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『彼女のスタート地点』vol.11 前田有紀 | JOURNAL STANDARD

女優、モデル、アーティスト、芸人など…各分野で活躍する女性の “スタート地点”とは? 活躍に至るまでの道のりやエピソードをスタート地点となる場所でインタビュー。 第11回目は、人気アナウンサーから全く異なるジャンルへと転身をしたフラワーアーティストの前田有紀。大変なことより、 楽しい気持ちが上回る現在のライフスタイルや、自身が経営するフラワーショップの活動内容などを伺いました。

2019.08.27
JOURNAL STANDARD

女優、モデル、アーティスト、芸人など…各分野で活躍する女性の “スタート地点”とは?
活躍に至るまでの道のりやエピソードをスタート地点となる場所でインタビュー。
第11回目は、人気アナウンサーから全く異なるジャンルへと転身をしたフラワーアーティストの前田有紀。大変なことより、
楽しい気持ちが上回る現在のライフスタイルや、自身が経営するフラワーショップの活動内容などを伺いました。

ーーアナウンサーという華々しい世界を辞めて間もなく、フラワー業界に飛び込んだわけですが、自由が丘にある<ブリキのジョーロ>をスタート地点にあげた理由を教えてください。

花に関わる仕事をしたいと思い、前職を辞めてからすぐにイギリスに留学しました。半年間インターンとしてさまざまなことを学んだあとに帰国し、働かせていただいた場所が<ブリキのジョーロ>になります。就職活動でいろいろな花屋を調べていたのですが、<ブリキのジョーロ>は花もガーデニングもトータルで学びたかったわたしのやりたいことと近かったんです。ここだ! と思って直接連絡を取り、オーナーに面接をしてもらって翌日から働くことになりました。それから3年間、花の道で生きていく術を教えてもらった場所になります。花と植物に囲まれた広い庭もあって、とても素敵なお店なんですよ。

ーーテレビ朝日を退社したのは2013年ですよね。当時は前田さんのような決断をする人は珍しかったのでは?

そうですね。周りの人や両親からは、“しがみついてでも働きなさい”と反対されました(笑)。大学に行って、就職して、結婚して辞めるという選択はあっても、周囲がしない選択をするということに不安を感じることもありましたし、レールから外れる怖さもありました。でも、アナウンサーの仕事が嫌だったというわけではないんです。いろいろな人に会えることがとても楽しかったですし、やりがいも感じていました。アナウンサー時代、アスリートや起業している人にインタビューをする機会がよくあったのですが、その人たちが目をキラキラと輝かせながら笑顔で応えてくれる姿がとても印象的で。ふと、“自分はそんな生き方をしているのかな? ほかにもそんな風になれる職業があるのでは?”と思ったんです。そして、32歳のときに退社を決意しました。

ーー花に興味を持ったのはいつ頃ですか?

子供の頃から自然が大好きでした。学生のときも自然がある場所へ旅に出たり、大学ではラクロス部に所属していたので、河川敷で練習する日々を送っていました。就職してからは、会社が六本木にあったので、その近くで一人暮らしをはじめて、日常で自然を感じる暮らしができなくなって。そんなとき、自然が恋しくなり、部屋に一輪の花を飾るとすごく癒されてパワーをもらったんです。それから花を飾ることが増えて、もっともっと花について知りたいという思いが強くなっていきました。そして、好奇心がどんどん膨らみ、最終的に“花の仕事がしたい、好きなことを仕事にしたい”と思えるようになったんです。

ーーお花についてはどうやって学びましたか?

花や庭のことを調べると、イギリスでそのようなジャンルが盛んなことを知り、まずは半年間留学をして。日本に帰ってきてからも、<ブリキのジョーロ>で基礎からしっかりと教わりました。花に触れられるのは2年目からと言われる厳しい世界ですが、それを待っていられない自分がいて。あれもこれもやりたいと、かなり積極的でしたね(笑)。

ーー間髪を入れずに留学に行ってしまうなんて、すごい行動力ですね!

インターンは、アナウンサーとしてやってきた仕事と正反対で体力勝負でしたね。少し前までは、きれいな衣装があってメイクまでしてもらえていたのに、ガーデナー用の靴や汚れてもいい服装の自分を見て笑えたりも。でも、ふと鏡を見たとき、“なんだか今の姿の方が輝いていて自分らしい!”と感じ、この仕事を続けたいと思えたんです。“意外と自分ってたくましいかも!”という再発見もできました。

ーー<ブリキのジョーロ>で実際に働いてみて大変だったことはありますか?

自分が一から勉強したいこと、独立へ向けたスキルを身につけたいことを話し、3年間ひたすら修行をしました。はじめは主に商品の配達や梱包、店内の掃除などをしていました。車の運転も久しぶりだったのでドキドキでしたね。商業施設などに届けることが多かったのですが、普段は表からしか入ったことのない場所でよく入り口を間違えたり(笑)。今まで自分が見てきた世界って、ほんのひと握りの世界だったんだなと思いましたし、裏方の仕事の素晴らしさを実感しましたね。でも大変なこともたくさんあって、冬の寒さによる赤切れ、夏は虫に刺され放題だったり、失敗すると厳しく指導されることも。アナウンサー10年目となると中堅の立場なので、怒られることはほとんどなかったので、率直に怒られることにワクワクしていた部分もありました。

ーーちなみに3年で独立したのはなぜですか?

