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L'ECHOPPE金子恵治を魅了した MYTHINKSという明日のベーシック。

  • 「スッと自然に入ってくる服」。

    そう金子恵治が表現するブランド・MYTHINKSが、今シーズンよりL'ECHOPPEのラインナップに加わる。
    手がけるのは、大手セレクショップにて25年にわたりバイイングを勤め上げた吉光ノブ氏。
    バイイングに携わってきた両者ならではのモノ作りとはどんなものなのだろう。
    そして、ベーシックを軽やかに上書きするMYTHINKSの魅力とは一体なんなのだろうか。

  • 金子恵治
    セレクトショップ「EDIFICE」にてバイヤーを務めた後に独立。
    自身の活動を経て、2015 年に「L'ECHOPPE」を立ち上げる。
    最近では「WEEKEND」や「THE COOP」「 INVENTORY」を立ち上げ活躍は多岐にわたる。

  • 吉光ノブ
    25年の長きにわたり、日本のアパレルブランドでバイヤーとして活躍。その後、独立し1年半の海外生活を経て、2015年秋冬シーズンに自身のブランド「MYTHINKS」をスタート。バイヤー時代からの哲学、“私ならいかに表現できるのか?”を視点に、古き良きベーシックなアイテムに新鮮な風を吹き込んでいる。

  • スッと当たり前のように存在する服。

  • ショップは違いますが、バイヤーとして金子さんの先輩でもある吉光さん。お二人がはじめてお会いされたのはいつですか?
     
    金子:僕がEDIFICEのバイヤーになりたての頃。26歳くらいのときですね。吉光さんの前職である聖林公司の展示会に行ったときにたまにお見かけするくらいで。キャリアも吉光さんの方が全然上ですし、当時は名前も知らなくて。ただ陰からこそっと見ている感じでした。
     
    吉光:じっくり話したことなかったもんね。お互い意識してただろうけど、当時はいわばライバルみたいな立場だし、そこまで深く関わらなかった。

  • 金子:それで、ちゃんとお話しさせてもらったのが半年ほど前。SEVEN BY SEVENの川上(淳也)さんに紹介してもらったのがキッカケでした。以前からMYTHINKSのことは気になっていたブランドだったんですが、そのデザイナーが吉光さんだということはまったく知らず。紹介をキッカケにいろんな点と点が繋がって、一本の線になりました。純粋に出会えたことがうれしかったですね。
     
    吉光:そうだね、その時に僕の服もちゃんと見てもらってね。
     
    金子:今シーズンのものやアーカイブも見せてもらって、すぐに取り扱いさせてほしいとお願いしました。

  • 即決された理由はなんだったんでしょうか?
     
    金子:見た目だけで判断することもあるんですが、服はルックス以外にもいろんな要素で構成されていると思うんです。作り手の人柄だったり、ライフスタイルだったり。極端な話、実物を見なくてもこの人が作るものだったらオーダーしたいってこともよくあって。今回は完全にそのパターン。MYTHINKSの服を見た瞬間に、直感的に「ウチでやりたい」って思ったんです。言葉にしづらいんですが、スッと自然に入ってくる感覚。普通そうに見えるけど、なにかが違うと直感的に思う服って、意外とないんですよね。
     
    吉光:なにかが違うってよく言われるんだよね。
     
    金子:ですよね。それは吉光さん自身がいろんな服を見てきたなかで、これぞというシルエットがあり、この服にはこんな素材っていう長年の経験からできた方程式があるからなのかなと思うんです。メンズウェアや古着が好きな方が見れば、すんなり腑に落ちてしまう。そんな服なんです。

  • 今シーズンは、どんなテーマで作られたんですか?
     
    吉光:いまはなかなか外出ができない厳しい環境ですよね。だから、リゾートに行ったらこんな服が着たいというような空想上の旅を具現化していった感じです。
     
    ー 如何にもバカンスというカラーリングや柄ではなく、柔らかな素材感や緩やかなシルエットからリゾートを感じますね。
     
    吉光:必然的に家にこもることが多くなるから、僕自身、外でもリラックスしたいと思っています。それとラゲージバッグに収納できるようなコンパクトでミニマムなコレクションにしたいと思いました。キャリーケースの制限が25kg。限られたサイズの中でなにを選ぶかって結構大事で。これは僕がよく旅をしていたから表現できたことなのかと思います。

  • あえて制限をもたせたのは?
     
