

case:
013
Shintaro Yuya
モデル / 俳優
Photo_Kousuke Matsuki
Hair & Make-up_Narumi Tsukuba
Edit & Text_ Rui Konno
case:
013
モデル / 俳優
Photo_Kousuke Matsuki
Hair & Make-up_Narumi Tsukuba
Edit & Text_ Rui Konno
今年も春がやってきた。出会いと別れ、期待や不安。
色んな予感と気持ちが胸の中を巡りつつも
なぜだがジッとしてはいられない。
それは、輝いて見えるあの人たちだって変わらない。
新しい景色を見るために人知れず葛藤して、
今も挑戦を繰り返しているはず。
歳も性別も、畑も違う13人の人々が教えてくれた、
彼らの心を動かすもの。
時代の閉塞感がどれだけ強まっても、
好奇心と情熱は奪えない。
お気に入りの1着に袖を通したのなら、
さぁ、新たな自分に会いに行こう。
人気雑誌の誌面に度々登場し、
近年は悲願だった演劇の世界に足を踏み入れ、
確実に頭角を現してきているアップカミングな俳優。
通り一遍な紹介の仕方をするのなら、遊屋慎太郎という
男のことはそんな風に語るべきなのだろう。
しかし、彼のこれまでの歩みはその華やかな経歴とは
対照的に、挫折と葛藤にまみれたものだった。
口下手で自己表現も苦手な少年が、
初めて自分の意志で選んだ道。
その道中で、男は絞り出すように言葉を紡ぐ。
「できるだけ、遊屋さんが普段通りでいられる場所でお話を聞かせてください」というリクエストに対し、三軒茶屋を挙げていただきましたが、その理由から、教えていただけますか?
僕は地元が静岡で、大学は青学に進んだんです。受けたときは渋谷キャンパスに通えると思っていたんですけど、いざ入学してみたら最初のキャンパスが相模原で。でも、実家から相模原に通うと、片道2時間ぐらいかかるんですよ(笑)。それで、「渋谷と相模原の両方に通えるところに引っ越させてくれ」と親に頼み込んで、結果それが田園都市線の三軒茶屋だったんです。
遊屋さんのキャリアの始まりはモデル業だと思いますが、それは上京当初から見据えていた活動だったんですか?
いえ、まったくもって視野には入ってなかったんですよ。就職活動をするまでは。僕はもともと映画が好きで、映画に関われる仕事がしたかったんです。学生時代も映画館でずっとバイトをしていたりして。それで配給会社とか、広告代理店の映画部門とかを就活で受けていたんですが、内定が全然もらえなくてどうしようと思ってたんです。そんなことを考えながら、元々所属していた事務所に履歴書を出してたんです。
また突然ですね!?
実はずっと興味はあったんです。小学校のときに家族旅行で東京に来たときに、スカウトされたことがあって。親父は「面白いからやってみろ」って感じだったんですけど、僕は恥ずかしくてできないし、興味もないフリをしていて。そこから中学、高校、大学ときて、どこかで俳優やモデルとかって、自分でもなれるのかな? でも恥ずかしいな……とずっと考えつつ、普通に就職しようとしたんです。やってみる前から、俺には無理だと思っていて。結果的に、就活がうまく行かなかったことで踏ん切りがついたというのはありました(苦笑)。
結果として、その後はモデルとして色々なファッション誌やショーに出られていますよね。近年では実際に俳優業の比重が増えてきていると思いますが、そこにも何かきっかけがあったんですか?
多分、初めて映画の現場に行ったときですね。それまで、映画は僕にとって完成したものを観るだけのものだったけど、出演者としてつくる現場を経験させてもらえる機会があって。そのときはワンシーンのちょっとした役だったんですけど、最初から最後まで関われるような役で、作品に入ってみたいと思えたんです。
色々な巡り合わせがあったんですね。でも、お話を聞いていて、ひとつひとつのステップを、満を持してポジティブに踏んで来られたわけではなかったように感じてしまいました。
そうなんです。……僕、元々ドライな性格で、感情の振れ幅もあんまり無くて、つまんない人間なんです。感受性も低いなと、自分でも思っていて。学生のときに付き合ってた彼女にも「つまんない」とか、「何考えてるのかわからない」とか言われちゃって。そういう自分の性格が、ずっとコンプレックスだったんです。
感受性が乏しいというより、感情表現が苦手なのかも知れないですね。
……僕、胸に電球がいっぱい付いてるようないつも感覚があるんですよ。
電球? どういうことですか?
胸に付いている電球で、光っているものもあれば、光っていないものもあるっていうような感じなんですけど、芝居をしていて、例えば自分が到達したことがない怒りとか、感情を表現できたときに、胸の電球が1個、ピカッと光ったりするんです。台本を通していろんな表現をすることで、その電球が光る感覚がすごく気持ちよかったんですよ。そうするとその感覚が普段、生活してても残っていて、そのコンプレックスを解消できている気がして。見たことのない自分を見つけるのは楽しいです。まだ点いてない電球ばかりなんですけどね。
遊屋さんの中にはまだ表に出てない感情がたくさんあるんでしょうね。アウトプットする術がまだ無いだけで。
そうですね。僕、ついカッコつけちゃうんですよ。そのせいで大学までは流されて来ました。仕事を始めたのは、初めて自分で舵を取ったタイミングでしたね。
これまでの27年間を振り返って、今が一番充実してるという実感はありますか?
……無いですね。僕、“今を楽しむ”みたいなことが苦手なんです。いつも、“今、この瞬間が楽しい”とは思えなくて、“思い返してみると楽しかった”みたいなことばかりで。だから、きっとそのとき、自分が思い描く最高の時を過ごしていたとしても、そのときも僕は“もっと違う楽しいことがあるだろう”って思っていると思います。ひねくれているんですよね。
どこか、遊屋さんのコンプレックスに通じるものを感じてしまいますね。
少し前に代々木八幡で神輿を担がせてもらう機会があったんですけど、それが超キツくて。でも、終わって振り返ったらめっちゃ楽しかった。それなのに、何であのときにはこの楽しさを感じられなかったんだろうって、悔しくて。そんなことばかりですね。
でも、だからこそ続けられるのかも知れませんよね。
そうかも知れません。何か大きな目標みたいなものを持ちながら仕事ができていたらカッコいいなと思うけど、今はまだそういう風にはできなくて。モデルと俳優とで、自分の中で入れるスイッチが違うような感覚が今はあるけど、それが正解だとも思ってません。僕が憧れる人たちには、一貫した自分というものがある人が多いから。
それでも今の遊屋さんからは、トライせずに諦めがちだった大学生までの頃とは明らかに違うような印象を受けます。
昔の自分は「カッコだけつけてて、何もしてないな」と思うことがすごく多くて、「お前はそうじゃないだろ、カッコばっかつけてんじゃねぇよ」ってよく自分に言い聞かせていました。でも今は、悩んで行動して、最後までカッコつけ切れるなら、それも本当にカッコいいなとも思うんです。
PROFILE
遊屋慎太郎 / ゆうやしんたろう
1992年生まれ、静岡県出身。上京後、大学在学中よりモデルとして活動し、2015年には映画『アレノ』への出演をきっかけに、役者としても頭角を現す。現在はモデル業と俳優、2足のわらじを履きながら、自分だけの表現を日々模索している。今秋には出演している内山拓也監督の新作映画、『佐々木、イン、マイマイン』の公開を控えている。
Instagram : @shintaroyuya
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