2025年秋冬、MUSEのテーマは「VINTAGE LOVERS」VINTAGEを愛し、MUSEに華を添えてくださる方々の特集を連載します。

The theme for MUSE's Fall/Winter 2025 issue is “VINTAGE LOVERS.” We will be publishing a series of articles featuring people who love vintage and add color to MUSE.

ABOUT “REMI RELIEF”

メンズの合同展示会でREMI RELIEFのお洋服を見た時の興奮!今でもはっきりと覚えています。ドストライクなザ・アメカジ!に一目惚れ!レディースでこのテイストがあったら、私自身が絶対に着たい!欲しい!とアパルトモン時代に別注したのが初めてのお仕事になります。あれから18年くらいは経ちますが、今でもREMI RELIEFの展示会に行くのを毎回楽しみにしています。

Q1.

アメカジの天才!後藤さん。改めまして、後藤さんのプロフィールをお願いします。

僕は服が好きで好きな事を仕事にしたいと思いリーバイ・ストラウスジャパンに入社したのが21歳の頃でした。リーバイスで6年程勤める中で商品企画に興味がわき、オリジナルブランドを展開している会社に転職しました。10年商品企画をする中で自分でブランドを作りたいと思いだし独立してREMI RELIEFを始めました。僕が過ごした10代(80年代)、20代(90年代)はDCブーム、渋カジ、キレカジ、バイカー等、大きなブーム(流行り)があった中を多感であった青春時代を過ごした事と個人的にはサーフィンにのめり込んでいた事で多くのファッションジャンルを経験し影響を受けた事が今となっては商品を企画する上でとても大きな財産になっています。一言でいうとミーハーだった。一つのジャンルにのめり込むというよりも、服も車も時計も家具も家も全部に興味が湧く性格でそれがそのまま今も続いている。何も変わらないんだとコレを書きながら感じてます。

Q2.

ヴィンテージとの出会い、ヴィンテージが好きになったきっかけは?

83~86年の中学の頃、先輩の影響から服が好きになったと思います。ヴィンテージという概念はその頃には無かったとも思います。単純にデニムの縦落ちや色の濃さ、雰囲気からBIG『E』のデニムを選んでいたと思います。当時普通の古着とは1、2万の差額だったのでカッコいいなと思う方を選んでいただけです。それが90年代に入り古着ブームが起こりあっという間にヴィンテージと呼ばれるようになっていったという感じでしたので、僕にとっては日常着の一つで明確な出会いは無いかもしれません。ただインディゴデニムの縦落ちの美しさに魅了されたのは今思うとこの時期です。

Q3.

毎シーズンワクワクさせられるコレクション。インスピレーション源はいつもどういうところから浮かびますか?

大前提としては1975年前後のアメリカ西海岸ベニス周辺で巻き起こるカウンターカルチャーにより新しい事が次々と生まれドックタウンと呼ばれた場所に憧れの様なものが自分の中にはあり、その時代の写真に映るファッションが単純に素敵に見えてREMI の根底にある『究極の普段着』に結びついています。その大前提はブラさずに『今、求められている事。』『今、自分が見せたいもの。』の2軸から組み立ていく事が多いです。全体的には感覚で企画していく方で書き出したりせずに頭の中だけでまとめていきます。まとまったら今度はイラストレーターで絵型を描き出して全体を俯瞰で見て修正してまた描いて修正しての繰り返しで組み立ます。グラフィックも全て自分で描くので展示会前の3~4ヶ月は夢中になって没頭しています。毎回展示会の型数は250品番程提案していくのでとてもハードで苦しいのですが思い通りにサンプルが出来上がった瞬間はなにものにも変え難い幸せを感じます。

Q4.

私物のお宝を見せてください!

CLOTHES

no.1/9 Martin Margiela

2005年のハの字ライダースです。MRS社のデカZIP で素材はカウレザー、旧ここのえタグ。シルエットはボックスシルエットで古き良き時代のMartin Margielaを感じます。ボックスシルエットのゆったり感が少し大人っぽく今もたまに着ています。

no.2/9 1970年代M65 Fishtail Parka

1970年代のM65フルセットです。表のシェルのみなら夏以外着回し可能でインナーとフードを取り付けば真冬も暖かくよく着ています。僕の中では定番で今でもデットストックで手に入れることが出来るので古くなったら買い替えてます。

no.3/9 1954年製 507XX

通称セカンドと呼ばれるGジャンです。1954年は革パッチ最後のモデル。46のサイズで7万弱で購入したけど当時は大きいなと思いあまり着ていませんでしたが状態が良いのでずっと持っていました。ただBIGサイズが定番になってきた今は丁度良くて35年振りによく活用しています。

no.4/9 Pioneer カバーオール

Montgomery WardのワークラインであるPioneerの1950年代のカバーオールです。30年前に1万円くらいで購入したものですが元々ボロボロで中のブランケットも完全に取れてしまっていたし胸のポケットも片方欠損していたのが逆にシンプルで今でもよく着ている愛着のある1枚です。

no.5/9 ショートホーンのウエスタン

50年代のLEVI`Sのショートホーンデニムウエスタンです。ダイアゴナルポケットに憧れて購入したのを覚えています。今でも商品を企画する際に参考にしている1枚です。

no.6/9 50年代スウェット(レッド/霜降りグレー)

