イタリアの古いシルバー製品
vintage Italian factory silver accessory
こんにちはWORLDLY-WISE安藤です。
今回は、イタリアのファクトリーで生産された古いシルバーアクセサリーについて。
イタリアは決して広い国では無い。
人口も日本の約半分ほど。
しかし、シルバー製品の生産量は世界トップクラスを誇る。
たくさんの腕利き職人が暮らし、彼等の職場である伝統的なファクトリーが並び、そこから生み出されるシルバー製品で溢れる国、イタリア。
このたび我々は、そんな国から古いそれらをいくつか掘り出し、実際に手に取って頂けるようにご用意した。
選んだ条件は大きく、品質と芸術性が共に高いことと、想像の余白が残されていること、の3つだ。
まず次項ではその1つ、品質について考えてみたい。
・イタリアのシルバー製品が高評価な理由
掲題の高品質評価に説得力を持たせている要因としては主に、紀元前より続くイタリアのシルバー文化の歴史深さ、その深さに比例した人間/場所/製品の質と量、それらを管理する刻印などが挙げられ、
そういった理由から、現代においても名立たるラグジュアリーブランドがイタリアをシルバー製品の産地に選ぶ。
・品質を管理する刻印
イタリアが、シルバー製品に対する刻印の統一化に動き出したのは、1800年代初頭のこと。
その頃のイタリアといえば、ルネサンスの芸術復興によって高品質な国産シルバー製品が改めて注目され、イタリア国内でのドメスティックシルバー需要が上がり、街にシルバー職人が増加し始め、シルバーの加工技術が飛躍的に進歩しはじめた時代であったので、国が刻印による品質管理を試みたのは当然の流れだったと言えるかもしれない。
イタリアのシルバー製品がヨーロッパを制したと言われる、バロック時代の話だ。
とはいえ、1800年代はまだまだ国公式刻印の使用頻度は低かったとされ、その時代のアンティーク品に打たれているのは、製造者のオリジナル刻印がほとんどを占める。
刻印の普及が一気に進んだのは1900年代初頭。産地と生産者と素材、それぞれの意味をもつ刻印が本腰で制度化され、一般的にシルバー製品から上記の情報が割り出せるようになった。
現代のTiffany製品等でおなじみの☆マークからはじまる刻印が制度化されたのは、1968年のこと。
裏を返せば、基本は年代を割り出せないとされるイタリア刻印だが、☆刻印であればそれは1968年以降の製品と判断出来たりもする。どうやら100%の鑑定方法ではないようだが…。
続いて次項では、芸術性について考えていきたい。
・芸術性
イタリアシルバー製品の芸術性の高さを認める識者は多いが、それを裏付ける事はとても難しいように感じる。
なぜなら芸術性やデザイン性は数値化出来無いし、その評価は個人の価値観の違いによって変化するものなので、他人と共通である事の方が不思議だと思うからだ。
しかし、あえてそれらの芸術性に対する評価に説得力を加えるとすれば、古都ローマから続くシルバー文化の長さや、ルネサンスにおける芸術復興運動の拠点がイタリアであったこと、などの史実を挙げる方が多いだろう。
・歴史の長さ
古都ローマ史には、古代人が扱った最初の貴金属の1つであるシルバーを、いち早く取り入れていた記録がある。
つまり、イタリアのシルバー文化は、紀元前から続いているという事だ。
古都ローマでシルバーが重宝された主な理由は、その美しさと希少性だ。
特に希少性(=資産価値)は現代からは考えられないほど高く、シルバーの所有自体が社会的地位のシンボルとなっていた。必然的に、支配層を中心に熱狂的な収集家が多く現れ、古代ギリシャで作られたシルバー製品のほとんどをローマ人が買い占めた。
やがて、その文化は支配層に留まらず普及し、長きにわたるローマ史~イタリア史へと継承されていく。
・ルネサンス
ご存知ルネサンスとは、14~16世紀イタリアを中心にヨーロッパ全体に展開された文芸運動。
その思想の根本は人間精神の改革にあり、人間性の解放や個性の尊重などの現実主義的な主張が人民全体に広まった。
つまり、中世の支配的思想から離れ、もっと人間らしく生きて行こうぜっていうヒューマニズムな思想で、それぞれが良いと思えるものを良いとして良い時代が訪れた。
そして、人々は自らの感覚をモザイク無しでアウトプットすべく、その手法に文芸を選び、その手段として自己の品性を高める目的で古都ローマの古典文化を再生し始め、それらが文芸復興という大きな運動として形となっていった。
代表的な芸術家にはミケランジェロやダヴィンチやラファエロなどが挙げられ、古都ローマの遺物から多くを学ぶために、それらが多く残るローマやフィレンツェ等を拠点として、それぞれ絵画や建築や彫刻などの多方面で才能を発揮し、彼等の文芸は顧客達を魅了した。
彼等の顧客とは、貿易で富を築き、国をまたいで多くを体験することで目を肥やした富裕層であった。
他にも、総じて文芸と呼ばれるジャンル全体が活発化したこの時代。
もちろんシルバーなどの彫金も例外ではない。
1700年代の終わりにナポレオン1世がローマを占領した際、とんでもない数の文芸品を持ち去ったとされるが、それは、当時の彼らの顧客同様に、その芸術性の高さに魅了されたからに違いない。
最後の項では、想像の余白について考えたい。
・想像の余白
生産者の体温をよりダイレクトに楽しむことが出来るファクトリー製品。
国は違えど、我々が提案するBYSMITHも同様の魅力を伝えるべく始動したプロジェクトなのだが、その最大の魅力は製品の匿名性からくるブランクな空気感にあるのでは、と自分は考えている。
ブランクがゆえに、その製品の魅力について受け手が想像する余白が多く残っている状態。そこに楽しみがあるのではないかと。
大袈裟な看板を掲げないファクトリー製品の情報を探るには、生産時に押された刻印が頼りとなるが、イタリア製品においては、そこから読み取れるのは多くても産地と素材ぐらいのもんで、運良く生産者の印が彫られていたとしても、その鑑定は大体が難航を極める。というか分からない事の方が多いのではないかと思う。
つまり、質と素材は保証されたうえでそれ以上の生産背景がすぐには分からない製品。印された少ない情報を使ってこちらが自由に想像できる状態の製品。そういった想像の余白が大きい状態の製品。
今回ご提案の製品たちは、そういった類の魅力をもっています。
ぜひ、素敵な想像を。
最後まで読んで頂きありがとうございました。