【デザイナーインタビュー】PHANTOM JEWELRY
WORLDLY-WISEが大注目する国内発のコンテンポラリージュエリーブランド「Phantom Jewelry"ファントムジュエリー"」。
2月末までの期間限定で開催した受注オーダーも予想を遥かに超えたオーダーを頂き、急遽期間を延長してオンラインストア限定で展開するなど、シルバージュエラーからも高い注目を浴びている国内発のジュエリーブランドです。
本企画は、そんなファントムを主催するデザイナー「佐藤 幸介」氏を迎え、シルバージュエリーに対する"新しい価値観"を紐解いていく、スペシャルなインタビュー記事。
世界中を旅して得たシルバージュエリーへの"視点"や"文化"、そしてブランドを立ち上げたきっかけやプロダクトへのこだわりなど、ファントムの魅力がたっぷりと詰まったインタビューを、前編と後編に切り分けて特集します。
「その人のアイデンティティを現せるジュエリー」
- PHANTOMを立ち上げるまでの背景や、佐藤さんがシルバースミスになったきっかけやストーリーなどありますか?
- 佐藤 長年ジュエリー製作に携わっていた私は、国内はもちろん、ヨーロッパ・アジアなど様々な地へ訪れて、その文化に触れてきました。しかし、所謂宝飾品や単に装身具といったシルバーアクセサリーといったものではなく、もっと体の一部・生活の一部として身につける人と一体になれるようなジュエリー。更には、その人のアイデンティティを現せるジュエリーを制作したいと考えるようになりました。
そして、よりプリミティブに装身具と生活が深く結びついている人々・文化を肌で感じてみたく、当時まだ訪れたことのなかった東南アジア(タイ・マレーシア・インド・ネパール・ブータンなど)を巡った旅をすることにしました。
- ジュエリーを巡った旅とはなんとも素敵ですね。そのアジアの旅では、ジュエリーに対しどんなインスピレーションが溢れていたのでしょうか?
-佐藤 東南アジアはジュエリーの生産、また石の生産・加工で古くから現在に至るまで、また祭具や神具、生活用品といった人々の生活に深く結びついた装身具を生産している地域です。
そこで私が出会ったものはヨーロッパのものとは、全く違った種類の違うジュエリーでした。
古くから祭事や成人・結婚式・葬式など人生の大事な時に身につける、代々受け継がれてきたジュエリーたち。そんなヴィンテージのジュエリーに出会いました。それらは、パワーが有り、相当な年月が経っているにも関わらず生々しさを感じることができます。技術も一見すればどう作っているかはわからないものが多く、機能的で宗教を背景にした独特のデザインのものばかりです。
このような、人と生活と、文化が関わりを持ったジュエリー、これが私が探し求めていたものだったのです。
そして、その旅の途中とある立ち寄ったネパールのヴィンテージショップで後々の「PHANTOM」の世界観となる、古い言い伝えを聞きました。私はその伝承、その男性がもたらした宝飾品をイメージソースとし、「PHANTOM」を立ち上げるきっかけになりました。
- なるほど。全てはそのネパールで出会ったジュエリーや、その土地の言い伝えが、PHANTOMのエッセンシャルになっているんですね。
- 佐藤 ただそれらをサンプリングしたのでは、アイデンティティにはなりません。そのエッセンスを自分のフィルター、つまり自分のルーツでもある私が思い描く男性像。ストリート・モード・コンテンポラリー・エレガントといったような現代を生きる男性。そんなライフスタイルに合うジュエリーを創作することが「PHANTOM」なのです。
「生々しいものをそのままデザインにはしない。」
- ファントムのジュエリーには、国内では中々見られないコンテンポラリーの要素や、トライバルかつエキゾチックな印象を受けます。そういったコンセプチュアルなジュエリーを誕生させたきっかけなどはございますか?
- 佐藤 そう言ってもらえるのはとても嬉しいです。ジュエリーのルーツはお守り・神具・祭具また奴隷の価値を記すものなど、古くから人の生活・文化に生々しく関わってきました。決してポジティブなルーツだけではないのですが、それは現代の装身具という意味合いより、私は生活の一部、皮膚や体の一部、思想や概念だったのだと思います。
しかしそういった、生々しいものをそのままデザインすることは、私の想うところではありません。そういう生々しくパワーのあるものを「PHANTOM」の解釈で現代風にアレンジしています。
そういうトライバル&コンテンポラリー的な要素、そして私のクリエイティブのルーツを感じ取ってもらえれば幸いです。
「オブジェクトではなくリアルクローズとして。」
- ファントムの製作過程(工程)で最もこだわっているポイントや、製作での大変な事などはございますか?
- 佐藤 一番大事にしていることは、自分の手で製作することです。手で作ることの意味、パワーはもはや皆さんご承知の通りで言うまでもありませんが、そこに個性が生まれ自身のアイデンティティが宿ると考えています。
そしてクリエイティブに際して大事にしていることは、オブジェクトではなくリアルクローズとして成り立たたなければいけないと思っています。
そのため、ボリュームやシルエットには最新の注意をはらい、思い通りに行かなければ何度も作り直します。ジュエリーは0.01ミリ単位の世界が存在します。ボリューム感やシルエットや細部に注意をはらい、仕上げなど、野暮ったくならずに洗練されたものになるように意識しています。
- ありがとうございます。最後に、佐藤さんが思うシルバージュエリー(装身具)の魅力とは?
- 佐藤 その人のアイデンティティを現すものだと考えています。
"PHANTOM" PROFILE
Design by KOSUKE SATOH
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佐藤幸介
2003 年ジュエリーカレッジにて彫金を学ぶ。その後、宝飾企業にてジュエリー制作に従事。
2014 年に独立後、国内外のアクセサリーブランドのデザイン及びディレクションを担当。
世界中を旅で渡り歩き、2019 年「PHANTOM」を立ち上げる。
すべてのクリエイションは、デザイナーのハンドメイドにより制作されています。
手で作ること、そしてパーソナルな衝動を大切にしたものづくりを心がけています。
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