ヴィンテージコインを解体/再構築した純銀バングル
American jeweler / bolted studios / silver bangle / vintage coin
WORLDLY-WISE安藤です。
今回は、新たにSignature#1バングルをラインナップに加えたばかりのアメリカンジュエラー"BOLTED STUDIOS"をご紹介。
「アーキテクチャ&スネーク」
ご存知、BOLTED STUDIOSはW.W.が立ち上げからメインブランドとして取扱っているアメリカンジュエラー。
その粛然かつ凶暴なアートワークは、生産者デイビッドが非日常的な日常でインプットした様々な価値観を集合体としてアウトプットした産物。(自分で書いておいてよく解らなくなってくるが、しばしお付き合い下さい。)
建築家としても素晴らしいキャリアをもつ彼は、とてもスマートな顔を持つ一方で、自ら仕留めた蛇の革でギターストラップをハンドメイドしてしまったりと、さながら殺人犯も逃げ出すダーティーハリーのようなワイルドさも併せ持つ。
この両面性こそBOLTED STUDIOS最大の魅力。
もし、安藤なに言ってんだ?状態の方がいたとしたら、いつもはドライでサバサバな女性がスヌーピーの可愛いハンカチを使っていた、そんなシーンを想像してみて欲しい。それが両面性の魅力だ。
「まずはコインを真っニつ」
BOLTED STUDIOSの製作は、まず純銀のコインを真っ二つに割るところから始まる。
デイビッド自身が収集している純銀のヴィンテージアメリカンコインをのこぎりで真っ二つに割り、溶かし、再構築したのがBOLTED STUDIOSのジュエリーだ。
素材がもつ複雑でヘビーウェイトな背景に対して、ストレートでシンプルなサステナビリティ。ここにおいても両面性を持つ。
続いて次項では、素材である純銀コインの背景がどう濃いのかを深掘りしていく。
ちなみにYouTubeで見れるBOLTED STUDIOSの製作工程動画めちゃくちゃお勧めです。面白いので是非。( https://www.youtube.com/watch?v=d3a5FrnSzo8 )
「天才彫刻家が生んだヴィンテージコイン」
芸術肌のデイビッドが素材に選んだのは、”インディアンヘッド/バッファロー”と呼ばれるヴィンテージアメリカンコイン。
アメリカ人彫刻家ジェームス・アール・フレイザーがデザインし、芸術性の高さが世界的に評価されているコインだ。
そのデザイン背景には、強めにアメリカンソウルが注入されている。
このコイン、オリジナルは1913~1938に発行されていたニッケル製アメリカン5セント。
約100年前に廃盤となっている有名なコインだが、その高い芸術性から、アメリカ政府が記念貨幣として、純度99.99%の純銀製で復刻していたことはあまり知られてなかったりする。デイビッドが選んだのはそれ。アメリカ政府が品質を保証する純銀コイン。修行から戻ってきたカカロットなみに信頼できる。
「旅路の終わり」
コインをデザインしたジェームス・アール・フレイザーは、今から約100年前に活動していたアメリカ人彫刻家。
彼の作品は”ワシントンの象徴的な建造物には不可欠”とも言われる程の認められっぷりで、アメリカンアートに関心のある方ならきっとご存知であろう人物。
彼は白人だが、子供の頃にエンジニアだった父親の仕事の関係でサウス・ダコダに住んでいたので、開拓者の様子をそばで見ていたのと同時に、近くに住むインディアン達との付き合いも深かった。
そんな少年時代が、今回のバッファローコインも含め作品の多くに反映されている。
彼の代表作は「End of the trail」と名付けられたブロンズ像。
コイン同様、芸術性の高さが世界的に認められており、メトロポリタンや国立カーボーイ博物館など、いくつもの美術館に展示されている。
直訳で"旅路の終わり"と名付けられたこの像は、馬上でうなだれた三つ編髪のアメリカ先住民が題材とされているのだが、
