コルビュジエの建築とOutilのボーダー。
Outilの名作であるTRICOT AAST。
このモデルはデザイナーの宇多氏がフランスで出会ったビッグサイズの古いバスクシャツがデザインソースになっている。
特筆すべきは、実際にフランス・バスク地方で60年以上も続く老舗のファクトリーで、生地の生産から裁断、縫製に至るまで、全ての工程を手掛けていること。正真正銘のバスクシャツだ。
Outilの定番ともいえるこのモデルは、その時の宇多氏の気分やアイデアでカラーリングが変わることもある。この色は、氏が先日フランス・フィルミニにて、建築家ル・コルビュジエが設計した一連の集合住宅、ユニタ・ダビタシオンに宿泊予定だったことに起因している。
ル・コルビュジエはスイス生まれで、フランスで活躍した「モダニズム建築の巨匠」といわれる建築家だが、ダブルのスーツにボウタイ、セルフレームのアイウェアといった彼のブレないスタイルは個性派ダンディとしてファッションにも影響を与えた。
彼が愛用していたとされる国有企業や行政機関に支給されていたレザージャケットが「コルビュジエジャケット」と呼ばれるなど、ファッションが好きな現代の人も一度は耳にしたことがある名ではないだろうか。
Outilの宇多氏が今回訪れたユニタ・ダビタシオンというのがこちら。
レストランや商店、幼稚園や体育館などあらゆる施設を併設した集合住宅で、世界遺産委員会に登録された「ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への謙虚な貢献-」の一つである。
赤・青・黄・緑といった原色の強い配色は、ル・コルビュジエ特有の色使いだ。
建築家としてだけではなく、画家としても活躍したコルビュジエが生み出した「カラーキーボード」と呼ばれる色彩を音階になぞらえて、空間に及ぼす効果を「色階」としてカテゴライズした色の組み合わせを現したカラーパレットがある。
話がだいぶ回りくどくなってしまったが、僕らは宇多氏に今回のフランスでの旅路であるユニテ・ダビタシオンから感じ取ることができるコルビュジエのカラーキーボードから渾身の1色。老若男女問わず着ることができるムードの赤茶色をリクエストしたのだ。
特大のサイズ感はキャッチーで、キッズが大人のバスクシャツを着ているような雰囲気が出る。
そこに深みのある枯葉のようなカラーを合わせることで、他にはないバランスの一着が完成した。
ファッションはアートや建築、音楽といったカルチャーを知っていると深みが増し、楽しむことができると昔先輩に教わったことがある。
たしかになんとなく着こなしてしまう感覚的なファッションも楽しいけれど、そこに至ったストーリーや人物が少しでも見えてくると視野が広がって面白い。
4/8(Sat.)発売。
レショップ渋谷店 鈴木