<ブリキのジョーロ>で働いている間に結婚をして、3年目に妊娠をしたんです。つわりや体力面でも少しきつくなり、働き方を考えたいなと思ったタイミングで独立を考えました。

ーー独立して立ち上げたのが移動型花屋<gui(グイ)>ですが、名前の由来やコンセプトを教えてください。

花屋ってとても可愛い花を仕入れても、用がないとお店に入ってもらえないですよね。それがすごく切なくて、もっとみんなに花のことを知ってほしいという想いがあったんです。そこで、いろいろな場所の軒下を借りて週末に花を売る、移動花屋をやろうと決めました。<gui>というのはフランス語でヤドリギという意味です。ヤドリギは、木の枝を借りてそこに芽を伸ばして身をつける植物で、そんな花屋になれるといいなという想いを込めてつけました。店に並ぶお花はカラフルな花や珍しい花をセレクトし、周りから目を引くようにしています。

ーー最近、移動花屋も増えましたよね。目に留まりやすいですし、花との距離も近いように思えます。

花を運ぶのは大変だったりしますが、訪れる場所によって立ち止まってくれる人がいて、花と出会うきっかけづくりになっているのがいいなと。待っているだけなのが嫌で、移動型にすればたまたま通りかかった人にも気軽に見てもらえるんですよ。

ーーお店を知ってもらうために工夫したことはありますか?

移動花屋の情報はSNSなどを使っています。先ほどもお話ししましたが、花屋って用がなければ来ない人が多いので、“何気ないときでも花を身近に感じてほしい”というコンセプトで展示会を開催しています。売れ残った花を写真に撮ったり、自分たちがデザインした小物を展示したり、花を飾るのが苦手な人も写真でなら抵抗がなかったりしますから。当日は小さいお子さんと花を一緒に撮影する家族が多くて、その子が将来花を大切にするきっかけになったらいいなと。そんな種まきができたと思っています。

ーー<gui>オリジナルのグッズをホームページで拝見しましたが、とても可愛いですね。ビーチサンダルやポーチ、アクセサリーなど、そのアイデアの源は?

花を飾る人が少なくなる夏でも花を身近に感じてほしいと考えたときに、スタッフと相談してビーチサンダルに決まったのですが、おかげさまで大好評でした! スタッフがアパレルや異業種からの転職が多く、素敵なアイデアがたくさん出てくるんです。すべて自分たちでやっていて、まだまだスタートしたばかりのブランドですが、売りたいというよりも花を身近に感じてほしいことが最優先なので、地道に広がっていけばいいなと思っています。

ーーでは、アナウンサーの経験が現職に生きていると思う部分はありますか?

生産者への取材に行ったりすることがあるのですが、インタビューをして伝えるという内容に関しては、アナウンサー時代の経験が発揮できている気がしますね。

ーー1児の母として子育てと仕事の両立はうまくできていますか?

やっぱり大変ですね(笑)。ただ最近、都内に事務所を借りて、家と職場の距離ができたことで気持ちの切り替えがしやすくなりました。突然息子が体調を崩したりもすることもあるので、思い通りのスケジュールが組めなかったりと、毎日ドタバタしていますがなんとか楽しさが上回っています。アナウンサー時代は受け身の仕事が多く、忙しかったら忙しい分だけ自分がどこかへいってしまうような、いつの間にか蚊帳の外でただスケジュールをこなしてるような感覚がありました。でも、今はどんなに忙しくても、肝がすわってやりきっている感がありますし、自分の選択で物事が進んでいるので充実していますね。息子も花の名前をいつの間にか覚えていて、とても嬉しいです。

ーー今のお仕事をしていて良かったこと、嬉しかったこととは?

前職のときはカメラに向かって話しているので、レンズの向こう側を想像していましたが、今は花をひとつひとつ手渡ししているので、お客様の顔が直接見られるんです。すぐ近くで笑顔を見られるということが幸せで。忙しそうなお客様も、花を選んでいくうちに最後は笑顔になるような、不思議な力があるんですよね。

ーーそんな前田さんが好きな花はなんですか?

いちばん好きなのは野草です。農家さんが適当に切った花を見ると、自然のなかで自由に育ってきた様が現れている気がして。それにすごく感銘を受けるんです。

ーー最後に、これからの目標があれば教えてください。

鮮度の問題や仕入れの量など、本当はきれいなのに愛されずに捨てられる花がたくさんあって、フラワー業界の厳しさを突きつけられているというのが現状で。売れ残った花はドライフラワーにしたり、写真に撮ってその花が生きていたことを残したり、パーティーで使った花は束ね直して持ち帰ってもらうなどしていますが、フラワーロスに対してもっといろいろな取り組みをしていけたらと思っています。同時に、もっと多くの人に知ってもらうためにはどうしたらいいかを考えていけたらと。自分がおばあちゃんになる頃には、今よりもっと花を飾る人が増えてほしいですね。

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Photo_Kousuke Matsuki
Hair & Make-up_Hikari Yamashita
Interview & Text_Kozue Takenaka

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Yuki Maeda

前田有紀

フラワーアーティスト。
1981年生まれ。2003年4月テレビ朝日に入社し、アナウンサーとして10年間勤務。退社後、イギリスに留学。帰国後は都内の花屋で修行を積み、2018年には移動型花屋<gui>を立ち上げる。

[Archives] -彼女のスタート地点-

vol.001 紗羅マリーのスタート地点

vol.002 甲田まひる(MAPPY)のスタート地点

vol.003 中田みのりのスタート地点

vol.004 渡邉みな(めがねちゃん)のスタート地点

vol.005 綱川禎子のスタート地点

vol.006 生駒里奈のスタート地点

vol.007 仁村紗和のスタート地点

vol.008 PORINのスタート地点

vol.009 ゆりやんレトリィバァのスタート地点

vol.010 龍崎翔子のスタート地点


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