    吉光:少し足りないくらいの方が、次はこうしようってイメージが膨らむじゃないですか。その方がきっと楽しい。僕のブランドはなにより楽しみが最優先なんです。まだ4年しかやってないので、やりたいことのほんのカケラ程度しか表現できていないですが。
     
    金子:これまでの経験を考えると、服作りの世界に飛び込むってほんとにすごいですよ。
     
    吉光:今回は空想の旅みたいなものがテーマだけど、次はよりリアルなタウンユースの服をつくりたいと思っています。ステージがちょっと変わる感じかな。言葉は誰がつくったか、“ワンマイルウェア”や“ネイバーフッドな洋服”だとか、そういう服です。
     
    金子:次も楽しみですね。
     
    吉光:そう言ってもらえてうれしいですね。それと僕たちって洋服と戯れてきたと思うんです。そうやって楽しく洋服と戯れていると自ずと人が集まる。そこが共通するのかなって。バイヤーをしていた時と今では少し目線が変わったかもしれないけど、いまだにストリートから勉強させてもらっている感覚がありますね。

  • お二人がバイヤーを経験しているからこそ、理解し合える部分も多分にありますか?
     
    金子:スッと入ってきたのはそこかもしれないですね。ただその反面、30歳周りが多いウチのスタッフにこの感覚が伝わるかなっていうところが悩みだったんです。普段は一方的に決めてくることが多いんですよ。「僕はこう思ったので、やります」みたいな。だけど、MYTHINKSは、若いスタッフの反応を見てからにしようと思って。
     
    吉光:ラック持って、見せに行かせてもらったね。
     
    金子:はい。みんなは吉光さんがどんなキャリアの人なのかを知らないし、ブランドのこともそこまで詳しくないから、一点一点のモノがどうなんだっていう見方をしていて。おそらく、パッと見は「普通だな」くらいの感覚だったと思うんですが、着た瞬間から目の色が変わっていって、そこから試着大会みたいな感じでした。僕と感じ取り方は違うけど、袖を通したときの感覚は一緒なんだろうなと。知識のある・なしは関係なく、着ればわかる服なんだなと確信しました。

  • 吉光:着ればわかるってところ理解してもらえて本当にうれしい。最高の褒め言葉です。
     
    金子:吉光さんにとっても若い洋服好きと接するのも久しぶりでしたか?
     
    吉光:うん、すごく楽しかった。アナログっぽい感じ、パーソントゥパーソンというか、懐かしい気持ちもあって、いい刺激になりましたよ。

  • 取り扱いがスタートする前にバッグとしてMINIMINI DUFFLEがリリースされていました。今後また別注などのアイテムも計画されてますか?
     
    金子:いまのところ予定はないですが、自然発生的にアイデアが出れば、またやりたいですね。僕自身、毎シーズン別注をやろうとは思っていなくて、いつも行き当たりばったりなんです。
     
    吉光:今はお店に置いてもらえるだけでも大満足。実はそのバッグには開発秘話があって、僕はよくタクシーの中にバッグを忘れたり、すぐなくしちゃったりするんです。だから肌身離さず持てるバッグとして、あれをつくったんです。僕自身にとってのバッグ作りはあれで一旦完結。だけど、自分の周りに自転車に乗る人がいたとしたら、その人が使いやすいものはなんだろうと僕なりに考えて作ってみるのもありだなって思ってます。
     
    ーある種、ギフトのようですね。
     
    吉光:そういうオーダーをされたら、MYTHINKS以上に頑張っちゃうかもしれないですね(笑)。やるからには喜んでもらいたい。その気持ちはバイヤーの頃から変わってないかもしれないですね。
     
    金子:もしかしたら、人のために作るラインができるかもしれないですね。

  • 2人のバイヤーと異なるアプローチ。

  • 金子さん自身もL'ECHOPPEのオリジナルレーベル・LEを通して、服づくりに携わられていますが、バイヤーがつくる服という点で学びもありますか?

  • 金子:僕と吉光さんではアプローチの仕方が全然違うんですよね。
     
    吉光:そうかもしれないね。僕の場合、バイヤーをやっているときからそうなんだけど、
    ボタンを一個多くしたいとかそういうことをよく考えてました。今はそういう蓄積を形にしていってるような感覚。
     
    金子:僕は自分でどうこうしたいとはあまり思わないんです。結果として、不満が改善できたみたいなことはあるんですが、もう少し自分の要素は薄いです。

  • なるほど。どういったアプローチをされることが多いですか?
     