当時プリントの入っているスウェットは自分には似合わないと思っていたので所有している スウェットは殆どが無地です。これは50年代に作られたスウェットですがネックの両ぶりの2本針、各所の4本針等、運動着として頑丈に作られた痕跡が見て取れます。当時の編機の不正確さから中糸がランダムに表に飛び出て縦落ちの様に見えるところがこの時代の良さだと思っています。偶然に生まれるものの美しさを感じます。

no.7/9 TOOL Tシャツ

1990年代初頭は自分がサーフィンにどっぷりハマり込んでいた時期でオルタナティブメタルが当時のサーフムービーに良く使われていた影響からToolの曲をよくかけながら海に向かっていました。それで古着屋で見つけたTシャツを購入した思い出の1枚です。

no.8/9 Jeff Ross氏 Tシャツ

Jeff Ross氏は80年代Nirvanaがsubpop在籍時にNirvanaのTシャツやジャケット(レコード)のデザインとプリントをしていた人物で、このオリジナルTシャツは諸説色々と噂がある中でジョンレノンが好きだったカート・コバーン氏が、私的にJeff Ross氏に頼んでJohn LennonとYoko Onoがヌードで並んでいる 1968年のアルバム『Unfinished Music No.1: Two Virgins』のジャケット写真をもとに、Sub Popの創業者 Bruce PavittとJonathan Ponemanの顔をはめ込んだパロディデザインTシャツを作り着ていたと言われているモノで、オリジナルは中々お目にかかれない中Jeff Ross氏が当時のオリジナル版を使用してハンドプリントし販売されたTシャツです。

no.9/9 Stussy old school Tシャツ

80年代の18歳の頃サーフィンを初めてアメリカで購入したステューシーのオールドスクール時代のTシャツです。まだ日本には一部のサーフショップが並行輸入で扱っていたくらいで一般には浸透していなかったと記憶してます。アディダスのスーパースター擬のグラフィックなど今見ても遊び心があり好きな1枚です。

ACCESSORIES, GOODS, OTHER

no.1/9 Rolex
1963 製Ref.1675GMT-MASTER(左) / Ref.1962年製6426OYSTER(右)

Rolex 1963年製Ref.1675GMT-MASTERは35年前に自分の二十歳の誕生日に記念に18万で中古購入したモノです。当時は知りませんでしたが偶然にもミラーダイアル、小針、ゴールドレター、ヒラメリューズ等、今となってはレアピースな1本でした。もう1本は1962年製Ref.6426 OYSTERの手巻きでシンプルな文字盤と薄いボディが手首に馴染むお気に入りの1本です。

no.2/9 Rolex 1954年製Ref.6084 14k Semi Bubble Back Super Oyster

この時計は近年に購入した時計です。元々時計は新しいものよりも1965年までのvintage物が好きでフェイスのサイズが39mmくらいの時計が好きでした。ところが50歳を超えた辺りから39mmのサイズが大きく感じ出し、そうなるとGMTやサブマリーナの様なスポロレが全部大きく感じ、山下時計店の山下社長に相談した所『vintageを極めると最後はバブルバックの様な小さな時計に行き着くよ』という言葉が妙にしっくりと腑に落ち、ショーウィンドウに置いてあった34mmのセミバブルバックを迎入れる事にしました。14kというのも気に入り、今の歳なら鈍めのゴールドも着こなせそうな気がしたのです。デザインもクリームマットなエンボス仕上げの文字盤とアルファ型と呼ばれる針にブルースチールセンターセコンド針の組み合わせと美しくオリジナルコンディションである事も決め手でした。

no.3/9 TIFFANY&Co. College of New Rochelle 14k Yellow Gold Class Ring.

TIFFANY&Co.がまだ大学や軍学校のクラスリングを制作していた時代の物です。こちらは1929年にNYのニューロシェル大学の卒業記念に作られたクラスリングです。当時は金の剛性が技術的にだせず、9k・10kが殆どの中、TIFFANY&Coのみ14kで製造できる技術があった事を感じさせるクラスリングです。

no.4/9 goro’ s

初めてゴローズに行ったのは1987年でした、そこから1996年くらいまで定期的に通っていたお店です。途中バイカーブームがきてゴローズ狩り等もあり、渋谷には付けていかないという今となっては笑い話も懐かしいです。この中で思い出深いのはオーダーして作って頂いたスターリングシルバー製のZIPPO。今でも大切にしています。

no.5/9 GREGORY

僕が高校生の頃、1985~1988年に友達の間でGREGORYが流行っていました。学生鞄の代わりにグレゴリーのミッションパックを使用していたのですが気に入りすぎて何個も購入した記憶があります。テールメイト、テールランナー等、未だに現役です。

