BAYCREW’S FESTIVAL OSAKA 2026

NOTO FIELD NOTE

能登のいまと、そこにある営みを訪ねる。

能登の食材と料理

NOTO FIELD NOTE #02食材と生きる、能登の料理人たち。

今年の『BAYCREW’S FESTIVAL』には、七尾〈ひのともり〉の日野貴明さん、輪島〈日本料理 富成〉の冨成寿明さん、そして昨年に続き、輪島〈L’Atelier de NOTO〉〈mebuki -芽吹-〉の池端隼也さんが参加します。会場には、3名のシェフが能登の食材を使った料理を提供するフードブースが登場。料理を通じて、能登の食と地域の今を伝えます。

その一人である冨成さんは、川魚や山菜、きのこなど、能登の自然から得られる食材を料理に使ってきました。店では料理を味わうだけでなく、お客さんと一緒に川や山へ入り、自分たちで食材を採る体験も行っています。

地震と豪雨の影響は、川や山の食材にも及び、川魚がほとんどいなくなった時期があり、きのこや山菜を採るために山へ入ることも難しくなりました。店の再建にも時間がかかる一方、冨成さんの活動は、料理から地域の環境保全へと広がっています。能登の食材や自然への思い、料理人としての活動について話を聞きました。

食材を守ることは、地域の環境を守ること。

山菜やモクズガニなど、近所でもたくさんの食材が採れる。

「料理店を続けていくには、地域の自然を守ることが大切です。川を守れば魚が生きられるし、山を守ればきのこや山菜も採れる。自然があるからこそ、能登の食材を料理として届けることができます」。そう話すのは、日本料理 富成の料理人、冨成寿明さん。地震前から、川の保全活動と店の営業を結びつけ、川魚や山菜、きのこなど、能登の自然から得られる食材を料理に使ってきた。

お客さんと一緒に川へ入り、魚を採って、その日の料理として味わってもらうこともあった。「川の魚を一緒に取りに行って、その日の夕食で食べてもらう。カジカなら、子どもでも石の下を探せば簡単に取れます。自分で取った魚が夜の料理として出てくると、皆さんとても喜んでくれる。大人たちも、子どもの頃に戻ったような感覚で夢中になってくれるんです」。

店舗のすぐそばに流れる町野川。たも網や釣りでとった魚を唐揚げに。

しかし、地震と豪雨によって、川や山の環境は大きく変わった。「川が被害を受けて、魚がほとんどいない時期もありました。少しずつ戻ってきてはいますが、山も大きく崩れてしまい、以前きのこを取りに行っていた場所にも入れなくなった。林道が復旧していない場所も多く、食材を採りに行くこと自体が難しくなっています」。

漁業が再開される一方で、能登の魚は地元よりも金沢へ流れるようになり、地域内で手に入りにくくなった食材もある。「以前は、地元で消費される魚や食材を、比較的安い価格で仕入れることができました。それが今は、金沢へ出ていく分が増え、地元に残る量が少なくなっています。田舎で商売をするメリットが、少しずつ失われているように感じます」。

だからこそ、冨成さんは料理店の営業だけでなく、川や山の環境を守る活動にも取り組んできた。「川をコンクリートで固めてしまえば、魚が生きられる環境がなくなります。山が荒れれば、きのこや山菜も採れなくなる。食材を守ることと、環境を守ることは別ではありません。地域の自然そのものを再生していかなければ、料理店も続けていけないと思っています」。

再開を待ちながら、店の形を考える。

新店舗の外観。リニューアルオープン後は宿泊も受け入れる。

店は地震前から改装工事を進めていた。柱や屋根ができた段階で地震が発生し、その後も電気設備などの不具合が残っている。「本来なら、すでに営業を再開している時期でした。ただ、建物や設備の調整に時間がかかっていて、現在も再開に向けた準備を進めています。今年中には営業を再開できればと思っています」。

復旧のあり方についても、冨成さんには考えるところがある。「川の復旧も、基本的には地震前の状態に戻すという考え方です。でも、せっかく直すのであれば、環境や生物の保全、安全性まで含めた設計にしたい。県は『創造的復興』と掲げていますが、実際には元に戻す以上のことはできないと言われる場面もある。そこには、もどかしさがあります」。

部屋からは能登の四季が臨める。

再建する店では、食事だけでなく宿泊も受け入れる。川や山に入り、食材を採り、夜は料理を味わう。地域の自然と暮らしを一体で体験できる場所を目指している。「都会の人にとっては、蛍や星空、風の音、朝の鳥の声も特別な体験になります。僕たちにとっては当たり前のことですが、そういう環境を感じてもらいたい。食事をするだけではなく、能登で過ごす時間そのものを味わってもらえる場所にしたいと思っています」。

今回の『BAYCREW'S FESTIVAL』では、能登豚の水餃子やかき氷を提供する予定だ。「能登のために動いてくれる人がいることは、本当にありがたいです。僕自身も震災後、長く炊き出しに関わってきました。東北の方々にも助けてもらったので、今度は自分たちが返していきたい。店を再開し、料理を通して能登の食材や環境のことを伝えていくことが、自分の役割だと思っています」。

店を再開することは、料理を提供する場所を取り戻すだけではない。川や山に人が入り、そこで得た食材を味わい、地域の環境について知る。その循環をもう一度つくることでもある。

今回の『BAYCREW’S FESTIVAL』では、冨成さんをはじめとする料理人たちが、能登の食材を使った料理を提供します。料理を味わいながら、能登の食材が育つ環境や、そこに関わる人々の営みにも思いを寄せていただければと思います。まずは会場で、能登の食に触れてみてください。

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