    金子:世の中に出回っている服と現在のギャップみたいなものを考えることが多くて。例えば、9サイズ展開のシャツ。あれは、いろんな体型の人がいるのに、S、M、Lの中から選んでくださいっていうのはちょっと強引だよなというところからスタートしています。素材に関しても自分はこの生地が好きだからこうするみたいな感覚で作れないタイプなんですよね。だけど、もしかしたらスイッチを切り替えればそういう考え方ができるのかもしれない。だから、吉光さんのスタイルにはとても憧れます。僕もいつかはそういうパーソナルな視点でモノ作りがしてみたいなと思いました。

  • 吉光さんはバイヤーからデザイナーに肩書きが変わられたタイミングにスイッチも切り替わったんですか?
     
    金子:それはぜひ聞いてみたいですね。
     
    吉光:求められるからじゃないですかね? 周りの人から、ノブ(吉光)が作った服はきっとおもしろいよと言ってもらえて。料理とかもそうじゃないですか、「料理上手そうだから、なんか作ってよ」みたいな。そんなことない?

  • 金子:あー、ありますね。
     
    吉光:僕ぐらいの年齢になると、良いものを見てきたからっていう期待もされてたんじゃないかな。だけど、まだモノ作りをはじめて間もないから、手馴れてないこともたくさんあって。構築しきれてないものもごまんとあります。金子くんが言ったように、僕がいままでいろんなブランドの服を紹介してきた中で、僕だったらこうするみたいなものがずっとあったから、服作りっていうより編集作業なんですよね。だから、デザイナーって呼ばれるとすごく恥ずかしい(笑)。編集者って呼ばれる方がしっくりときます。

  • 金子:確かに、エディターって感じかもしれないですね。僕は店のスタッフに、バイイングはいいとこ探しだよってよく言うんです。いいところを見つけるか、悪いところを見つけられるかで、モノを作る人と買い付けする人に分かれると思うんです。悪いところを見つけて改善できる人は作り手に向いていて、僕みたいなタイプはセレクトする方が向いています。だけど、今日吉光さんとお話してみて、もしかしたら僕にもその分岐点があるのかなと思いました。

  • 吉光:よくデザイナーのことをゼロイチができる人って言うけど、僕はそうじゃないし、それをやろうと思っていない。古き良きものが失われないように息を吹き込むのが役目なのかなって思ってます。静止したものを動かすときは途方もない労力が必要。そう思ってた時にL'ECHOPPEと金子くんが手助けにきてくれたような気持ちなんです。それが素直にうれしくて。
     
    金子:今日お話している中で気づいたことがあって。モノ作りはいろんな方法があると思うんですが、吉光さんの服は海外で見た景色だったり、バイイングの経験のプロセスに基づいている。そういう経験をもとに服を作れる方はそう多くないと思うんです。その経験はどんなに服を買い集めても、ネットで検索しても得られることではない。だからこそ、価値があって。僕もいつかそうなりたいと思いました。机の上で生まれたんじゃなくて、異国の地の空気が感じられる。だから僕はMYTHINKSの服を見てワクワクするのかもしれません。

  • 古き良き50年代のメイドインUSAをイメージし、テレコ素材を用いたアンダーウェア。エアリーな質感で、ストレスなくさらっと羽織れる。

  • ヨーロッパでは主流のオーガニックコットンを採用。吉光さんがパジャマとして愛用しているTシャツの長い着丈を再現している。「パンツのポケットに手を入れるときに邪魔になる。だけど、その瞬間、このTシャツの存在を知る。不便な方が愛着が湧くんですよ」と語る、哲学的な一着だ。

  • 年々、過酷になる夏の暑さを乗り切るため、サバイバージャケットと名付けられた一着。厚すぎず、薄すぎない8オンスの軽いデニム地もさることながら、バッグ要らずの収納力も魅力。

  • 立体感をもたすため、ワッシャー加工を施したダブルガーゼのハーフスリーブシャツ。甚平のフォルムをサンプリングし、風通しの良さが追求されている。

  • オーガニックコットンを使ったニットは、シャリっとしたドライな風合いに。ミニマルなスナップボタンも茶目っ気の効いたアクセントに。

  • かっちりとしすぎるセットアップもラペルの形を変更することで、シーンを茶化すような抜け感を与えている。オーガニックコットンとソロテックスをブレンドし、気軽に羽織れる風合いに。