no.6/9 スケートボード

カルフォルニアで購入した70年代のスケートボード。クラシカルなデッキ形状も好きなのですが何と言ってもグラフィックが最高な1本です。

no.7/9 キャンドル

ステューシーの8BALL CANDLE。34年前の21歳の誕生日にもらったキャンドル。存在感ある大きさで意味なく気にいっているvintage candle。

no.8/9 1968年 Alfa Romeo gt1300junior

Jeff車も古いものが好きなのですが、アメ車よりもイタリア車、ドイツ車が好きです。この1968年Alfa Romeo gt1300juniorは6年前に2年間掛けてフルレストアをした車両でイタリア車の持つ軽量スポーツを体現した様な個体であり現代車には無いキャブの吸気音やオイルの匂い等、体感の強い車です。デザインも段つきのボンネット、直線と曲線を上手く掛け合わせた流石イタリアと言わせる美しさを感じます。

no.9/9 1972年 Porsche 911s Targa

こちらも2年掛けてフルレストアした車両になります。初代の911のモデルであり、まだ後部のフェンダーが出ていない事からナロー(細い)ポルシェと愛称のついたモデルです。僕は免許取り立ての頃から憧れがあり『最後はナロー』と漠然と決めていたのですが55歳になり元気にドライブを楽しめるのも、あと10年くらいかなと手に入れた車です。マカダミアメタリックのブラウンカラーにベージュ内装と好きな仕様にしています。これから一緒に歳を重ねる1台になる予定です。

Q5.

MUSE de Deuxième Classeとの出会い

佐藤さんとの出会いは、ショールームでの合同展だったと思います。まだデビューして2回目の展示会くらいで18年前です。18年前の佐藤さんは怖いと思うくらい仕事に対して実直に向き合っているバイヤーさんで、この人の前では誤魔化しや偽物は通用しないなと直感的に感じた数少ないバイヤーさんの一人でした。いわゆる本物のバイヤーさんです。同時にアメカジに対して精通している数少ない女性のバイヤーさんとも認識しています。本当にそういう女性のバイヤーさんは少ないので希少な存在だと思います。MUSEに関しても同じイメージを持っています。アメカジの良い部分を理解しながら昇華できる力のあるお店。数あるお取引先様の中でも群を抜いています。本物のバイヤーしか出来ないお店だと思います。

Q6.

この秋冬MUSEで取り扱うコレクションの中から、「デニム」「アウター」「カットソー」についてこだわりポイントを教えてください。

DENIM

ウエスタンに使用しているデニムについてはvintage アイテムでも紹介しているLEVI’ S のショートホーンのvintage ウエスタンを参考に糸から作り込んだ8.5oz デニムを使用しています。縫製もvintage ミシンを使い洗い込んだ際のパッカリングが起こる様にチェーンステッチの巻き縫い等、細部に拘り抜いたウエスタンシャツです。加工についても薬品等はいっさい使わず、職人の手擦りのみで丁寧に仕上げています。薬品を使用していないのでここから長く着用頂く中で古着のヴィンテージと同じ様に自然な褪色をお楽しみ頂けるデニムです。

M65 FISHTAIL PARKA

1972~80年代半ばまでに掛けて支給されていた年代のM65 Fishtail Parkaを完全再現しています。1972年から右胸にパッチが着き真鍮製のジッパーが特徴です。素材も当時も使用されていたコットンナイロンの混紡糸を使用しています、コットン部分がコットン特有の通気性により汗による湿気やムレを防ぎ快適な着心地を実現し水分を吸収するとコットン繊維が膨張し糸の目が詰まることで水の浸入を防ぎ水滴を弾きます。通気性と撥水性、軽量で全天候性の向上が図られた素材です。秋口、春先は表のシェル1枚で使用し、冬は中綿入りのインナーとフードをドッキングすることで防寒性もとても高いです。真夏以外着用できる着回し力の高いコートになります。

CUT AND SEWN

僕自体が1930年~70年代までのスウェット、Tシャツが好きというのもあるのですが、その時代だけが持つ色の褪色具合がとても魅力的に感じていて、今もその当時の雰囲気を再現できる様に日々研究しています。1970年代以前と80年代以降で何が違うのか?という事ですが染料自体が全く違います。vintage の持つ褪色し白くフェード感のある清涼感を併せ持つ表情は、その当時使われていた染料によるところが大きく、70年代後半以降現代まで使われている染料ではvintageの様な色落ちにはなりません。REMI RELIEFでは70年代以前の染料に拘り使用しています。加工についても薬品はいっさい使用しません。vintageの古着は薬品で落としたものでは無く自然に落ちた色なので『自然に落ちた原理』を研究して同じ方法を採用しています。『染料と服を結びつけているアミノ酸に酸素が付着し、加水分解が起こり、アミノ酸が炭素化して染料ごと落ちる』というのがvintageと呼ばれる古着の褪色の原理だとし、それを加速化した方法を自社工場で出来るようにしてきました。まだまだ改良の余地はあると思うのでより本物に近づけるよう日々試験を繰り返して皆様に見せていきたいなと思います。そういう想いが詰まっているのがREMI RELIEFのスウェット、Tシャツです。

STYLING