地では解体後の空き地が目立つようになった。新しい家が建ち始めている場所もあるが、再建を選ばない人も多い。コンビニやドラッグストアの営業時間、道路の状態など、暮らしのなかにも震災の影響は残っている。「環境が変わったことについては、良くも悪くも慣れてきました。ただ、元の状態に戻ったとは言えません。復旧が進んでいる部分がある一方で、暮らしのなかにはまだ震災の影響が残っています」。
では、壊れたものを直し、漁船が再び海へ出られるようになった先に、何をもって「復興」と呼ぶのか。新谷さんは、復旧と復興を同時に進める必要があると話す。「復旧は、壊れたものを元の状態に戻すこと。復旧が終わったからといって、復興するわけではありません。すべての復旧を待ってから復興を始めるとなると、何年かかるかわからない。輪島で生業を続けている方たちが持ちこたえるためには、復旧と復興を同時に進めていく必要があります。港についても、元の状態に戻すだけではなく、これからどう使っていくのがいいのか、行政としてできることを考えていきたいと思っています」。
輪島で進む復旧は、港の使い方だけでなく、街の暮らしそのものをどう支えていくかという問いにもつながっている。漁船が戻り、水揚げが再開される一方で、地域の人たちは変化した環境のなかで、仕事や暮らしを続ける方法を探している。
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