古い日本製の腕時計
KING SEIKO 56系 45系 vintage watch
こんにちはWORLDLY-WISE安藤です。
今回は、僭越ながらキングセイコーについて。
~改めましてSEIKOとは~
東洋の時計王こと服部金太郎氏が服部時計店を興したのは、今から約150年前のこと。
それから約50年の時を経て、彼らは日本で初めての腕時計を作り始めた。
その時計工場の愛称は、精工舎(SEIKO-SHA)。
彼らが自らをSEIKO(精工)と名乗りはじめたのは、モノづくり現場へのリスペクトがあってこそに違いない。
SEIKOが作りだす時計は、世界最高峰と名高いスイス製にも負けないほど正確に時を刻み、日本製時計の品質の良さを世界にとどろかせた。そして今もなお、時計史において数々の結果を残し続けている。
その全てをここにはとても書ききれないが、キングセイコー販売時期あたりにピントを当て、少しだけ歴史を振り返らせて頂く。
・1964東京オリンピックで公式時計を担当。当時、オメガ/ロンジンの独占状態がながらく続く中での快挙であった。
・1967のスイス天文台コンクールにて、SEIKOの日本製腕時計が上位を独占。
・1969には、世界初の水晶振動子を用いた腕時計クオーツアストロンを発表。後にクオーツショックと呼ばれる時計史における大革命。世界的に腕時計の在り方自体を変えてしまった。
など、つまりSEIKOは腕時計の世界史を語る上で決して欠かせない日本企業だ。
~SEIKOがKINGを冠した腕時計~
キングセイコーは、名品揃いのSEIKO腕時計の中でも、最高級と謳われる数少ないブランドの1つ。
1961~75の、僅か14年間のみ製造されていたブランドだ。
第1の魅力は正確さ。
それは、世界最高峰レベルのSEIKO独自の検定規格と、世界水準であるスイスクロノメーター規格を共にクリアしている事で証明されている。
(ご存じクロノメーター規格とは、超正確に時を刻む時計だけがクリアできる世界的な公式基準。クリアできる時計は、そう多くない)
それと並び魅力となっているのが、バリエーションの多さ。
ムーブメントに始まり、ダイヤルやケース等の多種多様なデザイン違いなども数多く存在する。
こうしたバリエーションの多様性は、多くのコレクターを楽しませる一方で、その多さからどれを選んでいいのやら状態になってしまう方も多かれ少なかれいらっしゃるはず。
だが、キングセイコーはどれを選んでも正確さ含め実用性が超一級である為、パッと直感でお選び頂いても後悔してしまうことはないだろう。もちろん動作確認は必要だし状態の良し悪しはあるが、うちでご用意している個体に関してはそのあたりもご安心頂きたい。
~当店でご用意のモデル~
今回のご用意したのは1968に発売された45系と56系。
45系はキングセイコー初の手巻きハイビート。亀戸工場製。
従来のロービートから振動数を向上させたことで、正確さをさらにアップさせたモデル。
後に、スイス天文台コンクールで上位を占めたモデルのベースとしても知られている。
生産期間3年間の希少モデルだ。
56系はキングセイコー初の自動巻きハイビート。キングセイコーでは初となる諏訪工場製。
日本製の時計として初めてスイスクロノメーター規格をクリアしたモデル。
(もともとそれと同等以上の水準をもつSEIKO独自の検定規格を設けていたのだが、日本クロノメーター協会発足のタイミングで世界水準もクリアした)。
生産期間は7年間と、こちらも希少モデルだ。
~クランドセイコーとの違い~
日本製腕時計を代表するモデルとして知られるキングセイコーとグランドセイコー。
どちらも、世界最高峰と名高いスイス製腕時計を超えるべく、同時期にスタートしたモデルだ。
2つのブランドはコンセプトや生産背景の違いから価格帯が異なるため、よく誤解されてしまいがちなのだが、決してキングはグランドの廉価版では無い。
ムーブメントの正確さは同等。というか、今回提案の56系にいたっては、後にグランドセイコーと共通で使われる事となるムーブメントが使用されている。つまり中身は同じである。異なるのは考え方だ。
個人的な感想をたくさん交えたうえで簡単に言わせて頂くと、
グランドセイコーは、全てにおいて最高級にこだわり、たっぷりとわかりやすく豪華に、立体的に作られているのに対して、
キングセイコーは、ミニマルな実用性の美しさにこだわり、小ぶりで薄くフラットに絞り込んで平面的に作られているモデルがメインとなっている。
価格差は、恐らくこういった考え方の違いが反映された結果なはずだ。
他にもキングセイコーならではの魅力として、太めのインデックスにシェイプの効いた秒針からなる視認性の高さや、エッジのきいた風防デザインなどがあったりするが、それらは総じてどこか無機質で、飾らない端正な顔つきだ。
それはまるで、江戸時代の独自文化にあった様な、“粋”が詰め込まれているように感じる。
目立たせずに目立たせる、飾らずに飾る、洗練されたデザインと実用性のバランス。
この、どこか渋くマニアックで、分かる人には分かる感が自分はたまらなく好きだ。
最後まで読んで頂きありがとうございました。