知名度ゆえにその解釈の幅も広く、そのテーマは多くの有識者に論じられていたりとかして、
一説では戦いに疲れきった先住民の姿を表現した彫刻だとも言われている。
もしかしたら、クレイジー・ホースやジェロニモらの背景と重なる部分もあるのかもしれないなあ、などと思いを馳せながらBOLTED STUDIOSのジュエリーを着用する事で、米米CLUBなみに浪漫飛行することが出来るだろう。
「ルーツは鉄扉か鉄馬か」
どんなジャンルにおいても能力を発揮している方は、みはさんユーモアに富んでいる。どんなタイミングでも楽しんでいて、ウィットに富んだ笑いを忘れない。
その反面、自分のような凡人以下の人間が対話すると、本気か冗談かわからなくなってしまうケースが多々ある。センスが追い付かないのだ。
そして、デイビッドもその類である。
BOLTED STUDIOSのジュエリーに見られる、流れるような”ひねり”または”ヘリックス”もしくは”トルサード”のデザインルーツを聞いてみると、本気か冗談かわからないゾーンに入る為、真実が奥へ奥へと逃げてゆき、結局は想像ばかりが膨んでいく。
つまり、芸術品にとって一番良い状態となる。もしかしたら、そこまでが彼アートワークなのかもしれないが。
しかし、散りばめられた情報から金田一少年ばりに推理してみると、二つのルーツ候補が浮かびあがる。それが“鉄扉”と“鉄馬”だ。
鉄扉とは、曲げたりひねったりという手作業のみで加工された"アイアンバー"を素材とした扉のこと。
その加工されたアイアンバーは、アイアンワークまたはロートアイアン、日本語で鍛鉄などと呼ばれるアート品であり、そのデザインはBOLTED STUDIOSのジュエリーと通ずるものがある。
建築アートという点においてもデイビッドのキャリアとリンクするため、もしかしたらルーツの一部なのかもしれない。わかんないけど。
鉄馬とはバイクのこと。
バイク乗りじゃなくても、カスタムバイクビルダー”インディアン・ラリー“の名前を知る方は多い。
1900年代末に主に活動していた彼は、天才モーターサイクルアーティストと呼ばれた芸術家であり、約2000万円で落札された作品はあまりにも有名。
仕事であるバイクスタント中に亡くなった、伝説的な人物だ。
そんな彼が手掛けたアートワークの中に、フロントフォーク等が美しくひねられた個体が存在し、それがBOLTED STUDIOSのジュエリーデザインと重なる。
荒野を車やバイクで駆けるデイビッドの非日常的な日常ともリンクするため、こちらももしかしたらルーツの一部なのかもしれない。わかんないけど。
「色々書いたが全部忘れて楽しんで欲しい」
BOLTED STUDIOSは、その背景があまりにも濃いため、説明しているとどうしてもなんだかドロドロとしてきてしまうのだが、
製品としてアウトプットされたジュエリーはあっけないくらい削ぎ落とされたサラサラで上品なデザインだ。
言い換えれば、
たっぷりと濃い背景を隠し持っているからこそ、アウトプットはすっきりサラサラで良いのかもしれない。
着用側も、重たい本を読む前みたいに構えず、世紀末リーダー伝たけしを読む前ぐらいの脱力感で楽しむのが正解なのかもしれない。
ちなみに素材である純度99.99%の銀は不純物が混入していないに等しいので、黒く変色したりしないし、金属アレルギーなどの問題も少ない。
日常的なケアが楽だったり、人体に優しかったりなんていうのは、愛用していくうえでじつは一番重要だったりする。
BOLTED STUDIOSはそういった面でもカジュアルに楽しめるジュエリーだ。
最後にひとつだけ、
ここまで読んで頂いた方とスヌーピーのギャップが素敵な女性へ向けて、「自分で決めるんだ、誰にもアドバイスなんかさせるなよ」というチャーリーブラウンの名台詞を贈りたい。色々書いたが全部忘れて楽しんで欲しいという思いを込めて。
ありがとうございました。