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  3. 小泉今日子と馬場圭介。 遊ぶようにして作り上げたフォトTシャツ。
  • 女優・小泉今日子がキョンキョンとして帰って来た! そんな嬉しい郷愁混じりで歓迎したくなる、フォトTシャツが出来上がった。手掛けたのは、小泉今日子さんと長年の交友関係を続けてきたスタイリストの馬場圭介さんのブランド「GB by BABA」、略して「GB/ジ ー ビー」。 このフォトTシャツが生まれた経緯、両者の関係、そしてものを作るときの大切な姿勢、このプロジェクトを軸に話を伺った。本当の意味の“遊び”を大切にしてきた大人の言葉には、どうしたってメッセージが見え隠れしている気がしてならない。
    Photo_Ryosuke Yuasa
    Styling_Keisuke Baba(Kyoko Koizumi)
    Hair&Make-up_Kika(Kyoko Koizumi)
    Text_Shinri Kobayashi
    Edit_Ryotaro Miyazaki
    小泉今日子女優、ミュージシャン
    1966年、神奈川県生まれ。1981年、オーディション番組『スター誕生!』で合格し、翌年「私の16才」で歌手デビュー。以後、数々のヒット曲を発表。30代からは女優業も本格化し、数々の映画賞を受賞。50歳のタイミングで、それまでの事務所を離れ、制作事務所「株式会社明後日」を立ち上げ、代表取締役に就任。
    Instagram:@asatte2015
    馬場圭介スタイリスト
    1958年、熊本生まれ。28歳の時にロンドンに渡り、スタイリストの大久保篤志氏に出会う。2年後に帰国。東京でスタイリストアシスタントして働き始め1年後に独立。その後は、雑誌、広告などで幅広く活躍。音楽にも精通し、DJとしての顔も持つ。また、UKカルチャーを落とし込んだヴィンテージショップ「Council Flat 1」のオーナーも務める。
    Instagram:@keisukebaba1007
    二人の関係だからこそ出来た
    スピーディなやりとり。

    ー小泉今日子さんのアーカイブ写真といえば、それこそ膨大な量になるんじゃないかなと。

    馬場:Tシャツに使った写真は、今日子ちゃんのカレンダーの撮影に行った時のものだね。

    小泉:30年以上前、わたしが20代の頃だったと思います。今年デビュー40周年だから、馬場さんから、「おい、今日子、Tシャツ作るぞ!」って突然話があったんです(笑)。

    馬場:こんなのどう? って言って提案したのがこの辺りの写真たち。

    小泉:超可愛いじゃんって。カメラマンの小暮徹さんに使いたいと連絡したら、どうぞどうぞという感じでした。外から見たら、数ある写真から絞り込んで、話をしてきちんと考えられたように見えるかもしれないけど、わたしと馬場さんは、もちろんスタイリストと服を着させられる側という仕事の関係もたくさんありつつ、そもそも遊び友達なんですね。

    馬場:そうそう。

    小泉:だから、こんなのどう? って、可愛いじゃん、と言って、OKって。そんなアバウトな感じです。わたしもエージェントやマネージャーなしで自分でやっているので。

    馬場:すごくいいよね。直接だから、話が早いじゃん。

     

    ーでは、ご飯に行こうよ、くらいの気さくな関係でできたものなんですね。

    馬場:でも、こんな饒舌に喋っているけど、2人とも現場ではすごく大人しいのよ。

    小泉:最近では、わたしも馬場さんも歳を取って、気遣って喋れるようになったんですけど(笑)、本当に無口でしたよね。当時はテレビ局の楽屋に2人でいても、(聞き取れないくらいの小声で)「これ持ってきたけど、どう?」って。

    馬場:そんな声小さかったっけ?(笑)

    ーそもそもの遊び友達ということは、クラブなどで遊んでいたんですか? 例えば芝浦GOLDとか?

    馬場:そうそう。あとは知り合いのバーとかね。そこで待ち合わせるとかじゃなくて、行ったらいるっていう感じだよね。

    小泉:うん。

    ー例えば、小泉さんの楽曲プロデュースを務めた藤原ヒロシさんとは、そういう場所で出会ったんですか?

    小泉:でも、ヒロシくんはお酒を飲まないからね。どうだったんだろう…。90年代に担当してくれたわたしのマネージャーがクラブカルチャーやサブカルチャーが大好きな人で、彼がいろんな人と仲良くなって、わたしに紹介してくれたんです。その中に、ヒロシくんがいたんじゃないかな。ヒロシくんとは、お酒を飲んだりご飯を食べるというよりは、楽器を買いに行くから付き合って、とか友達のブランドの展示会に行くから一緒に行かない? とか、昼間に会ってバイバイって。馬場ちゃんの場合は、夜家にいて、なんか退屈だな、ちょっと出かけようかなと思って出かけると、あ、いたいたって。

    ーでは、飲み友達でもあるんですね。

    馬場:そうだね。2人とも酒を飲むと、饒舌になって楽しくなっちゃう。

    インスピレーションによる
    絶妙なキャッチコピー。

    ー馬場さんといえば、ファッションや音楽、特にUKカルチャーに精通されていますが、小泉さんはそういうお話をこれまでお聞きしてきましたか?

