アメリカの伝統的な指輪
American Class Ring
こんにちはWORLDLY-WISE安藤です。
いま、当店のラインナップの中で特に推したいカテゴリ、クラスリング。
今回は、その理由をほんの少しだけ聞いて下さい(おまえの推しなんざ知らねえよって気持ちは少しだけ胸の奥にしまって頂いて)。
「Class Ring」
ご存じクラスリングとは、士官学校をはじめあらゆる学校の卒業証リングの総称。
それは、“出身校への誇り”や“苦楽を共にした仲間達との絆”などといった特別な思いが込められ、繊細に丁寧にオーダーされ、それに見合った腕のよい職人によって製造されるため、総じてクオリティが高い。
そんなクラスリングといえば本場はアメリカなわけだが、そのルーツはイギリスのシグネットリングにあったりする。
「異国文化の継承」
イギリス貴族は、中世より自分の紋章をリングに彫り、身分証や実用品として常に身に付けていた。
ちなみに、 “イギリス貴族の紋章”とは“日本の家紋”とは違い、“1人につずつ”与えられる、よりパーソナルなもの。ってのはあまり知られていない。10へえ。
そのような紋章が彫られた指輪は、封蝋(封書綴じの蝋)等にも使われていたりなどの背景を持つ事から、日本でいうところの実印のような感覚なのかもしれない。
つまり、本物のシグネットリングは純粋な一点物であり、アメリカのクラスリングは、まずその点を引き継ぐ。
「伝統の始まりから浸透にかけて」
貴族制度の無いアメリカにはシグネットリングの文化は無かったが、代わり(代わりに?)クラスリングの文化が発達した。
発祥は1835年、アメリカ陸軍士官学校。
陸軍きってのエリート集団である彼等は、イギリスのシグネットリングをモデルに卒業証リングを作りはじめた。
それはやがて伝統となり、海軍士官学校、空軍士官学校へと広がる。
ミリタリーリングと呼ばれるこの伝統は、やがてアイビーリーグ、要するに大学へと伝わり、広い意味でクラスリングとしての文化が根付いていく。
つまり、クラスリング自体はアメリカ独自の文化であるので、
シグネットリングの本場はイギリスなのに対して、クラスリングの本場はアメリカ。
と言い切ってしまっても問題ないはずだ。
同じコンセプトで、アメリカでは何かの誇りとしてリングを作る文化が濃い。
それは例えば、チャンピオンシップリング、クラブリング、アワードリング、コーポレートリング、メソニックリングなどが挙げられ、それらもまたクラスリング同様に、作る目的/動機/過程が特別であるので、総じて作りがとても良い。
そのため、古物ファンならずとも垂涎モノが多いジャンルなのだが、シグネットリングと同様に本来は所有者が手放すはずが無いものなので、本物が出回る機会はそう多くない。
「苦労してでも実物を手に入れたい理由」
残念ながら日本ではシグネットリングもクラスリングも、本来の伝統的背景が取っ払われ、ただの“指輪の形状の一種”として捉えられている、なんてこともあったりなかったり。
その影響かどうかはさておき、国内市場では形状のみを真似たロストワックス製法のレプリカが目立つが、これらは見た目要素のみのファッションリングであり、本来のそれらがもつ魅力を満たすものではない。
実物のクラスリングには極めて高いクラフトマンシップが宿る。
1点1点異なる“繊細なオーダー”に対応するためには、一点ずつ丁寧にハンドメイドする必要があり、それを実現する職人の高い技術が必須なので、自動的に宿るのだ。
その“繊細なオーダー”たるや、想像するだけで職人さんの肩をぽんぽんしてコーヒーをごちそうしたくなる。
ぜひ一緒に想像してみてほしい。
リングの形状に始まり、地金、ストーン、石座文字、左右それぞれのサイドパネル、フィニッシングの種類、バンド部分の加工、リング内側の刻印、などなど探せばもっとあるかもしれない。
もちろんサイズも。それぞれが装着したい指を自由に決めたうえでオーダーされる。
(そう、指は自由だ。)
それに加え、それぞれの箇所に一人ひとり異なる情報(学校章、個人名や学位・学籍番号、専攻マーク、卒業年度などなど)がオーダーされていく、、、。
そして製造方法だが、純粋な一点物なので、もちろん一気に大量生産!というわけにはいかず。
当然ながら1点1点ディティールを変えての製造になるし、校章などのデザインを小さいリング上で正確に再現しなくてはならないし、高い視認性だって求められる。
それらを実現できるのは、個別に型の差し替えが可能で、文字や模様を立体的に凸で表現することの出来る、高い技術からなる金型製法だけなのだ。
(ロストワックス製法では、文字や模様が凹で表現されるため彫りが浅くなり、細かな文字等が潰れてしまうのだそう)
ちなみにこの金型製法の技術は、硬貨や勲章の製法と同種だったりする。
(クラスリングと同じく彫刻内容の視認性が求められるので)
「華奢で繊細で上品なクラスリング」
もしかしたらクラスリングに対して、“大きいサイズと華美なデザイン”という先入観をもつ方も少なくないかもしれない。実際どうなのかは置いといて。
今回WWでは逆に(逆に?)国内ではあまり提案されていないであろうハイスクールリングに焦点を当て、繊細で上品でライトウェイトなものを中心にセレクトさせて頂いた。
結果として、上品にナチュラルに楽しめる、クラスリングとしてとても新鮮な個体が揃ったので、
この機会に新しいジャンルにはまって頂けたら光栄です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。