    馬場:うーん、本当にあまり話をしなかったからね。

    小泉:そうそう。でも、ファッションや音楽では、どちらかといえば、アメリカよりイギリスが好きでした。だから、馬場ちゃんのスタイリングも、わかる、わかるみたいな感じでした…、こう見えてね(笑)。それこそキングス・ロードに行って、ワールズ・エンドを見てみたいと思ってたし、プライベートでも、ロンドンあたりに遊びに行くことが多かったです。

    ー小泉さんの写真に「THE QUEEN」と入っているこのTシャツ。小泉さんといえば、『学園天国』という曲もあって、勝手に“学園の女王”感があるというか、小泉さんに女王という称号はふさわしいと感じました。

    馬場:思いつきだね。何がいいかなと思って、あ、QUEEN、いいじゃんって。深い意味はないね、インスピレーション。

     

    ー例えば、世界に目を向けると、古い女性像が大きくアップデートされているのがいまの時代なのかなと。小泉さんはマネージメントもご自身でされて、制作会社も立ち上げられました。そういう意味では、芸能における新しい女性像を切り開いているのかなと思うんです。

    小泉:人から見ると、わたしが切り開いてるように見えるかもしれないけど、主観で見ると、わたしの一つの人生なんだよね。長い間歌手として活動して、女優の活動もして、50代になり、どうやってこの先の人生を生きていこうか、死んでいこうかと考えたんです。 大きな事務所…、組織や団体の中では必ずルールが必要じゃない? もう40年くらい頑張って活動してきたけど、この先もずっとそのルールの中にいて、 わたしは面白いのかな?って考えたら、事務所をやめて、新しいルールを私自身が作ろうという生き方にシフトしたの。 だけど、他の人から見たら、わたしが切り開いてきたように見えるかもしれない。それは評価であって、他人がすることだから。でも、わたしからすると、これやってやろうぜ、というよりは、わたしの人生の年表を生きているだけなの。

    ーあくまでこっちが深読みをしすぎたという…

    馬場:深い意味はない。インスピレーションだね。

    小泉:そう。でも、みんなが勝手に深読みしてくれるのは嬉しい。こちらとしてはそんなに意図して何かをやっている感じじゃないんだよね。よくよく考えた結果、うまくいく作品もあるけど、インスピレーションでパパッと決まった方が人々に浸透していくものになることが意外と多いんだよね。

    馬場:卓上で、どうしようか? と考えても何にも出てこないからね。逆に遊びに行ったり、街を歩いたりする中で思い浮かぶこともあるし。

    だから、
    私たちは楽しく生きていたい。

    ー馬場さんのブランド「GB」は、2022年に再スタートしたわけですが、2023年以降の展望はありますか?

    馬場:まあ、さっきの話じゃないけど、自分の好きなことを出来たらいいかなと。

    小泉:もう我々も高齢者枠じゃないですか。馬場さんも60歳超えているし、わたしも還暦も近いし、実際にそうじゃん(笑)。だから、もう楽しいことしかしたくないんだよね。これで一儲けしようぜ、みたいなことは全然ないし、好きな人と好きなことを無理せずできたら一番幸せという感覚だよね。

    馬場:そうそう、仕事でも何でももう好きなことしかやりたくない。全てにおいて、無理はしたくない…、そんな境地だよね。

    ーなるほど。そんなお二人が年齢に関わらず、こういうプロジェクトを楽しんでやっている姿を見ると、結果的に若い世代や周りには頼もしく見えるでしょうね。

    馬場:そうだったら嬉しいね。

    小泉:いまの若い人…例えば社会に出たばかりの人たちは、景気のいい日本は見たことないわけじゃない? わたしたちよりちょっと若い人だとロスジェネ世代になっちゃって、遊ぶことや楽しむことがあまりうまくなくて、ちょっと不器用だなと見えたりすることもあるんだよね。私の感覚だけど、おそらく今の若い人の多くは、堅実に生きることが自分を守ることだと思って生きている気がするんです。それはそれで一つの生き方だけど、その中でも遊び…遊びというのは、お酒を飲んでわーっと騒ぐんじゃなくて、こうやって物を作ったり、会話一つでも遊びをきかせたり、そういうことをなんとなく目の端で見ていてくれたら嬉しいかな。だから、わたしたちは楽しく生きていたいんだよね。

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